第297話 我々はどこに連れて行かれるのだ

「こ、これが村!? どう見ても我がエンバラ以上の大都市ではないかっ?」


 僕はマリベル女王一行を荒野の村に招待していた。

 建ち並ぶ高層建築物に目を剥く彼女たちに、ミリアが鼻を高くして言う。


「元々は草木も生えない荒野でした。それをルーク様が、僅か三年足らずでこれほどの村にしてしまわれたのです」

「「「三年!?」」」

「ま、まぁ、ほぼギフトのお陰だけどね」


 彼女たちをここに連れてきたのは外でもない。

 砂賊に奪われた国を取り戻すのに、僕たちが力を貸してあげようと思ったからだ。


「こ、これほどの都市であれば、間違いなく相当な兵力を保有しているはずっ。彼らの協力があれば、祖国奪還も夢ではないでしょう……っ!」


 興奮したように言うのはガンザスさんだ。


「僕たちはあくまで力を貸すだけだよ? 基本的には皆さんの手で砂賊を倒してもらえれば」


 しっかり念を押しておく。


 やろうと思えば、うちの全戦力を投入して、あっさり制圧できてしまうだろう。

 でもこれは彼らの国の問題だし、あんまり僕たちが手を出し過ぎちゃいけないと思うんだ。


「もちろんだ。これは我らの戦いだ。本来なら無関係であるはずの君たちの方に、犠牲者を出すわけにはいくまい」


 マリベル女王は力強く頷く。

 一方で、セレンやセリウスくんがひそひそと何やら言い合っていた。


「と言いつつ、どうせルークのことだからやり過ぎちゃうのよ」

「……姉上、ぼくもそう思います」


 何の話をしてるんだろう?


「というわけで、まずはその砂賊の人たちをこっちに取り込むところからだね」

「それは一体どういうことだ?」


 首を傾げるマリベル女王を余所に、拘束した砂賊たちをこの村の更生施設へと連れて行く。


〈更生施設:悪人や罪人を更生させるための施設。改心確率アップ〉


「ネマおばあちゃん。この人たちを更生させてもらってもいいかな?」

「お安い御用さね」


 マリベル女王は「こ、こんな老婆に任せて大丈夫なのか……?」という顔をしていたけれど、ネマおばあちゃん以外に適任なんていない。


「これだけの数は久しぶりだねぇ。どんな風に可愛がってあげるか、考えるだけで楽しいよ、いっひっひっ」


 最近子供が生まれたばかりだけれど、相変わらず元気そうだね。


「「「~~~~~~~~~~っ!?」」」


 何だ、老婆か……と安堵していた砂賊たちも、きっと本能的に恐怖を感じたのだろう、急に怯え始めている。


「じゃあ、皆さんはこっちね」

「わ、我々はどこに連れて行かれるのだ……?」


 頬を引き攣らせるマリベル女王一行だけれど、もちろん彼女たちを砂賊たちと同じように扱うはずがない。

 連れてきたのは教会――いや、大聖堂だった。


〈大聖堂:信仰の中心となる聖なる施設。ここで真摯に祈りを捧げれば、様々な恩恵を受けられるかも?〉


「皆さんには今から祝福を受けてもらうね」







 五十人ほどの女王一行の中で、ギフトを授かることができたのは五人だった。


 一人は『語学』というあまり戦闘には使えなさそうなギフトだったけれど、それ以外は『盾技』『兎の俊足』『鉄人』など、戦いにも役立つものだ。


 ちなみに『哲人』は体力や耐久力を大きく引き上げてくれるギフトで、授かったのは、


「まさかこの歳でギフトを授かるとはのう! しかも、儂にピッタリのものですぞ! これがあれば砂賊どもなど怖れる相手ではありませんな! はっはっはっはっ!」


 豪快な笑い声を響かせるガンザスさんだった。


 そして最後の一人は、驚くべきことにマリベル女王だ。


「『戦乙女』……? それがあたしのギフトなのか?」

「うん、間違いないよ」


 といっても、今まで一度も見たことも聞いたこともないギフトである。

 教会に確認してみたけれど、どうやら過去の記録を調べてみても、このギフトの存在を見つけることはできなかったそうだ。


 だから詳しいことは分からないものの、名称から考えて戦闘系のギフトであることは確かだろう。


「しかも多分かなり強そう」


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https://magazine.jp.square-enix.com/top/comics/detail/9784757581944/

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