第217話 棄権しようかな
二回戦がスタートした。
一回戦が見応えのある試合ばかりだったためか、会場は開始前から昨日よりも盛り上がっている。
そんな中で始まった二回戦は、まず第一試合で、昨日ハゼナさんを破ったフィリアさんが出場。
相手はエルフの戦士で、同胞対決となったけれど、ここはフィリアさんが危なげなく勝利。
続く第二試合では、バルラットさんとノエルくんが激突した。
初期から狩猟チームで活躍していた者たち同士の戦いだ。
「シールドバッシュ!」
ここまで予選から一回戦まで、盾による突進だけで勝負を決めてきたノエルくん。
どうやらこの試合でも戦法は変わらないらしい。
「あのデカ盾野郎か。あいつの鉄壁の防御を破るのは厄介だぜ。しかもそのまま突撃してきやがるから、なおさらだ」
と評するラウルも、確か村を攻めてきたときに喰らって吹き飛ばされてたっけ。
そんなノエルくん相手に、剣士のバルラットさんがどう戦うのか。
大いに注目される中、バルラットさんは、
「逃げるが勝ちだな!」
……リング上を堂々と逃げ回っていた。
「おいおい! ちゃんと正面から戦いやがれ!」
「逃げんじゃねぇよ!」
「かっこ悪い」
この消極的な戦い方に、会場中からはブーイングの嵐だ。
一方、ラウルは鼻を鳴らして、
「はっ、確かにカッコ悪いかもしれねぇが、戦い方としては間違ってねぇ。あの盾に正面から向かったところで、攻撃は通らねぇし、ただ無駄にタックルを喰らうだけだ」
「でも、あのままじゃ倒せないよね?」
「そうとも限らねぇぜ」
「……?」
どういうことだろうと思いながら試合を見ていると、バルラットさんを追いかけていたノエルくんの動きが、段々と遅くなっていくのが分かった。
「ノエルくん、疲れてる?」
「そりゃ疲れもするだろ。あれだけ巨大な盾だ。それを持って走るだけでも、普通の人間には不可能だろうぜ」
そんなノエルくんの疲労を見て取り、それまで逃げに徹していたバルラットさんが、一気に勝負に出た。
一転して迫ってきたバルラットさんに対し、疲れを押してノエルくんが走り出す。
「シールドバッシュ! ……っ!?」
だけどギリギリのところでバルラットさんが盾を躱した。
そうしてついにノエルくんの背後を取ると、
「はぁぁぁっ!」
背中へ剣を振り下ろす。
ガキィィィンッ!!
「「「え?」」」
完全に決まったかと思われたその瞬間、響いたのは金属音だった。
見るとバルラットさんの剣が、ノエルくんの盾に受け止められている。
なんか今、あり得ない速度でノエルくんが反転したんだけど!
「マジか」
「シールドバッシュ!」
「がっ!?」
第二試合ではノエルくんが勝ち上がり、そして第三試合ではガイさんが、第四試合ではセレンがそれぞれ勝利を収めた。
そして第五試合では、またしてもゴリちゃんが相手を圧倒。
続く第六試合は、ペルンさんとアレクさんの対戦となった。
『剣技』ギフトを持つ二十六歳のペルンさんは、バルラットさんとよく一緒に稽古をしている。
彼も早くからの村人で、狩猟チームで貢献してきた。
対するアレクさんは、ハゼナさんたちと同じパーティで活躍する冒険者だ。
『大剣技』のギフトを持ち、先日の遺跡調査にも参加してもらった実力者である。
そんな二人の対決は、これまでの中でもトップクラスの好試合となった。
剣士同士ということもあって、真正面からの激しい斬り合いとなったためだ。
もちろん剣の大きさが違うため、両者の取る戦法は違ったけれど、それでも接近戦で目まぐるしく攻守を変えながらの凄まじい剣戟には、会場が沸きに沸いた。
最終的には経験豊富なアレクさんが勝ちをもぎ取ったけれど、試合後にお互い握手をして健闘を称え合うなど、最後まで観客を魅了してくれた。
ただ、リングから降りてきたアレクさんは、ハッとしたように何かに気づく。
「げっ……もしかして俺の次の相手、あのピンクマッチョじゃ……棄権しようかな……?」
どうやらゴリちゃんとは戦いたくないらしい。
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