#261 輻輳する関係
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二人はしょうがないというような表情でこちらに視線を向けていた。つまるところ、今回は逆"fenxe baneart"ということだったのだろう。
整理すると、"xorlnem"と"xorln"は根本から意味が違うということだ。前者は「素晴らしい」で合っているが、後者は「疑問を抱く」のような意味の形容詞だったようだ。つまり、インリニアが"la lex es xorln"と言ったのは「それは奇妙だな」という意味だったということだ。ついでに文脈的に"
インリニアは不機嫌になってしまったらしく、腕を組んでこちらを睨んでいた。
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シャリヤは不思議そうにインリニアの方に手を向ける。インリニアは片眉を上げ、怪訝そうに彼女を見返した。
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インリニアは同意を求めるようにこちらにまた視線を向けてきた。オブシディアンブラックの瞳には自分の姿が映っている。反面、シャリヤは彼女の言葉を聞いた瞬間何かを思い出したかのように視線をこちらから逸していた。
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インリニアの追求にシャリヤは顔を歪ませる。何か言いたくないことでもあるのかもしれない。もしくは誰かに呼ばれていたというのはあの時あの質問を訊かれた時に抜け出すための方便だったのかもしれない。
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"......"
シャリヤは申し訳無さそうに俯いて黙ったままになってしまった。インリニアはといえばバツが悪そうに頬を掻きながら雨が降っている外に視線を向けていた。とてもじゃないが酷い空気だ。話題を変えたほうが良さそうだ。今の空気を塗り替えるくらいの話題といえばあれしかないだろう。
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シャリヤはいきなりの話題の変化に驚きながらも興味津々な様子でこちらに向き直った。アイオライトのような瞳が答えを待っている。一方、インリニアは静かに続きを待っていた。
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いきなりの夕張の話を訝しげに思っているのかインリニアは即座に疑問を示してきた。その声色からは彼に関わるのが危険ではないかという考えが感じ取れた。だから、ここは分からない単語をはっきりと理解してから話しを進めねばならない。さっきのように中途半端な理解で話を進めれば今度こそ信用してもらえなくなるだろう。
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インリニアは矢継ぎ早の質問で会話が続かないのにフラストレーションが溜まったのか大きなため息を付いた。その間を縫うようにしてシャリヤが手を挙げた。
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一部は知らない単語だったが、文脈を追えば理解は苦しくなかった。"
動詞についている"m'-"などはどうやら文接続詞の縮約形だったらしい。つまり、"«chaku» m'es ny zelk, «jol» es kraftona."は"«chaku» es ny zelk mal «jol» es kraftona."と同じということらしい。
シャリヤは説明を終えて、会話のバトンをインリニアに返すように彼女の方に視線を移した。インリニアは説明が終わったのに気づくとともに"
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インリニアは未だに訝しげな表情を崩さなかった。当然だ、話の信憑性を担保する情報がまったくない。彼女は夕張に対面こそしたが日本語が分からない以上、浅上の後にやってきて去っていった謎の人物という印象しかないだろう。
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気づけばシャリヤが胸に手を当ててインリニアに訴えかけていた。良く考えれば、一番元の世界に帰りたいのはシャリヤだろう。エレーナだけではない。多くの知り合いと断絶されてしまった。気丈に振る舞っているように見えて彼女は弱いのだ。
そんな訴えが通じたのか、インリニアは彼女の言葉に自然に頷いていた。
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インリニアは情報を出して頷く以上詳細を教えてはくれなかった。というより、彼女自身も又聞きの情報だったのだろう。合戦のようなものが行われてユフィア自身が指揮を取っていると見ると、長引けば当分戻ってこない可能性もある。
当分戻ってこないのならば、野盗刈りのようなものでは無いことになる。近隣の情勢も不安定になっているということだろう。
「……嫌な予感がするな」
日本語で呟いた言葉は雨音に飲み込まれて消えたが、二人には聞こえていなかったようで追求を受けることは無かった。
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