第210話 職権乱用すぎる

「(そういえばあの村長、十三歳って言ってたな。その割には随分と小さいとは思ってたが……まさか、本当にこいつの祈りの効果で……)」

「ちなみにわたくしは『神託』のギフトを持つ神官です」

「(職権乱用すぎる!?)」


 ミランダは思った。

 このメイド、自分よりヤバいのではないか、と。


「あなたはご自身の魔法で、若い姿を保っていると伺いました……っ! ならば、ルーク様の成長を止めることもできるのではないかと……っ!」


 興奮しているのか、鼻息を荒くしながら語るメイド。

 ミランダは頬を引き攣らせながら、


「ま、まぁ、できねぇこともないが……」

「ほんとですか!?」

「うおっ!?」


 肩をがっしりと掴まれた。

 至近距離で目を爛々とさせるメイドに、ミランダは思わず「ひっ」という声を漏らす。


「お願いします! どうか! どうかルーク様をあのままにしてください!」


 決して簡単な魔法ではない。

 しかも今回の場合、相手にバレないようこっそりと使う必要があるのだ。


 加えて少なくとも成長期の間は、定期的にかけなければならないだろう。


「(いやいや、かなり面倒なんだが……)」


 こんな取引は釣り合わない。

 ミランダは突っ撥ねようと口を開きかけて、



「お願いしますお願いしますお願いしますお願いしますお願いしますお願いしますお願いしますお願いしますお願いしますお願いしますお願いしますお願いしますお願いしますお願いしますお願いしますお願いしますお願いしますお願いしますお願いしますお願いしますお願いしますお願いしますお願いしますお願いしますお願いしますお願いしますお願いしますお願いしますお願いしますお願いしますお願いしますお願いしますお願いしますお願いします(――以下永久ループ)」



 怖いので頷いた。


「は、はい……」




    ◇ ◇ ◇




「え? 何かイベントをやりたい?」

「はい。喜ばしいことに村の住民が大きく増えました。しかし急激に増えたこともあって、同じ村の住民でありながら、お互いのことをほとんど知らないまま生活しています」

「まぁ二万人もいるからね……」

「そこで何か、村人同士の仲が深まるようなイベントを開催してはどうかと思いまして」

「なるほど」


 そんな提案をしてくれたのは、難民第一陣から村人となったベルリットさんだ。


「それはいいアイデアだと思うよ! でも、何をしようかな?」

「そうですね……村の名物イベントとして、観光客も呼び込めるようなものにもできれば嬉しいですが……」


 それから僕はベルリットさんと一緒に色んなアイデアを出していった。

 前世の記憶からも引っ張り出したりすると、ベルリットさんがその度にびっくりしてくれる。


「よくそんなに誰も考えたことのないものを思いつきますね! さすがルーク村長!」


 ……僕が思いついたわけじゃないけどね。


「せっかくだし、順番にやってみるとかどうかな? 最終的に評判がよかったやつは、今後も定期的に開催していくって形で」

「なるほど! そうしましょう!」


 というわけで、そのお試しイベント第一弾として、僕たちが考えたのが、



「やっぱり武闘会でしょ!」



 こうしたイベントの定番、村一の実力者を決める武闘会だ。

 一応この国でも、例えば王様の前で行う御前試合だったり、領主が領兵の力を誇示するための武技大会だったり、似たようなものはあるらしい。


「だけど、そのどれよりも大規模なやつをやりたいよね。しかも武器の種類を問わない、魔法使いなんかも含めた完全異種格闘技戦」

「おおっ! それは面白そうですね!」

「参加資格は十二歳以上。それだけ。希望すれば誰でも出場できる。もちろん大規模な予選を行うことにはなるけど、その方が村人同士の交流という主目的に沿うしね」


 そんなわけで、冬になる前に武闘会を開催することになった。


「じゃあ、僕は会場を準備するから。ベルリットさんはみんなへの周知と、出場者の募集をお願いしていいかな?」

「お任せください!」

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