第375話 即指名するレベルの上玉であるな
全部で十本もの腕を持つ巨大スケルトンが、錆びついた大剣を振り回しながら襲い掛かってくる。
「村長、任せて」
盾を構えてそれを迎え撃ったのはノエルくん。
『盾聖技』のギフトを持つノエルくんは、うちの村で随一の盾役だ。
ズガガガガガガガガガンッ!!
巨大スケルトンが猛烈な勢いで放つ大剣の連撃を、ノエルくんはその盾で完璧に受け止めていく。
スケルトンの攻撃の威力を物語るように、こちらまで凄まじい風圧が押し寄せてきているというのに、ノエルくんはその場からビクともしていない。
「あらぁ、すごいじゃなぁい♡」
ゴリちゃんが感心したように手を叩く。
ノエルくんの身長はいまや、二メートル越えのゴリちゃんと変わらない。
以前はどちらかというと線が細い方だったのに、筋トレの効果か、肩幅もがっしりして、体格でもゴリちゃんに迫る勢いだ。
「~~~~~~ッ!?」
巨大スケルトンもまさか自分の攻撃を防がれるとは思っていなかったのか、ちょっと焦っているように見える。
そうしてノエルくんが敵を引き付けている隙に、みんなが巨大スケルトンを取り囲み、一斉に攻撃を仕掛けた。
野太い骨が次々と折れて砕け散り、巨大スケルトンは地面に崩れ落ちた。
「た、倒せたでござるか……?」
その間、ずっと僕とハゼナさんの後ろに隠れていたアカネさんが、恐る恐る訊いてくる。
「ううん。ほとんどバラバラになったのに、まだカタカタ動いてる。しぶといね」
「ぎゃああああっ!?」
アンデッドだけあって、耐久力が高いようだ。
しかも砕けた部分がゆっくりとくっ付き始めていると、放っておくと復活してしまいそうである。
「拙僧に任せるがよい。南無!」
ガイさんが浄化の魔法を使って、ようやく完全に動かなくなった。
「よし、先に進もう! アカネさん、そんなところで蹲ってたら置いてくよ?」
「それは絶対ご免でござるううううううっ!」
「ちょっ、そんなふうに縋りつかれたら歩けないでしょ。ほら、ちゃんと立って。え? 立てない?」
「こ、腰が抜けてしまったでござる……っ!」
ほんと何で来たんだろう、この人……。
「ならば拙僧が抱えてしんぜよう」
「「「エロ坊主は引っ込んでろ!」」」
足手まといのアカネさんは、マリベル女王が運んでくれることになった。
「マリベルお姉ちゃん、大丈夫?」
「これくらいお安い御用だ」
「女王様に変なもの持たせてごめんね」
「変なものとは拙者のことでござるか!?」
「他にいる? でも痩せてよかったね。もし太ったままだったら、本当にその辺に置いていったよ」
「あ、危ないところだったでござる……」
僕たちは城の中心部へと突き進んだ。
「っ、スライム!?」
「めちゃくちゃ臭くない……っ!?」
「うおっ、腐った液体を吐き出してきたぞ……っ!」
「おええええええええええええっ!」
「アカネさんそこで嘔吐しちゃダメっ、マリベルお姉ちゃんがあああっ!」
「なんか泣き声が聞こえてくる……?」
「女のゴーストだっ! 魔法を放ってきた!?」
「しかも消えた!? っ……後ろだ……っ!」
「んぎゃあああああああああああっ! ……ガクッ」
「アカネさんが気絶しちゃった!?」
途中で腐乱した巨大なアンデッドスライムや強力な魔法を使ってくるゴーストといった、上位のアンデッドにも遭遇したけれど、それも危なげなく撃破しつつ、やがて辿り着いたのは謁見の間と思われる広々とした部屋だ。
ちなみにアカネさんは気を失っている。
静かになってちょうどよかった。
「……椅子に誰か座ってるわね」
「うん、どう考えても普通の人間じゃないよね」
部屋の奥にある豪奢な椅子に腰かけていたのは、まるで絵画から飛び出してきたような端正な顔立ちと、抜群のスタイルをした若い女性だ。
妖艶な笑みを浮かべて僕たちを待ち構えている。
「ガイさん、あれは?」
「うむ。娼館で即指名するレベルの上玉であるな」
「そういうこと聞いてるんじゃないんだけど?」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます