#305 もう泣かせちゃダメですよ
レフィを探して学園の中を走り回っていた。彼女が居る場所といえば、限られている。だが、学園の中に彼女の姿は見当たらなかった。どこか外へと出ているのだろうか。
だとすれば、場所は一つに限られていた。
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レフィは顔を上げて近づいてくる俺の姿を見た。その表情は疲れ切ったようなものを感じさせる。
ここは洪水のときに彼女が避難していた用水路の脇の小さな祠のような建物だ。今日の天候は晴れで、あのときと比べれば水位はとても低かった。
彼女は浮かない表情でこちらから視線を外していた。
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"......"
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彼女は俯いて、受動的な姿勢で俺の話を聞いていた。
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"......
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こちらを見上げたその瞳は涙で潤んでいた。その視線で俺の心は乱される。
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レフィは深くため息を付いた。
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俺は思わずレフィの両肩を掴んでしまった。彼女はびくっと驚きに身を震わせて反応した。
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レフィは静かに泣き始めた。いつも元気な彼女らしくなく、しめしめと泣きながら鼻をすすっている。
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彼女は俺のことを見上げた。
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そして、潤んだ目を擦ってから、精一杯の笑顔を見せてくれた。
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そういってレフィはその場から立ち上がって、逆に俺の両肩を持った。
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そんなことをさらっと考えて、俺は"
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元気一杯にレフィはそう答えた。その瞳にはもう涙は無い。
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再び俯きながら彼女はそういった。別れの言葉を聞いた俺の足は動かなかった。何か言い残したことはなかっただろうかという名残惜しさが足を麻痺させていた。
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"......"
レフィはそう言っている割に目をこちらから背けて、表情を見せないように頑張っていた。
彼女は健気な子だ。俺が居なくても、十分やっていける。そう確信した途端に足の麻痺は解け、気づけば歩き出していた。
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