第333話 この十倍の像を
「ミリア、役人さんと何を話してたの?」
「ふふ、何でもありませんよ、ルーク様」
メイセイ神皇との謁見が終わった後、なぜかミリアが遅れて控室に戻ってきたのだ。
本人は惚けているけど、何か嫌な予感しかしない。
ともあれ、いったん御所を後にした僕たちは、しばらくガイさんの実家を拠点にキョウの街を観光することにした。
すると僕たちの姿を見て、駆け寄ってくる人がたくさんいた。
「うちのもんを救ってもろて、ほんまおおきにおおきにやで……」
「あんさんらのお陰で、流行り病に怯えんでもようなったわ!」
「おたくはんらは仏様の化身や!」
みんな涙ながらに感謝してくれる。
かなり大々的にキュアポーションを配ったので、僕たちの噂が一気に広がってしまったみたいだ。
「よかったらぜひこちらをお読みください。あなたもどうぞ」
そんな彼らに、ミリアがこっそり何かを渡している。
「ミリア、さっきから何をみんなにあげてるの?」
「何でもありませんよ、ふふふ」
キョウの街にはたくさんのお寺があった。
そこでは頭を丸くした僧侶たちが寝起きし、日々、厳しい戒律のもとに暮らしているという。
お寺には仏様を模した像が必ず置かれている。
仏様というのは神様とほぼ同義らしいけれど、結構な種類がいるらしく、お寺によって祀っている仏が違うそうだ。
見た目も武器を手にした厳つい男性から、腕が何本もあるようなものまで様々らしい。
中には高さ十メートルを超えるような巨大な仏像も存在していて、
「この仏像は、かつて起こった大規模な疫病を鎮めるために建立された。末法の世から衆生を救うとされる、ミローク菩薩である」
元僧侶のガイさんが教えてくれる。
この巨大なミローク菩薩は、一般人でも拝観することが可能で、僕たちも見に来ていた。
男性とも女性ともつかない見た目で、何かの思索に耽るように薄く微笑んでいる。
圧倒されるような大きさなのに、不思議と圧迫感などはなく、むしろ包み込まれるような感覚があった。
「この仏、男なの、女なの? 随分と中性的な感じだけど」
「菩薩に男女の概念などない」
首を傾げるセレンに、ガイさんが言う。
「素晴らしいですね、この大きさ……いずれルーク様の像もこのぐらいは……いえ、せっかくですし、ぜひこの十倍の像を……」
ミリアが何やらぶつぶつ呟いている。
なぜか少し背筋がぞわぞわしてしまったのは気のせいだろうか?
そうしてキョウトを観光していると、神皇からの使者がガイさんの実家にやってきた。
先日の返答だろう。
「ぜひ我が国にも、そのテツドウを建設していただきたいとのこと」
高位の役人たちの反応からして難しそうだと思っていたのに、意外にも認められたみたいだ。
「それからもう一つ、陛下からのご要望が……」
なんだろう?
何か条件付きってことなのかな?
「神皇陛下以下、我がキョウ国の全国民を、あなたの村の村人にしてほしい、とのことにございます」
「……はい?」
一瞬何を言われたのか分からず、声が裏返ってしまった。
「え? 村人に?」
先日の謁見ではまったく出てこなかった話だ。
そもそも僕のギフトのことを知らなければ、そんな要望など出てくるはずもない。
「あの、それがどういう意味か、理解されてますか……?」
「もちろんでございます。わたくしめも、しかと拝読させていただきました」
拝読?
何のことだろう?
「ふふふ、よかったですね、ルーク様! これでまた村人が増えますね!」
「……ねぇ、ミリア? もしかして、また何かした?」
「何の話でしょう? それより、善は急げです! キョウの国の方々を村人に加え、そしてテツドウを通じていつでも行き来ができるようにいたしましょう!(この調子で、聖典をどんどん配布し、ルーク様の信徒を増やしてまいりましょう。もちろん、エドウとオオサクにも)」
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