第136話 元気な男の子です
「ルーク村長、お陰様で無事に生まれました。元気な男の子です」
可愛らしい赤ちゃんを抱え、わざわざ報告に来てくれたのはベルリットさんだ。
「わっ、おめでとう!」
赤ちゃんはベルリットさんの腕の中ですやすやと眠っていて、傍には奥さんが幸せそうに寄り添っている。
「妻の方もこの通りとても元気にしています」
「村長が作っていただいた診療所のお陰ですわ。この子で三人目だけれど、びっくりするくらい陣痛が少なくて、あっという間に生まれて来てくれたもの」
「それはよかったです」
僕がギフトで作った診療所。
多分その効果だと思う。
〈診療所:病人や怪我人を診察し、治療するための施設。患者の苦痛軽減。医療行為の効果アップ〉
今後も妊婦さんには基本的に診療所で出産してもらった方がいいだろう。
「この子の名前は?」
「それが、ぜひ村長に名前を付けていただきたいと思いまして」
「え? 僕が?」
「はい。村長が名付け親だと知れば、この子も将来きっと喜んでくれるでしょう」
「か、構わないけど……」
……責任重大だ。
変な名前を付けちゃって、友達から揶揄われたりしたら困るし……。
「ええと……うーんと……男の子だから……」
頭を悩ませる僕。
ベルリットさん夫婦は期待の眼差しでこっちを見ているし、いつの間にか赤ちゃんまで目を覚まして円らな瞳で僕を見上げていた。
プレッシャーの中、恐る恐る口を開く。
「ベ……ベルク?」
「おおっ! もしや、私の名前から!?」
「それだけじゃないわ、あなた! ベ
「なんと!? こんなにも素晴らしいお名前を付けていただけるなんて……っ!」
「きっと村長のような立派な大人に育つわ!」
ごめん、本当はそこまで考えてない……。
ベルリットさんの名前から取った「ベル」という言葉に、単に語呂がよかったから「ク」と続けたら、たまたま僕の名前に近くなってしまっただけだ。
まぁ、喜んでるからいいかな……。
だけどベルリットさん夫妻を皮切りに、その後も次々と名付けをしてほしいという依頼が来るようになってしまった。
断るわけにもいかず、その度に必死になって名前を考えた。
実はここ最近、村人たちの出産が続いている。
ベルリットさんたちもそうだけれど、昨年この村の住人になった夫婦たちが、衣食住が満たされたことで秋から冬にかけて子作りに励んだためだろう。
まだまだ妊娠中の女性は沢山いるので、これからたくさん生まれてくるはずだ。
夫婦にあらかじめ幾つか案を作っておいてもらって、その中から選択する方式に変えようかな……。
そんなある日、とある夫婦からこんなお願いをされた。
「ルーク村長、できれば夫婦の営みができるような場所を作っていただけませんか?」
「家だと子供たちがいて、なかなかできないのよね」
「な、なるほど……分かりました」
確かに必要かもしれない。
そこで僕は、レベル8になったときに新しいラインナップに加わったある施設のことを思い出す。
〈ホテル:宿泊・休憩用の施設。調整次第で多目的に使えるよ!〉
「後半の文言が気になっていたんだけど……」
施設グレードアップで性能が強化できる項目を見てみると、「精力増強」とか「性病感染防止」みたいな言葉が並んでいる。
つまり、あっち専用のホテルにもできるということだろう。
実際に作成してみると、デフォルト状態の外観は完全に普通のホテルだ。
このままだと勘違いして入ってしまう人もいそうだけど、かといってあまりそれっぽい外観に作り替えると目立っちゃうしなぁ……。
「そうだ。地下に埋めちゃえばいいんだ」
三次元配置移動を使えば、地下にそのまま埋め込むことができる。
ズズズズズ、と巨大な建造物が地下へと潜っていく様はなかなか壮観だった。
続いて地下道を作り、それをホテルの入り口と結ぶ。
後はこの地下道に沿って飲食店を設け、ここを飲み屋街なんかにしてしまえば、人目を気にせずにホテルを利用できるようになるはずだ。
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