第368話 ちょっと行ってくるね

「くくく、だが結果は変わらぬ! 貴様らを殺して、それからスルダンを殺せばよい! 順序が逆になっただけだ! 逃げようとしても無駄だぞ? この格納庫は完全に閉鎖しているからなァ! 鼠一匹、出ることも入ることも不可能だ!」


 ゴリちゃん師弟の連携によって、皇帝を奪われた大臣だったけれど、自身の優位を疑っていないようで、勝ち誇ったような笑い声をスピーカー越しに響かせた。


「しかし貴様らは幸運だ! 機竜の初めての実戦相手に選ばれたのだからなァ! その栄誉を誇りながら、死ね!」


 機竜がその尾を豪快に振り回した。

 近くにいたゴリちゃんはとっさに両腕でガードしたものの、思い切り吹き飛ばされ、壁に激突してしまう。


「ああん、強烈ねぇ……」

「ゴリちゃん師匠!?」


 ゴリちゃんを心配しつつも、ガンザスさんが皇帝を抱えながら僕たちの方へと戻ってくる。


「接近戦は危険そうねっ! それなら……っ!」

「うむ、遠距離攻撃だ」


 セレンが攻撃魔法を放ち、フィリアさんもすかさず矢を打つ。

 さらにメンバーたちが、一斉に遠距離攻撃を仕掛けた。


「ふははははっ! 無駄だ無駄だっ!」


 だけど、セレンの氷弾もフィリアさんの矢も、その硬い装甲の前に弾かれてしまい、大臣の勝ち誇ったような哄笑が響き渡る。

 先ほどゴリちゃんの強烈な一撃でも、顎が開きはしたけれど、僅かに表面が凹んだ程度だったし、相当な防御力のようだ。


「今度はこちらから行くぞ? まとめて死ぬがよいわ!」


 そのとき、機竜の口腔が強く発光した。

 何かを溜めているかのような様子に、僕たちは警戒する。


「なんという魔力っ……」

「く、来るぞっ!?」


 直後、機竜の口から放たれたのは、魔力のレーザーだった。


 逃げ道をなくすためか、首を横に大きく振る機竜。

 極限まで圧縮された魔力の光線が、壁や床を一瞬にして削り取りながらこちらへと迫る。


「みんな! ぼくの後ろに!」


 盾を構えながらノエルくんが叫ぶ。

 全員が慌ててその背後に飛び込むとほぼ同時、レーザーが盾に直撃した。


「~~~~~~~~~~~~~~っ!?」


 吹き飛びそうになるノエルくん。

 それを慌ててゴアテさんが支え、辛うじて耐える。


「なんて、威力……」


 ノエルくんが装備している盾は、アダマンタイト製の特注品だ。

 にもかかわらず、今のレーザーを受けて中心が大きく抉られてしまっている。


 巨人兵と同様、一度に膨大な魔力が必要なはずで、何発も放つことは難しいはずだが、この盾の状態では恐らくもう一発、持つかどうか……。


「馬鹿な……この一撃を、防いだだと……?」


 一方、大臣の方も驚愕していた。

 まさか凌がれるとは思っていなかったみたいだ。


 それにしてもあの防御力に加え、凄まじい威力の魔力レーザー。

 まともに戦っていたら、いくら精鋭揃いの部隊といえ、死傷者が出てしまうだろう。


 以前、巨人兵を倒したときのように、床に穴をあけて落としてしまうという戦法は、生憎と今ここでは使えない。

 この場所のように人工的に作られた床を抉るような形で、いきなり堀を作り出すことはできないのだ。


 幸いこの戦いのために準備していた巨人兵が、あと三機残っている。

 これを一気に投入して、機竜と戦ってもらうか……。


 ……いや、待てよ。


 あの機竜の大きさだ。

 もしかしたら操縦席も……。


 僕はヴィレッジビュー機能を使い、機竜のを調べていく。


「見つけた!」

「? どうしたのよ、ルーク? それより、あいつをどうやったら倒せるのか、教えなさいよ! そうだわ! 以前、ドラゴンゾンビを倒したときみたいに、デンシャをあいつにぶつけるのはどうかしら?」

「その手もあるけど、今回はもっと簡単な方法があったよ。じゃあ、ちょっと行ってくるね」


 僕はそうセレンに告げて、瞬間移動を使う。

 そうして視界が切り替わった先にいたのは――


「だが何発も防げるはずがない。今度こそ終わりにしてやろう」

「こんにちは」

「へ? ~~~~~~っ!? な、なななな、なぜここに!?」


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