第387話 誘き寄せた男たちをこの穴に落として

 アルラウネに魅了されてしまった男性陣。

 仕方ないので彼らは瞬間移動で村に帰すことにした。


 残ったのは僕を除くと女性ばかり。

 セレン、フィリアさん、ゴリちゃん、ハゼナさん、マリベル女王の五人だけだ。


「私たちだけでやるしかなさそうね」

「うふぅん、これはこれですっごく楽しいわぁん! 終わったら、みんなで女子トークしたいわねぇ!」

「それは楽しそうだな。しかし、土蔵の周りは魔物とツタで溢れかえっている。ここからどうやってあの花に近づくのだ?」


 マリベル女王の言う通り、今この土蔵から出るのは非常に危険だ。

 かといって、小窓からアルラウネを攻撃するというのも無理がある。


「僕に任せて」


 ズゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴッ!!


 この土蔵とアルラウネを一直線に結ぶように、地響きと共に現れたのは二つの城壁だ。

 それに挟まれる形で、一本の道ができあがる。


 ……ちょっと間にあった建物を破壊しちゃったけれど、この辺りは元から建物がほぼ全壊してるような感じだったし、許してもらおう。


「な、なるほど……この道を進んでいくということか。だがまだ、魔物とツタが溢れかえっているぞ?」

「あたしの魔法で燃やし尽くしてやるわ!」

「ふむ、私も協力しよう」


 ハゼナさんが魔法の詠唱を始め、フィリアさんが弓を構える。

 土蔵の扉を開けると同時に放ち、魔物を一掃しようというのだろう。


「その前にある程度、片づけておくね」


 僕は二つの城壁を動かし、道を狭めていく。


 グシャグシャグシャグシャッ!!


 大量に蠢いていた昆虫が次々と潰れていった。

 再び城壁を開いたときには、もはやまともに動ける魔物は一体も残っていない。


 ツタもある程度は潰したはずだけれど、まだ結構元気に動き回っている。

 細いせいか城壁サンド攻撃はあまり効かなかったようだ。


「扉を開けるわぁん!」


 ゴリちゃんが扉を開くと、ハゼナさんの魔法とフィリアさんの矢が放たれた。

 猛烈な炎と風を纏う矢が融合しながら、昆虫の死骸とツタを焼き尽くしていく。


 炎の矢はそのまま一気に花の中心へと迫った。

 しかし花弁が壁のようにそそり立つと、炎の矢をあっさりガードしてしまう。


「さすがにこれだけでは倒せないようだな」

「みんな、行くわよぉん!」


 ゴリちゃんを先頭に土蔵から飛び出す。

 焼け焦げた昆虫の死骸を踏み越えながら、一気に花のもとへ。


 巨大な花弁の内側には、直径十メートルほどの穴が空いていた。

 その中心から伸びる茎のようなものの上に、人間の少女にしか見えないものがくっ付いている。


「誘き寄せた男たちをこの穴に落として、吸収してしまうのよぉん。中に液体が溜まってるでしょう? あれは消化液よぉ」


 アルラウネの核は、穴の中心にいるあの人間の少女に似た器官だという。

 穴に落ちないよう、気を付けて戦わなければならないようだ。


「――――」


 そのときアルラウネの少女が口を開き、言葉にはならない何かを発したように見えた。

 次の瞬間、穴の中から噴き出してきたのは、


「花粉っ!?」

「吸い込んじゃダメよぉん! 身体が痺れて動けなくなるわぁ!」

「風よ!」


 ゴリちゃんが叫ぶと、フィリアさんがすぐに風を起こして花粉を吹き飛ばしていく。


「――――」


 さらにアルラウネが口を開くと、


「魔物がどんどん集まってくるわっ!?」


 どうやらアルラウネは、魔物を魅惑して自分の思い通りに操ることもできるようだ。


「やつらはあたしに任せてくれ! どのみちこの槍では攻撃が届かない!」

「アタシも雑魚掃いに徹するわぁん!」


 マリベル女王とゴリちゃんは、次々と迫りくる昆虫の魔物を排除していく。

 一方、セレン、フィリアさん、ハゼナさんは、遠距離攻撃でアルラウネの「核」を狙った。


「っ、やっぱりあの花弁が邪魔ね!」


 だが悉く花弁の盾でガードされてしまう。

 正面からの攻撃はなかなか通らなさそうだ。


 というわけで、


「セレン、上から行くよ」

「なるほど、その手があるわね!」

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