第183話 完全に別格だな
前回ラウル軍に対して行ったのと同じように、彼らの足元に巨大な堀を作成して、いきなり地面を消失させてみた。
だけど、さすがは父上が率いるアルベイルの精鋭兵たち、堀の底に激突してもしっかり受け身を取っている。
それでも馬から下ろせたから十分な成果だろう。
「騎馬での突進は厄介だしね」
王宮前に展開させている五百人ほどの兵たちは、全員が村人や村を拠点としている冒険者たちだ。
村で製造された武具に身を包んだ彼らが、堀から脱出したアルベイル軍と激突する。
一応、王宮の兵たちも一緒に戦うと言ってくれたのだけれど、彼らは王宮内に控えてもらっていた。
正直言って、
この五百人は村の精鋭たちで、王宮兵ではかえって足手まといになるだろうとの判断だ。
まぁ、王宮を守護する兵たちは実戦経験に乏しいしね。
もちろん格式は高いのだけれど、そこらの諸侯が所有する領兵の方がよっぽど強いくらいである。
「な、何だ、こいつらは!?」
「つ、強い!?」
そんな村兵たちによって、勢いよく突っ込んできたはずのアルベイルの精鋭兵たちが跳ね返されていた。
数で上回っているからではない。
個々の能力で明らかに圧倒しているのだ。
経験こそアルベイル兵が上だろう。
だけど、ギフトやスキルを含め、ステータスでは大きく凌駕している。
しかもまだこちらは村人強化のスキルは使っていない。
「馬鹿なっ!? 我の攻撃が防がれるなど……っ!」
四将の一人、巨大な棍棒を振り回すガイオンも苦戦している。
盾聖技のギフトを持つノエルくんが、城門すら破壊してみせたその一撃を、盾で捌き切っているのだ。
「ほほほ、二刀流に、氷の魔法……バズラータの氷剣姫ですか……」
さらに四将のメリベラも、セレンを相手に完全に抑え込まれてしまっていた。
「あの四将たちと互角にやり合う奴らがいるとは……っ!」
「くっ……怯むな! 我らに敗北は許されない!」
士気こそ衰える様子のないアルベイル軍だけれど、それでも劣勢は明らかだった。
……ただ一人を除いて。
「ふん!」
「「「がぁっ!?」」」
父上が剣を振るうと、それだけで凄まじい衝撃波が発生し、数人をまとめて吹き飛ばしてしまう。
先ほどから勇敢な村人たちが次々と挑んでいるけれど、攻撃を届かせることすらできていない。
「ふむ、あの男、完全に別格だな。あれが貴殿の父君か」
「う、うん。正直、倒せる気がしないかも……」
僕の傍で矢を放ち、余裕で百発百中させていたフィリアさんが、圧倒的な強さの父上に舌を巻いている。
父上に挑戦している村人たちに関しては、すでに村人強化を使っているというのに、あの力の差だ。
武技系のギフトを持っているにもかかわらず、手も足も出ない。
あのバルラットさんですら、太刀打ちできずにあっさりやられてしまったほどだ。
たぶんノエルくんが守りに徹したとしても、一分も持たない気がする。
「ふはははは! さすがはエデル様だ! いかに兵力を削られようとも、エデル様さえいれば我らの敗北はあり得ぬ!」
「ほほほ、エデル様は一騎当千ならぬ、一騎当万。たったお一人で、いかなる戦況をも覆してしまわれるのです!」
四将の二人が勝ち誇る中、父上は真っ直ぐ僕に向かって突き進んでくる。
その血走った目は完全に僕を狙っていた。
「ルーク、お前は完全に私を怒らせた……私の手であの世へ送ってやる」
……怖っ!
「させるか!」
「村長をお守りしろ!」
「雑魚どもが邪魔をするな!」
「「「ぐぁっ!?」」」
村兵たちが立ち塞がるけれど、その歩みを止めることはできない。
フィリアさんの矢も簡単に斬り落とされてしまう。
そうして、彼我の距離があと十メートルほどとなったときだった。
「……死ね」
父上の全身が煌々と光り出す。
以前、ラウルが見せたのと同じ……猛烈な闘気の輝きだ。
「させねぇよ」
「っ!」
だがそのとき、突如として父上に躍りかかる影。
咄嗟に剣で防御した父上の目が見開かれた。
「……ラウルっ?」
「兄貴はやらせねぇぜ、クソ親父」
「っ……貴様っ……」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます