第3話 試しにやってみることを推奨します

〈この場所で村を作成しますか?〉


 突然、視界の端っこにそんな文字が浮かび上がった。


「えっ? なに、今の?」

「……る、ルーク様?(まさか、わたくしの想いが顔に現れてしまっていた!? ま、マズいです! あんな気持ちの悪い顔を見られたとしたら、確実に嫌われてしまう……っ!?)」


 なぜかミリアが焦っているけれど、そんなことよりこの謎の文字だ。


〈この場所は村を作成することができます〉


 わっ、文字が変化した。

 もしかして、僕の考えを読み取っている……?


「ええと……君は一体、何者?」

〈はい。『村づくり』ギフトをご利用いただくに当たり、ガイドをさせていただきます〉


 僕の質問に対して、ちゃんと返事が返ってきた!

 しかも『村づくり』ギフトのガイドだって……?


「そんなの聞いたことないんだけど……」

「ルーク様……? これは……独り言……? はっ、まさか、この過酷な状況下で精神に異常を……? ルーク様! ご心配には及びません! わたくしが傍にいますから!」

「だ、大丈夫! 僕は正常だから! ただ、どうやら僕のギフトが発動しているみたいで……」


 ミリアに思い切り心配され、僕は慌てて弁解する。


 僕はさらにそのガイド? とやらに訊ねた。


「えっと、『村づくり』ギフトって、どんなことができるの?」

〈名前の通り、村を作成することができます。この場所は所有者がいないため、村を作成することが可能な場所です〉


 どうやら今までギフトが使えなかったのは、僕が所有者のいる土地にいたかららしい。


「うーん、まだよく意味が分からないけど……とにかく、村を作ってみようかな」

〈村を作成します〉


 次の瞬間、僕たちの足元の地面が、真っ平らにならされた。

 一辺が五十メートルほどの正方形の範囲内である。


 と言っても、それ以外は何の変化もない。


〈村を作成しました。村のステータスを確認しますか?〉


 ステータス? よく分からないけど、僕は頷く。

 すると視界に次のような文字列が浮かび上がってきた。


ルークの村

 村レベル:1

 村ポイント:50(毎日10ポイントずつ加算)

 村人の数:0人

 村スキル:なし


「何これ?」

〈村の現在のステータスです〉

「村レベルって何?」

〈村の現在のレベルです。村人の数を増やすことで、レベルが上昇していきます〉

「村ポイントは?」

〈村ポイントを消費することで、様々な施設をつくることが可能になります。現在は一日に10ポイントずつ加算されていきます。村レベルや村人の数に応じ、この加算ポイントは大きくなります〉

「施設……?」

〈現在つくることが可能な施設を確認しますか?〉


 確認することにした。

 するとまたしても別の文字が視界に現れる。


 小屋(20) 花壇(20) 物見櫓(20) 土蔵(20) 堀(20) 土塁(20) 土塀(20) 畑(20) 井戸(20) 家屋・小(50)


「……何これ?」

〈作成可能な施設の一覧です。カッコ内の数字は必要な村ポイントとなります。村レベルが上昇することで、作成可能な施設も増えていきます〉


 ……どういうこと?

 説明されても分からないっていうか……家屋や畑を作成する? どうやって?


 確かにどれも今の僕たちに必要なものだ。

 あるだけで一気に開拓が容易になるだろう。

 でも、そんなうまい話があるとは思えないんだけど……。


〈ごちゃごちゃ考えるより試しにやってみることを推奨します〉


 色々考えてたらちょっとキツい言葉で指摘された!?


「わ、分かったよ。やってみればいいんでしょ、やってみれば」


 それぞれ作成に必要な村ポイントが異なるらしい。

 小屋は20だけど、家屋・小には50も必要だ。

 今ある50ポイントをすべて使い切ってしまうことになる。


 僕はひとまず小屋とやらを作成してみることにした。

 場所を指定して、小屋を作るように念じる。


〈村ポイントを20消費し、小屋を作成します〉


 次の瞬間、目の前に小さな木造の建物が出現した。


「「へ?」」


 僕とミリアさんの声が重なる。


「ほ、本当にできた……?」


 小屋なので、こじんまりしたものだ。

 中を覗いてみたけれど、窓もなければ、ベッドなどの家具もない。


 それでも、これなら十分風雨を凌ぐことができるだろう。

 もし自分たちの手で作ろうとしていたら、どれだけの時間と労力が必要だったことか。


 それを一瞬で作り出しちゃうなんて……。


「ルーク様、これは……」

「……うん。どうやら僕のギフトの力みたい」


 この『村づくり』ギフト、意外と便利なのかもしれなかった。

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