#15 破裂する林檎



(なんだこの状況は……?)



 目の前の状況を確認しなおす。

 シャリアは、弾倉マガジンを銃に装着し、槓桿レバーを引く。薬室チャンバーに銃弾が入り込み、かちゃりと音がすると、指先で切り替え軸セレクター単発セミオートに切り替える。

 銃床ストックを肩に当て、引金トリガーを引く。

 銃弾は見事に真ん中に命中し、標的である林檎はバラバラに四散した。薬莢ケースは独特の金属音を鳴らしながら、地面に落ちていった。


(なんだ……この状況は……!?)


 シャリヤに連れられて、シャリヤの好きな街を見下ろせる場所を紹介してもらえるようなそんなシチュエーションを期待していたのに現状はといえば、第二次大戦ばりの小銃をが持ち上げて、一寸の狂いもなく標的を撃ち抜いているところを見せられているものであった。

 シャリヤは一体どういうつもりなのだろう。


"Cenesti, letix fqa."


 シャリヤが銃を差し出す。一応受け取ってしまうが、何をすればいいか分からない。生まれてこの方銃なんて持ったこともない。


"Edixa fqavolon dzastie xelvinj gelx, cunyl'i cinastergeson hal'jin shrlo."


 銃床と標的を指してから、シャリヤは標的に向かって人差し指を複数回折り曲げるジェスチャーをする。


(――撃てと?)


 目の前にあるリンゴをじっと見つめる。

 日本に住んでいる限り、特別な事情がない限り拳銃やライフル銃を持ったり、撃ったりする機会など無い。だが、このファンタジー異世界では……ファンタジー異世界では……?


 あれ、ここってファンタジー異世界ではない?


 翠は最初から街を見てきたが、周りの街を見れるこの場所は普通に第二次世界大戦後くらいのいわゆる現代風の街並みに見えたし、洗練されたようなライフル銃だってある。どう考えても、ファンタジー異世界には見えないじゃないか。


(いや……そうではなく……。)


 これが本物の異世界なのであろう。

 戦争もほどほどに、魔法を使って敵を吹き飛ばし、三人以上の女の子にたかられる状況自体がハイファンタジーの上に作られたファンタジーなのかもしれない。


(理想の異世界と違うとは……苦痛だ……とにもかくにも……まだだ……っ)


 これは好機に違いない。

 翠は主人公、そう異世界転生ものの主人公なのだ。

 銃を構える。そして銃床を肩に当て、銃に身を寄せ、標的に集中する。


"Cen......sti?"


 いつまでも引き金を引かなかったから不思議に思ったのか、シャリヤは不安な声をして名前を呼んできた。

 でも、もう大丈夫。


 放たれた銃弾が標的のリンゴに命中し、翠の標的もまたシャリアのそれと同じようにバラバラに砕け散る。シャリアは驚いたように、目を見開いてそれを見た。


"Mi es俺は 異世界転生もの主人公、ならばチートとハーレムを目標にこの世界を闊歩するのみだ!"




 翠は決意に満たされた。

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