第170話 怒って乗り込んできた
「なるほど、あれがルーク村長の新しい住居か。高くて素晴らしいと思う」
「やっぱりうちの村長はあれくらいが相応しいですよね」
「すごーい、パパ、あれに上ってみたいよー」
「なんと行けるみたいだぞ。上の方に展望台があるらしい」
いきなり現れた高層建築物に最初は驚いた村人たちだったけれど、すぐに「ああ、また村長か」と納得してくれたようだった。
それどころか大好評で、連日のように見学に来る人たちでごった返していた。
せっかくなので、上層の階の一部を展望台へとカスタマイズし、一般客でも入れるようにしておいた。
そのために直通のエレベーターも作ってある。
「そう言えば王宮が、一番高い尖塔部分で五十メートルくらいらしいね。……うん、王様がこれを見たら絶対に怒られる」
幸い王様がこの村に来ることはないだろうけれど、もしかしたらその耳に入るかもしれない。
怒って攻めてきたりして。
「ご心配には及びませんよ、ルーク様。王家と言え、アルベイル領内に手を出すことは不可能でしょうから」
「代わりに父上が怒るかも」
「今は忙しくて領内のことどころじゃないでしょ」
噂によると、シュネガー家との戦いに勝利した父上は、いよいよ国盗りへと動き出したらしい。
このままだと国全体を巻き込んだ大戦争が勃発するかもしれないという。
「しかしアルベイルの現勢力は、もはや他勢力が総集結したところで敵わぬほどにまで拡大している。中堅領主たちも次々とアルベイルへの屈服を表明しているというし、戦わずして王家が降伏する可能性もあると思う」
と分析を口にするのはセリウス君だ。
もしそうなったら、近いうちに父上がこの国の支配者になっちゃうってことか……。
父上の力なら、今の混乱した国を再び一つにすることができるかもしれない。
ただ、それだけで終わりそうにないのがなぁ。
「いずれにしてもしばらくは忙しそうだね。できればずっとこの荒野には目を向けないでほしいな」
今のところ何も言ってこないので、ちゃんとラウルが約束を守ってこの村のことを報告せずにいてくれているのだろう。
とはいえ村の噂は広がり続けているそうだし、いつ父上の耳に入ってしまうか分からないけれど。
そんなことを話していると、サテンから念話があった。
『ルーク様、リーガルの代官が村にやってきました』
「ミシェルさんが? 使者とかじゃなくて?」
『本人です』
「何の用だろう?」
ダントさんに代わって北郡の代官となったミシェルさんは、当然ながらかなり忙しい。
わざわざ本人が出向いてくるなんて、何かあったのだろうか。
それに一応リーガルには影武者を置いているのだけれど、そこからは何の連絡も受けていない。
ともかく応接の間へミシェルさんを通すようにと伝えた。
「……お久しぶりです、ルーク様。少し見ないうちに、またとんでもないものを作られましたねぇ……」
「あ、はい。宮殿を作ってみたら、思いのほか高層になっちゃいまして」
「はは……相変わらずですねぇ」
苦笑いするミシェルさんは、二人の付き人を連れていた。
頭にフードを被っているため、よく顔が見えないけど、身体つきから二人とも女性みたいだ。
護衛という感じではないけど……。
「それで、今日はどうされたんですか?」
「実はですねー、ルーク様に紹介したい方がいらっしゃいまして」
「紹介、ですか?」
そこで付き人の一人がフードを脱ぐ。
まるで絵画の中から飛び出してきたかのように美しい女性だった。
身に付けているのが平凡な旅装であるにも関わらず、ひとかどの身分ではないということが一瞬で理解できてしまう。
どこかの領主のご令嬢だろうか。
でも何でこんな村に?
「あなたがこの村を作られたという、ルーク=アルベイル様ですわね。事前に話は聞いていましたが、まさかこんなにもお若いなんて……」
「ええと……あなたは一体……?」
「申し遅れましたわ。あたくしは国王ダリオス十三世の第一王女、ダリネアですの」
やっぱり王家の人が怒って乗り込んできた!?
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