第68話 強制労働させられるんだ

「あのエルフたちも、きっと娼婦にされて……」

「じゃあ、おいらたちも……?」

「いんや、見た目の悪いおいらたちなんて、娼婦にもなれねぇべ。ちょっと身体が強くできてるからって、きっと死ぬまで強制労働させられるんだ……ガクブル……」


 ドワーフたちが口々に不安を口にしている。


「そんなことしませんって。彼女たちエルフも対等な村人の一員として暮らしています。僕たちは種族が違うからって、差別したりしないので安心してください」

「まったく、誰が娼婦だ。我ら誇り高きエルフは、決して人間の奴隷などにはならん。自らの意志でこの村に住んでいるのだ」


 僕がドワーフたちの懸念を否定すると、フィリアさんがそれを証明するように断言する。


 これで少しは不安が解消されたかな?

 後は実際に村を見てもらえば、何も心配する必要がないことは分かってくれるだろう。


「では、これから村を案内しますね」


 そうしてドワーフたちを連れて村に入る。


「き、綺麗な村だべ……」

「んだ。嫌な臭いもしねぇし、ゴミ一つ落ちてねぇ」

「不思議な建物も多いが……どれも真新しい」

「水もお湯も使い放題なんて……人族はみんなこんな生活してるべか?」


 村人たちに注目されて最初はびくびくしていた彼らだったけれど、村の施設を説明していくと段々驚きの方が勝ったようだ。

 目を丸くしてキョロキョロしている。


「あそこに見えるのが公衆浴場です」

「公衆浴場……?」

「みんなが使える大きなお風呂ですね」

「な……」

「それってもちろん裸だべ……?」

「そんな恥ずかしいことできるわけない……」


 エルフたちはあんまり抵抗がなかったのに、彼らドワーフにはあり得ないことらしい。

 むしろ裸を見られるなんて気にしなさそうなイメージなので、なんだか変な感じだ……。


 最後に彼らをマンションに案内した。


「ここがこれから皆さんの住む場所です。ひと家庭に付き一部屋、使っていただいて構いません。各部屋にはトイレも付いています」

「あ、あの……村長殿……」

「どうされましたか、ドランさん?」


 部屋の中も見せたりして、大よその使い方を説明したところ、なぜかドランさんが言い辛そうに、


「とても素晴らしい部屋なんだが……」

「何かありました? もし希望があればおっしゃってください」


 施設カスタマイズを使えば、希望に答えられるはずだ。


「実は……ま、窓が大きくて……その……明かりがいっぱい入ってくるのが……」

「?」


 詳しく聞いてみると、どうやら彼らは長きに渡って洞窟の中で暮らし続けたため、太陽の光が苦手になってしまったのだという。


「明るいと、落ち着かないというか……気持ち悪くなるというか……」

「そ、そうなんですね……」


 なかなか難儀な体質のドワーフたちである。


 でも、それくらいなら対処は簡単だ。

 部屋から窓を無くしてしまえばいい。


「あ、でも……もっといい方法があるかも」




「ここならどうですか?」

「す、すごい……っ! おいらたちが住んでた洞窟とほとんど変わらない環境だ! ここなら落ち着ける!」


 地下道にドランさんの喜びの声が響く。


 そう、僕がドワーフたちを連れてきたのは、新たに作成した地下道だった。

 洞窟の中に暮らしていた彼らにとって、太陽の下の地上で生活するより、ここの方がもっと合うだろうと思ったからだ。


 そうして地下道にマンションを建てる。

 これなら窓があっても、外は洞窟内なので問題ないはずだ。




「というわけで、乾杯!」

「「「かんぱーい!」」」


 その後、夜になって彼らの歓迎会を催すこととなった。

 どうやら陽が沈んでしまえば、外に出るのもあまり気にならなくなるらしい。


「さあさあ、皆さんも遠慮せず飲んでください」

「で、では、お言葉に甘えて……う、美味い!?」


 最近この村ではお酒造りがかなり盛んになってきていて、色んな種類のお酒が飲めるようになっていた。

 原料や水がいいせいか、すごく美味しいらしい。

 ……僕はまだ飲めないんだけど。


 ドワーフはお酒好きな種族だと聞いているので、これで少しは打ち解けてくれるかもしれない。

 そんな僕の期待は、ちょっと予想外の形で裏切られることとなった。



「「「うほおおおおおおおおおおおおっ!」」」



 ……何かお酒を飲んだドワーフたちがいきなり叫び出したんだけど。


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