第374話 正直言って足手まといなので

 アカネさんはアンデッドが怖いらしい。

 アンデッドの巣窟に挑むとあらかじめ伝えておいたはずなのに、何で参加を希望してきたのだろうか……。


「アカネさん、アンデッドが怖いならそう言ってくれたらいいのに」

「だ、だから怖くないと言ってるでござろう!?」

「あっ、後ろにゴーストが!」

「ひいいいいいいいいいいいいっ!?」


 頭を抱えてその場に蹲ってしまうアカネさん。

 どう考えても言い逃れなど不可能だ。


 この調子では戦うこともできそうにない。


「正直言って足手まといなので、アカネさんだけこの公園に残ってくれる?」

「そそそ、それだけは絶対に嫌でござる!?」


 アカネさんが必死に縋りついてくる。

 どうやら一人にされるのも怖いみたいだ。


「くっ、拙者のせいで迷惑をかけてしまうとはっ……もはや切腹するしかないでござるうううううっ!」

「いや、アンデッドなんかより死ぬ方がよっぽど怖いでしょ……」


 みんなでアカネさんを止めていると、マリベル女王が言った。


「ここで死ぬとアンデッドになってしまうのでは?」

「はっ!?」


 アカネさんが目を見開く。


「切腹したら拙者自身がアンデッドに!? どどど、どうすればいいのでござる!?」


 自分がアンデッドになるのも怖いようで、アカネさんは切腹を断念してくれた。

 本当に面倒な人だ……。


 仕方ないので、アカネさんも一緒に連れていくことになった。

 瞬間移動で村に連れ帰ることもできるんだけれど、一人にしたら切腹しかねないし……。


「拙僧に任せよ。お主に近づくアンデッドは、すべからく浄化してしんぜよう」


 不安そうにしているアカネさんに、同じ東方出身であるガイさんが胸を叩いて請け負う。

 だけどその視線はアカネさんの胸やお尻に注がれていたので、アカネさんのサポートはハゼナさんにお願いすることにした。


「任せておきなさい!」

「むう、何ゆえ……」

「だってあんた、どさくさに紛れてセクハラしそうでしょ!」


 ガイさんは僧侶だけれど、煩悩まみれのエロ坊主なのだ。


 公園を着陸させたのは、街の中心に建つお城の目の前の広場。

 僕たち人間の姿を見つけるや否や、そこに蠢いていた無数のアンデッドたちがこちらに殺到してきた。


「ぎゃあああああああああっ、こっち来たでござるうううううううううっ!」

「アンデッドは生者に群がる性質があるのよぉん」


 目を剥いて絶叫するアカネさんに対して、ゴリちゃんは軽く苦笑しつつ、迫りくるアンデッドの群れを迎え撃とうと拳を構えながら前に出る。


「どっせえええええええええええええええええいっ!!」

「「「~~~~~~~~~~~~~~ッ!?」」」


 アンデッド数体がまとめて吹き飛んでいった。

 ゴリちゃんの攻撃を皮切りに、みんなが一斉にアンデッドを蹴散らしていく。


 アンデッドは数こそ多いものの、精鋭ぞろいのメンバーたちの敵ではなかった。

 あっという間に広場にいたアンデッドを殲滅してしまう。


「相変わらず村の精鋭陣は別次元だな……」

「やはり私たちでは割り込む隙もないようですね……」

「……我々も付いてくるべきではなかったかもしれないな」


 ベガレンさんたちのパーティが苦笑している。


「でも、どんどん来るね」

「いちいち相手してたらキリがないわ。どうすんのよ、ルーク?」

「拙僧はあの城から強い不浄な気配を感ずる」


 ガイさんもこう言ってるし、やっぱりあの城が怪しそうだ。


「後ろからくるアンデッドは無視して、一気に城内に突入しよう」


 そうして僕たちは立ちはだかるアンデッドだけ排除しつつ、ひたすら前進することに。

 城門が固く閉じられていたけれど、領地強奪で村の一部に加えてしまえば、後は施設カスタマイズで簡単に抉じ開けることが可能だ。


「む、気を付けろ。何かいるぞ」


 城門を潜り抜けた先で、感覚の鋭いフィリアさんが真っ先にそれに気づいた。

 直後、地中から巨大な何かが這い出してくる。


 土を散乱させながら姿を現したのは、巨大なスケルトンだった。

 何本もの腕を有し、ボロボロの大剣を幾つも構えている。


「あらぁん、なかなか骨のありそうなアンデッドもいるじゃなぁい。スケルトンだけに」


 ゴリちゃんが珍しくしょうもない冗談を言った直後、その巨大スケルトンが大剣を振り回しながら躍りかかってきた。


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