第47話 森で狩ってきたものです
ダントさん一行に歓迎の意を示すため、僕は村人たちにお願いして、広場で盛大な宴会を行うことにした。
女性たちがオーク肉や畑で収穫した作物を使い、腕によりをかけて料理を作ってくれた。
もちろんお酒も振舞われる。
「お、美味しい!?」
「それはよかったです。どれも村で収穫したものを使ってます」
「では、このお肉は……?」
「オーク肉ですね。森で狩ってきたものです」
「「「オーク肉!?」」」
ダントさんだけでなく、護衛の兵士さんたちからも驚きの声が上がった。
「結構オークが棲息してるみたいで、よく獲れるんですよ。だから遠慮なくたくさん食べてください」
「オークがよく獲れる……」
「き、きっとハッタリ……ハッタリのはず……」
なんだかまだ緊張しているようだ。
お酒を飲めば、次第に解れてくると思うけど。
と、不意にミリアが前に出た。
何だろうと思っていると、
「これより宴会の余興として、村の武技自慢たちによる模擬試合を行いたいと思います」
え、なにそれ?
聞いてないけど。
まぁでも、確かに余興があった方が盛り上がるよね、と思って傍観していると、『剣技』のギフトを持つバルラットさんとペルンさんが広場の真ん中に出てきた。
そして激しい剣戟を始める。
目にも止まらぬ速さで繰り広げられる戦いに、次第に村人たちが熱狂し始め、立ち上がって声を張り上げる人まで現れた。
すごい、前にも二人が訓練しているところを見たことがあるけど、そのときよりさらに強くなってる気がする。
「「「……」」」
あれ?
ダントさんの護衛の兵士さんたちが、完全に食べる手を止めてる……?
「すいません、もしかしてお口に合わなかったですか?」
「い、いえいえっ! そんなことありません! とても美味しいです! つ、つい、見入ってしまって……」
気になって声をかけてみると、隊長のバザラさんが慌てて首を振った。
そうか、同じ戦士だし、バルラットさんたちの戦いに意識が集中するのも当然だよね。
「ど、どう考えても『剣技』のギフト持ちだ……まさか、こんな村に二人も……?」
バザラさんが何やらブツブツ呟いているけれど、きっと戦士にしか分からないような分析をしているのだろう。
そんなことを考えている内に、二人の模擬試合が終了する。
すると今度は、また別の二人が出てきた。
そしてバルラットさんたちと同様、みんなの前で模擬試合を披露し始める。
「……は? ま、まだ他にも、ギフト持ちが……?」
村人の数が増え、当然ながらギフト持ちの人数も増えた。
だいたい全体の一割強ぐらいなので、まだ潜在状態の子供も含めて100人は軽く超えている。
その中で武技系のギフトを有しているのは、今のところ31人。
子供や、体力の問題でギフトを活用できない高齢者を除けば、24人となる。
『剣技』や『槍技』、それに『斧技』の他にも、『格闘技』『鞭技』『弓技』『棒技』『合気技』などがあった。
そんな彼らが、次々とその武技を披露していくのだ。
村人たちはさらにヒートアップしていく。
「すげぇぞ、鞭をまるで手足のように動かしてやがる!」
「いいぞ! そこだ! やっちまえ!」
「お兄ちゃん、カッコいい!」
その一方で、ダントさん一行は非常に大人しい。
真剣に見入っているからかな?
その割に顔色が悪い気もするけど……。
武技の披露が終わると、今度は魔法系のギフト持ちが進み出てくる。
どうやら彼らも魔法を披露するつもりらしい。
武技系のギフトよりも魔法系のギフトの方が希少だ。
そのためこの村にも、潜在者やセレンを含めて全部でたった八人しかいなかった。
子供を除くと六人である。
「き、希少な魔法使いまで……一体、どうなっているんだ、この村は……?」
「大丈夫ですか? やっぱり食事がお口に……」
「だだだ、大丈夫です! 大丈夫ですからご心配なく……っ!」
全然大丈夫じゃなさそうな顔で、バザラさんは首をブンブンと左右に振った。
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