第351話 なんかすごい丸投げ感
「……今回は何の用だろう?」
ゴバルード共和国からの使者団の一件から、まだそんなに経っていないというのに、僕は再び王様に呼び出されていた。
仕方なくまた王宮に出向くと、
「おお、ルークよ、何度もすまぬな。あれからゴバルードとは上手くやっていると聞いておるが、どうであるか?」
「そうですね……一度、向こうに招待していただきましたし、鉄道も繋げて、すでに商人たちの間で色々と取引が行われているようです」
観光客や移住者の受け入れも始まっている。
「ふむ。砂漠の国々や東方の三国に加えて、今やゴバルードとも交流を行うようになったか……」
もちろん僕の村だけが独占しているわけじゃなく、各国はセルティア王国とも交流している。
……ただしその規模は、圧倒的に僕の村が大きいのだけど。
「お陰で我が国も大きな恩恵を受けた。長き内戦によって、他国との交流がほぼ途絶えておったところから、この短期間でここまで信頼を回復できたのだからな」
内戦中の国と貿易などを行うのは、リスクが大きくて嫌われる。
たとえ内戦が終わったとしても、すぐには積極的な人や物の往来が戻ってくるわけじゃない。
勝手に交流を始めた――一応許可はもらったけど、ほぼ事後報告だった――ことを怒られるかもと思ってたけど、むしろ感謝されているみたいだった。
「そなたのことだ。余の予想を超えていくなど、もはや慣れてしまったわい」
……呆れられてもいるっぽいけど。
「そこでだ、ルークよ。そなたの村に、自治権を認めようと思っておるのだが」
「え? 自治権……ですか?」
「うむ。正直言って、信じがたい勢いで発展していくそなたの村など、我が国ではもはや手が負えぬ。今までは一応セルティア王国の法律に則ってもらっておったが、それに当てはまらぬような事例が多すぎて、法務大臣も困っておるしの」
王権を強めようという試みの中、それに完全に逆境する話だった。
「いいのですか? 諸侯に示しがつかないような……」
「心配せずとも、反対する者などおらぬ。すでに大半の領主が一度はそなたの村を訪れておるのだろう? 目が節穴でさえなければ納得するはずだ」
王様が言う通り、鉄道が王国全土に敷かれて以降、村に各地の領主が幾度となく視察に来ていた。
これを村にしておいていいのか、領地として認めた方がいいのでは、とは何度も言われていたりする。
「今後はいちいち余の許可など要らぬ。好き勝手やってくれ」
「なんかすごい丸投げ感!?」
「というわけで、新たにそなたと話をしたいという他国からの使者団が来ておるから、対応を頼むぞ」
え、また……?
「私の名はパルマ。アテリ王国から参りました」
パルマと名乗った代表者は、四十代前半くらいの真面目そうな男性だった。
「アテリ王国も、確かセルティアの西の……」
セルティアの西、そしてゴバルード共和国の北側に位置しているのがアテリ王国だ。
地中海の沿岸にある国の一つで、セルティアやゴバルードと比べると、かなり小さな国だったはず。
「ご存じでしたか。大変光栄でございます」
「ええと、僕に何の用でしょうか?」
「実はぜひともルーク様が築かれたこちらの都市を、視察させていただきたく思いまして」
「は、はい、別に構わないですけど……」
ゴバルードと同じように、使者団を受け入れることに。
しかしこの二か国だけでは終わらなかった。
その後も、様々な国から次々と使者が現れては、荒野の村の視察を要請してきたのだ。
アテリ王国に隣接し、同じ地中海沿岸の国であるスペル王国。
そのスペル王国の隣国であるメトーレ王国。
さらにスペル王国とメトーレ王国に挟まれるように存在する、小国ボアン王国。
これらの国にも招待されたり何やかんやあったりして、気づけば貿易や観光、移民、留学、人材派遣など、各国と様々な交流がスタートしたのだった。
「なんか急激に国際交流が進んでる……」
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