#304 私はここで待ってるから
呼吸が落ち着いてくると、彼女はその青い目をこちらに向けた。彼女は瞬きもせずに驚きの表情でこちらを見つめていた。
"
彼女の唇が揺れ動き、囁くような声が聞こえた。自分の名前をさも知っているかのように呼んでくれた。それが聞こえた途端に込み上げてくるものがあった。
俺は抱いている手を震わせながら、彼女の瞳を見つめた。
"
"
そう囁いたシャリヤは自分が置かれている状況に困惑していた。今までの記憶は無いのだろうか? いや、あろうがなかろうが困惑はしていたかもしれない。
レフィは腰に手を当てて、こちらを見ていた。見上げた彼女の顔は疑問と不満の入り混じったような表情になっていた。こちらに歩みを寄せながら、彼女はシャリヤに人差し指を向ける。
"
"
"
レフィが憤りを隠さずに反論しようとした瞬間、がさっと茂みの方から音がする。三人の視線が音の出どころを探っていた。
"
先ほど倒したはずの男子生徒がそこには立っていた。レフィは驚いた様相で彼の鼻っ面を指差す。
"
"
"
レフィは再度ウェールフープ発動のために構えの姿勢を取る。男子生徒は全く動かなかった。
"
"
レフィの背後から、答えると彼は俺をじっと睨みつけた。
"
"......"
"
"
シャリヤのペアであった男子生徒はそう言いながら、レフィに一歩づつ近づいてきた。いつ攻撃されてもおかしくはない。レフィの電撃なら命中することは避けられないだろう。しかし、レフィは動かなかった。実際に見なくても、その態度だけで能力の高さが理解できる。
彼はレフィの桃色のツインテールを持ち上げる。そこでやっと、思い出した。こいつはペアをとっかえひっかえ変え続けていることを。
"
"
レフィの信頼に満ちた言葉に俺はすぐには答えられなかった。自分は何故戦ってきたのだろうか。レフィは何のために自分とここまで来たのだろうか。答えは彼女の望まないものになる。だが。
"
"
"
"
レフィの声は絶叫しているかのようだった。反感を買うような言い方であったのは否定できない。だが、言っている方も心が締め付けられるというものだ。
"
"
俺はレフィに手をかざした。それはウェールフープでの戦闘の意思を表す行為だった。
彼女は目を見開いて、驚く。
"
"
"
レフィは消え入るような声でそう言うとどこかへ走り去ってしまった。同時に男子生徒のほうはニヤニヤした顔で別の方向に歩き出し、消え失せる。
残ったのは俺と抱きかかえるシャリヤだけだ。喪失感を味わっていると彼女は"
"
"......
"......
"......"
"
"
"
シャリヤの声色は本気だった。彼女の蒼色の瞳がじっとこちらを見つめていた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます