第四章

第188話 許す気はないですけどね

〈パンパカパーン! おめでとうございます! 村人の数が300000人を超えましたので、村レベルが11になりました〉

〈レベルアップボーナスとして、3000000村ポイントを獲得しました〉

〈作成できる施設が追加されました〉

〈村面積が増加しました〉

〈スキル「瞬間移動」を習得しました〉


 王都を含む王家直轄領の住民たちがすべて村人として登録されたことで、一気に三十万人を突破し、レベルが上がってしまった。


 いや、正確にはもう三十万人どころじゃない。


 王都の人口が五万人ほど。

 この王都を除く王家直轄領の住民がおよそ十五万人だ。


 さらにこれに、新たに王家直轄領となった旧アルベイル領が丸ごと加わる。

 それが二十万を超えているので、合わせると四十万人が新たな村人となったことになる。


 ちなみに元々は十六万くらいだった。


 もちろんこれはあくまでギフト上の村人であって、僕が彼らを統治しているわけじゃないけど。

 せいぜい村人鑑定を使って個人情報を覗けるくらいだ。


 荒野にある村の方に住んでいるのは、たかだか二万人ちょっと。

 実質的にはこれが村人の数と言っていいだろう。


「いやいや、二万でも多いってば……」


 あ、ところで村は無事に王都から荒野まで戻ってきました。


 ちょうど村がないときに来てしまったらしい商人や旅人たちが、巨大な城壁が近づいてきたので逃げ惑っていたっけ。

 後からそのときの驚きや恐怖を語ってくれた。


 一応『村は王都に一時移転しました。村長ルーク』って書いた石碑を建てておいたんだけどな。

 今度からは「※この村は移動します」とも記しておいた方がいいかもしれない。


 まぁもうそんな機会はないと思うけど。


「それはともかく、新しく覚えたスキルは『瞬間移動』か……これって、もしかして好きな場所に一瞬で移動することができるってこと?」


 試してみることにした。

 使おうとすると、目の前でマップが開く。


「なるほど。これで移動先を指定できるってわけね。しかも村の領域内であればどこでもいいっぽい」


 僕はひとまず村の城門に移動してみることにした。

 一瞬で視界が切り替わり、門の前に。


「ルーク村長!? 今、一体どこから……」

「お騒がせしてまーす」


 いきなり現れた僕に驚く衛兵に手を振って、次はリーゼンへ飛んでみる。


「わ、凄い。この距離でも一瞬なんだ」

「る、ルーク様!?」

「どうも、ミシェルさん。王様のスパイだったのに、まだここの代官をしてるんですねー?(にっこり)」


 僕が笑顔で軽い皮肉を言うと、ミシェルさんは頬を引き攣らせる。


「か、勘弁してくださいよー。今はもうスパイなんかじゃありませんからー」


 王様の命令を受け、アルベイル領に潜入していたミシェルさんだけれど、あれからも変わらず北郡最大の都市であるリーゼンで代官をしていた。

 ここも当然、王家の直轄領となっていて、そのまま王様から代官を続けるように命じられたためだ。


「はは、冗談ですよ、冗談。ミシェルさんの立場からすれば、ああせざるを得なかったのは理解してます」

「そ、そうですか……」


 ホッと安堵の息を吐くミシェルさん。


「まぁでも許す気はないですけどね」

「ちょっ!?」


 最後に意地悪なことを言ってから、僕は再び瞬間移動を使った。


 それから色々と試してみたけれど、本当に村の領域内であれば、どれだけ離れた場所であっても一瞬で移動できることが分かった。

 しかも僕だけでなく、村人も一緒に連れていけるようで、


「凄いです! 本当に王都に移動できてしまいましたね!」

「これがあればいつでも帰省できちゃうわね」

「せ、セレン!? 一体どこから現れたのだ!?」


 ミリアとセレンが感嘆している。

 驚いているのはバズラータの当主であるセレンのお父さん。

 セレンの実家のお城に移動してみたのだ。


 遠くにいる影武者に意識を移すのも、ほとんど瞬間移動みたいなものだ。

 だからただの瞬間移動だったなら、そこまで利便性は向上しなかったと思う。


 だけど村人も連れていけるなら話は別だ。

 同時に移動できる人数はまだ分からないけど、もしこれをもっと早く習得できていたら、わざわざ王都まで村ごと移動させる必要はなかっただろう。


「じゃあ戻ろうか。……ええと、二人ともそんなにくっ付かなくても大丈夫だけど?」


 セレンとミリアが両側から僕の腕に抱きついてくる。


 誰かと一緒に移動するには、どうやら身体の一部が接触していなければならないらしい。

 ただ、手を繋ぐだけでも十分で、こんなふうに密着する必要はなかった。


「いえいえ、万一こんな場所に取り残されては困りますから」

「ちょっと、何がこんな場所よ! これでも私の実家なんだから!」

「僕を挟んで喧嘩しないでもらえるかな……?」


 ……うん、聞いてないや。

 セレンのお父さんに「お騒がせしました」と言いおいて、僕は言い争う二人を連れて村へと戻ったのだった。


 そしてレベルアップに伴い、新たに作れるようになった施設は以下の通りだ。


 美容院(200) 鉄道(50) 鉄道駅(500) 博物館(500) 工場(1500)


「え! 鉄道と駅がある……っ!?」

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