第225話 あんなことやこんなことを
「どうしよう……セリウスくんまで負けちゃった……」
頼みの綱だったセリウスくんが、惜しくも準決勝敗退を喫してしまう。
これで決勝はセレン対ゴリちゃんになってしまった。
僕が項垂れていると、
「うふふ、村長ちゃん、やっと決勝まで来れたわぁ。あと一勝すれば、村長ちゃんになぁんでもお願いしていいのよねぇ?」
「ひっ……」
試合後のゴリちゃんが、にこやかにやってくる。
……試合中に服が切り刻まれてしまったのだから仕方ないけれど、ほとんど全裸だ。
お陰で恐怖が増してしまう。
しかもその視線は、ねっとりと僕の全身を舐め回すようなもので……。
だ、ダメだ……どう考えても、子供の前では口にできないようなお願いをしてくるに違いない……。
「ちょっと! 勝つのは私だからね!」
そこへセレンが勇ましく割り込んできた。
「そしてルークに……あんなことやこんなことを……」
かと思えば、何かを想像したのか、急にニヤつき出すセレン。
あんなことやこんなことって、お願いは一つだけだって!
ああ……何でこの二人が決勝まで勝ち上がっちゃったんだろう……。
そ、そうだ! 今からシード選手だったってことで、ラウルを無理やり出場させて……さすがに無理かな……。
本人はずっと戦いたそうにウズウズしてはいるけど。
「ああ、わたくしはどちらが勝つよう祈ればいいのでしょうか……? いずれにしてもルーク様は……で、ですが、まだお尻を奪われる方がマシかも……」
ミリアがなぜか頭を抱え、ぶつぶつ言っている。
一瞬、お尻って言葉が聞こえてきた気が……ガクガクブルブル。
うん、どっちがマシかで言ったら、たぶんまだセレンの方だろう。
となると、決勝ではどうにかセレンに勝ってもらいたい。
準決勝は午前中に行われたけれど、決勝は午後からだ。
それぞれ疲れやダメージもあるだろうからね。
そうしてしばらくの休憩時間を挟んで、いよいよ決勝戦となった。
「「「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおっ!!」」」
セレンとゴリちゃんがそれぞれリングに姿を見せると、会場のボルテージは過去最高に。
「うふん、決勝に相応しい良い戦いにしたいわねぇ♡」
「そうね! あなたと戦えて嬉しいわ!」
「アタシもよぉ。セレンちゃんの剣、たっぷり受けてみたいもの」
「そうはいかないけれどね!」
「あら?」
二人はリングの上で向かい合う。
すると先ほどまであれだけ盛り上がっていた会場が、急に水を打ったように静かになった。
異様な緊張感だ。
誰もがどんな決勝戦が繰り広げられるのか、固唾を飲んで見守っている。
そんな中、ゴリちゃんはスカートの端を抓んで可愛らしく(?)立ち、セレンは――
「「「ええええっ!?」」」
誰もが目を疑った。
というのも、二刀流のセレンが、二本の剣をいきなりリングの外にまで放り投げてしまったのだ。
突然の異常行動に会場中が困惑する。
もしかしてセレンは勝負を捨ててしまったのだろうか、と。
「剣無しでアタシを倒そうっていうの?」
「そうよ!」
「あら……どうやら勝つ気はあるみたいね」
「満々よ!」
あのゴリちゃん相手に徒手空拳なんて無謀だと思うけれど、当の本人はやる気十分だ。
セレンがどんな戦いをするつもりなのか分からず、僕もまだ村人強化を使えない。
え? 決勝でも使うのかって?
そりゃ使うに決まってるよ!
「ンン……っ? ……随分と寒くなって来たわねぇ?」
ブルブルっ、とゴリちゃんが大きな身体を震わせる。
見ると、リング全体から白い煙のようなものが立ち昇っていた。
「これまでのあなたの試合を見ていて、攻略法を発見したのよ!」
どうやらセレンには対ゴリちゃん用の作戦があるらしい。
よほどそれに自信があるのか、ビシッとゴリちゃんを指さし、力強く宣言するのだった。
「優勝は私が貰ったわ!」
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