#198 スルプ語
一時はどうなることかと思ったが飛行機は危なげもなく着陸することが出来た。見上げるとそこには燦々と光る太陽に当てられながら輝く機体があった。何処までも続きそうな赤茶けた灰色の平面――飛行場が翠たちの足元に広がっていた。ここがPMCFなのかどうかはよく分からないが、とりあえず目の間の現状を認識することが難しかった。
片や二眼レフカメラのような縦長のカメラを持って楽しそうに話していたり、片やメモパッドを片手に日差しを恨めしそうに空を見上げ、帽子を深く被っていたり。恐らく記者達であろうような人間たちが大量に飛行場の脇に構えていた。翠たちが出てくるやいなや、彼らの声ははっきりと聞こえるようになっていた。
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シャッターを切る音が複数回聞こえる。それに混じるPMCFの住人――タカン人たちの声は以前聞いたタカン語とは違った。どちらかというと崩れたリパライン語の発音のように聞こえた。"
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レシェールが警告するように言うのに翠は頭を振って記者から目を逸した。確かにあの類の人間に関わると碌なことにならない気がする。シャリヤたちに遅れていたのに気づき、レシェールについて行く。誰か足りないような気がしていたが、ラヴュールが来ていないようだ。誰も指摘しないあたり、彼には何か機内に残ってすることがあったのだろう。
先頭に立つヒンゲンファールの目の先には青い制服を来ている人間が数人立っていた。
"Xux el
制服のうちの一人が普通にリパライン語を話した。先導に従うように自分たちは全員、その制服たちの後を追うようにして空港設備の中へと入っていった。記者たちは他の警備職員に阻まれて遠くから写真を取ることしか出来なかった。
じめじめする空気の中、施設の中へと入ってゆく。裏口を使っているような利用者フレンドリーとは完全に相反したような通路の設計を見ながら、シャリヤは心配そうな顔をしていた。
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シャリヤの疑問にレシェールが答える。
そりゃ、難民として国を転々としていたら、たまったものではないだろう。苦労はPMCFで最後にして欲しいと願うばかりだ。
制服たちに一つの部屋に案内されて、長椅子にそれぞれ座らさせられた。"
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シャリヤは不思議そうに首を傾げる。補足が必要なようだ。
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どうやら、PMCFは多民族国家らしい。タカン語を話すタカン人が中心の国家だというのはこれまで聞いたことで分かっているが、それに加えてスルプ語を話すスルプ人が居るらしい。
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スルプ語の名前を口に出して考えているとヒンゲンファールさんが補足してくれた。言語の名称が複数であることは良くあることだ。インド先輩が言っていたが、中国語には地域によって複数の呼称があって、中文、漢語、華語、唐話などなどの名称が使い分けられる。スルプ人たちの言葉もきっと別名がいくつかあるのだろう。
そんなことを考えているうちに部屋の扉が開いた。空港か政府か、よく分からないが書類を持ち合わせた職員が数人入ってきて、翠たちを舐めるように見回した。
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