第408話 めちゃくちゃ強くて素敵
「ば、馬鹿な……」
「あのチェリュウが……負けた……?」
「アマゾネス最強の戦士が……あの男に……」
アマゾネスたちが戦慄している。
ノエルくんが盾で吹き飛ばしたチェリュウさんは、どうやら彼女たちの中で最も強い戦士だったらしい。
「あれで、最強……? 大したこと……ない……」
って、ノエルくんがまた相手を挑発するようなこと言ってる!
僕が馬鹿にされたことを怒っているのかもしれないけど、そのチェリュウさんを倒したんだし、そろそろ抑えてよ!
「「「こ、この野郎っ……」」」
ほら、お陰でアマゾネスたちが激怒して――
「「「めちゃくちゃ強くて素敵♡♡♡♡♡♡♡」」」
「「……え?」」
つい先ほどまで殺気だっていたはずのアマゾネスたちが、急に目をハートにしちゃったので、僕とノエルくんは唖然としてしまう。
「チェリュウを簡単に倒すとか、かっこよ過ぎてマジ死ねるレベル」
「あの大きくて強そうな身体、どう見ても最高じゃん!」
「「「子宮がキュンとしちゃう♡♡♡」」」
すっかり女の顔になってしまったアマゾネスたちが、ノエルくんに群がっていく。
もちろん僕のことは完全スルーだ。
「筋肉ヤバ過ぎぃ~っ! ちょっと触らせて!」
「ああん、すっごく硬~~い!」
「「「今すぐ抱いて♡♡♡」」」
アマゾネスのお姉さんたちに取り囲まれ、身体のあちこちを触られるノエルくん。
「~~っ!? っ!? ……っ!?」
女性経験なんてまったくなさそうなノエルくんは、先ほどまでの挑発的な姿はどこへやら、タジタジになってしまった。
「ほっぺた赤くして超かわいい! てか、よく見たら結構若いじゃん!」
「え~、もしかして童貞?」
「「「お姉さんが一から教えてあげる♡♡♡」」」
と、そのときだ。
倒れていたチェリュウさんが起き上がった。
……アマゾネスの誰も介抱とかしなかったね。
額に青筋を浮かべ、強く握った拳をわなわなと震わせるチェリュウさん。
ノエルくんに敗北を喫し、言いようのない怒りを表すように、声を張り上げて叫んだ。
「てめぇら、そいつはオレの男だ! 指一本、触れるんじゃねぇ!」
怒ってるの、そっち!?
「わ、分かってるって」
「仕方ねぇな」
「「「指一本くらい良いじゃん」」」
仕方なさそうにノエルくんから離れるアマゾネスたち。
チェリュウさんは満足そうに頷くと、ノエルくんに飛びかかった。
「だああああありいいいいいいいんっ、だいしゅきいいいいいいいいいいいいっ!♡」
がんっ!
ノエルくんは咄嗟に盾でガード!
「ちょっ、乙女のハグをガードするなんて、酷いじゃねぇかっ!?」
「……乙女……?」
相手の変貌ぶりに、戦慄しているノエルくん。
うん、分かる……僕も同じ立場だったら、間違いなく盾でガードしてる。
「あらぁん、随分と騒がしいと思ったらアマゾネスじゃなぁい」
「あ、ゴリちゃん」
そこへ騒ぎを聞きつけてやってきたのはゴリちゃんだった。
「しかも倒しちゃったみたいねぇん」
「えっと、ゴリちゃんはアマゾネスのこと詳しいの?」
「そうねぇ、昔、アマゾネスの村を訪ねたことがあったのよぉん。彼女たちはとっても攻撃的なんだけどぉ、自分よりも強い男に惚れちゃう性質があるのよねぇ」
「……なるほど」
つまりノエルくんがチェリュウさんを打ち負かしてしまったことで、チェリュウさんはノエルくんに惚れ込んでしまった、と。
だからって、豹変し過ぎでは……。
「そうやって強い男の子種を宿すことで、アマゾネスは戦闘民族と言われるまでに強くなっていったのよぉん。妙齢のアマゾネスたちが強い男を求めて、各地を旅するというのも彼女たちの伝統なのぉ」
それでこの村を訪れたらしい。
「まさかこんなに早く素敵なだーりんに会えるなんて! わざわざこの村まで来てよかったぜ! ねぇ、だーりん♡」
「~~~~っ!?」
甘い声を出すチェリュウさんが腕に抱き着いてきて、頬を思い切り引き攣らせるノエルくんだった。
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