第341話 あれは遊園地ですね

 ゴバルード共和国の使者団を、村に案内することになった。

 一番早いのはもちろん瞬間移動なのだけれど、


「この国には、ルーク様が考案されたテツドウというものがあると聞いております。ぜひそれにも乗せていただけないでしょうか?」


 とお願いされたので、鉄道を使うことに。

 王都の地下に設けた駅に向かう。


「これが鉄道の乗り場になります」

「もしかしてあの巨大な四角い箱が……」

「はい。あれに乗っていれば、勝手に目的地まで連れていってくれますよ」

「あ、あんなものが動くというのですか?」

「そうです」


 どういう原理なのかは聞かないでほしい。答えられないので。


 そうして全員で車内に乗り込むと、しばらくして電車が動き出した。


「「「ほ、本当に動いている!?」」」


 ちなみに現在、この王国各地を結ぶこの鉄道網は国に管理や運営を任せていて、時刻表を公開し、電車を定期運行している。

 車内には一般の客もたくさんいるので、車両を一つ使者団用に貸し切りにさせてもらった。


「基本的には地下を通っていきますが、走っているのが分かりやすいように一部、外を走るようにしてあります。あ、さっそく地上に出ますね」


 ずっと地下の変わらない光景が続くせいか、何か不思議な魔法を使っているのではないかという声が多数寄せられていた。

 せっかくだし外の風景も見たいよね、ということで、一部の区間、外を走るようにしたのだ。


 やがて電車が地上へ浮上する。


 魔物や人の侵入を防ぐために、高架の上を走らせていた。

 これは橋をカスタマイズして作ったものである。


〈橋:鉄筋コンクリート製の橋。高強度。抗劣化。構造や形状の選択が可能〉


「なんという速さだ!? 王都が凄い勢いで遠ざかっていく……っ!」

「おい、あれを見ろ! 空を飛ぶ鳥が止まって見えるぞ!」

「間違いなく全速力の馬よりも速い!」


 興奮して叫ぶ使者団の人たち。

 そうしてしばらく王都の外を走った後、再び電車は地下へと潜っていった。


 窓の外の暗闇が続き、落ち着いたところで、イアンさんが訊いてきた。


「ところで、ルーク様。このテツドウというものを、あっという間に建設してしまわれたと聞いているのですが……」

「あ、はい。実はそうなんです」


 すでに異国にまで噂が広がっているのかと驚きつつ、僕は頷く。

 それとも王様から聞いたのかな?


「ギフトで作り出したので、正直どんな原理で動いているのか、説明してほしいと言われても説明できないんですよ」

「なるほど……。ちなみにそのギフト、巨大な城壁を一瞬で作り出すことも可能だとか……。例えば、バルステ王国との国境近くにある〝万里の長城〟なんかも……」


 どうやら万里の長城のことまで知っているらしい。


「そうですね……もちろん、無制限に作れるってわけじゃないですけど」


 と言いつつ、村人の数が増えた今、ほとんど村ポイントが枯渇することはなくなっていた。


 その後、一時間ほどで村に到着――移動中、僕は影武者と入れ替わっていたけど――して地上に出ると、イアンさんたちは目を丸くした。


「こ、これが、何もない荒野にたった数年で作った街だというのですか……?」

「先ほどの王都以上では……」

「見ろ、あそこ! 空中に何かが浮いているぞ!?」

「あれは遊園地ですね。『空』をテーマにしているので、丸ごと空に浮かべてます」

「「「???」」」


「宇宙」をテーマにした遊園地は失敗に終わったので、この世界の人々にも馴染みのあるテーマで作り直したのである。

 リニューアルオープン以来、連日の大盛況となっていた。


「(正直この国に来るまでは半信半疑でしたが、やはりバルステ王国から聞いていた通りのようですね……。もしこのお方の力をお借りすることができれば、きっと我が国を……っ! 絶対に失敗は許されません!)」

「? イアンさん? どうされましたか? なんか思い詰めてるような顔をされてますけど……」

「い、いえ! 何でもありません! 驚きのあまり、つい呆然としていただけです!」

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