第5話 すーはーすーはー

ルークの村

 村レベル:1

 村ポイント:10(毎日11ポイントずつ加算)

 村人の数:1人

 村ギフト:なし


「ちゃんと村人の数が一人になってる。あと、加算される村ポイントも上がってるような?」


 どうやら村人の数が増えた分、加算ポイントも増えたらしい。


「今後しばらく村人が増えることはなさそうだけど……」

「ふふふ、ずっと二人きりでもいいと思います」

「……え?」

「何でもありません」


 ともかく、これで他にできることはなくなった。

 明日のポイント加算を待つしかない。


 その後、ミリアが作ってくれた料理を食べ終わった頃には、すでに日が暮れかけていた。


 領都と違って、ここにはほとんど明かりがない。

 あるとしたら、せいぜい月明かりくらいだろう。

 夜になると特にできることもないので、僕たちはギフトで作り出した小屋で休むことにした。


 壁には採光のための小さな穴があるだけで、小屋の中はほぼ真っ暗だ。

 ほとんど手探りで毛布に包まって、僕たちは横に並んで寝転がる。


 それにしても、『村づくり』ギフトか……。

 最初は何でこんなものを……って思ったけれど、意外とこれでよかったのかもしれない。


 正直言って、僕は戦争なんて好きじゃない。

 領地を奪い合ったり、殺し合ったり……そんな血で血を洗う世界より、皆が仲良く平和に生きていく世界の方がずっといいのにって、昔から思っていた。


 この誰もいない場所に小さな村を作って。

 細々と、だけどのんびり楽しく暮らしていく……。


 その方が、きっと僕のしょうに合っているように思う。


 と、目を瞑ってそんな真面目なことを考えていたから気づかなかったけれど、何かさっきから隣から変な呼吸音が聞こえてくるような……。


「すーはーすーはーすーはー(ぐふふっ、ルーク様のにおいを一晩中嗅げるなんて、ここはもしかして天国ですかあああっ!?)」


 ……よく分からないけど、何となく気にしない方がよさそうだと思った。




 翌朝、採光用の穴から差し込む陽光で目を覚ますと、ミリアが僕の身体に密着するような形で眠っていた。


「……うーん、やっぱり家はもう一つあった方がいいかな」

「いいえ、一つで十分ですよ?」

「っ!? 起きてたの!?」

「はい。メイドとして、主よりも早く起きるのは当然の義務ですから」

「じゃあ、何で寝たふりを……?」

「(もちろんルーク様の可愛い寝顔を堪能していたのです!)」


 ミリアは時々何かを隠しているんじゃないかと思うことがある。

 まぁでも、人間、誰しも一つや二つ、秘密があるものだ。

 詮索しないようにしよう。


「それはそうと、もうメイドじゃないんだから、別に早く起きる必要はないよ」

「村人でしたね。ですが、ルーク様は村長ですし、村人として村長を尊重するのは大切なことです」


 そういうものかな?

 村で暮らしたことなんてないから、よく分からないや。





「あっ、村ポイントが21になった」

「おめでとうございます、ルーク様。これで畑を作れますね」


 あれからちょうど一日が経って、ポイントが加算された。

 何度も念を押してくるミリアに従って、僕は畑を作り出すことにした。


〈村ポイントを20消費し、畑を作成します〉


 これまで同様、一瞬の出来事だった。

 小屋の裏側の一帯が突然、よく耕された畑へと変貌したのである。


「これは……ルーク様、非常に素晴らしい土ですよ! これならきっと、作物もよく育つことでしょう!」


 ミリアが興奮しながらも、早速、作物の種を植えていく。

 ……元メイドとは思えない手際の良さだ。農業やってたのかな?


「あっ、僕もやるよ!」

「そんな、ルーク様に畑作業など……」

「貴族のお坊ちゃん扱いしないで。ここは僕の村なんだから、やれることは自分でもやってみたいんだ」

「……分かりました。ではお願いしましょうか」


 畑の広さはだいたい50メートル×50メートルといったところ。

 僕がミリアから植え方を教えてもらいながらだったこともあるけど、二人がかりでも結構、時間がかかってしまった。


 種を植えるだけでこれだ。

 畑を一から耕していたなら、どれだけ大変だったことか。


 今まで当たり前のように食べてたけど、背後には農家の人たちの苦労があったんだなって、初めて理解できた僕だった。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る