#74 芋とは言ったがじゃがいもとは一言m(ry


"Xeuersti……よ, plax!お願いします"


 呼びかけと共に列が少しづつ進んでいく。列の動きに合わせて、自分も一歩進む。

 日が暮れてくると食堂には多くの人が来る。個人個人が入るべき食堂の位置は決まっていて、違う食堂に入ろうとすると止められる。食堂に入場する人は出入り口に立つ人間が集計を取っているようで、一回出てもう一回入ろうとすると色々と面倒なことになる。食堂が開いている時間も厳格に守られているようで、少しでも遅れた人間は飯が抜きになる。自分も以前、図書館で辞書とにらめっこをして食堂の開いている時間を忘れて、急いで食堂に行って、色々と面倒なことになった。

 その時はヒンゲンファールさんが居たために食にありつけたが、次は無いぞみたいなことを言われた。きっと、戦時中で食料も貴重だろうからしっかりと管理されているのだろう。


"Salar, cenesti!よう、翠 Harmue xalija mol?シャリヤはどうしたんだ"

"Ar, lexerlstiああ、レシェール, salarua.こんばんは Xalija mol fal fqaシャリヤはそこらへんに, mi tisod居ると思うけど......"


 レシェールは手をひらひらと振って、にやにやと笑いながらこちらを見てきた。

 自分の窮地を救ってきた良いおじさんではあるが、最近シャリヤとの仲に言及することが多くなってきている。確かにチーレムは目下の目標ではあるが、一々弄られるのはなんだか恥ずかしくなってくる。


"Mercてか, harmie co es……では何 e'i fal sysnul.してたんだ"

"Sysnul......?"


 レシェールが真面目な顔に戻って、問いかけてくる質問は大体理解できるようにはなってきた。ただ、分からない単語があるたびにその単語だけで訊き返してしまう癖はあまり離れていなかった。相手が自分に対して「自分たちの言語を使って自由に話すことが出来るんだ。」という認識で居る場合、訊き返しているときに訊き返した意図が通じなかったとしたら話がそこで拗れることになる。


"Olもしくは, Deliu mi lkurf"この日"って言ったほ <fqa'd snenik>うが良かったか?"

"Arああ, mi firlex fgir.それなら分かります Mi akranti kranteerl今日は本を読んで fal sysnul.ましたよ"


 レシェールは自分の答えを聞いて笑いながら何か言っていた。「本当に本を読むのが好きなんだなあ」みたいなことを言っているのだと思う。そうこうするうちにまた列が一つ前に進んでいた。食堂の係が持っているプレートに色々とおいていく。異世界の食事とはいえ、日常的な献立は現世とそこまで変わらない。良く分からない副菜と穀物がゆがあって、魚か獣肉か芋の料理、そして時々デザートらしき甘い物が付いてくる。

 あまり動かない自分にとっては十分な量だと思えるが、肉体労働を数日間続けてしているような大人も居るので、そういう人達は残りに群がっておかわりをしに来る。そうして、時々おかわりを賭けた"cerkeボードゲーム"戦が始まることがあったり、その一勝一敗で非常に盛り上がる。食堂は非常ににぎやかで、レトラの人々が一番打ち解け合っている場所だと思える。


 色々と棚の上に貰ったのちにレシェールと座れそうな席を探す。レシェールがすぐにシャリヤを見つけて、指さして「あそこに座ろう」と指示してくる。


"Salarua, cenesti,こんばんは、翠 Cene edixa co私が……した akranti kranteerl本は読むこと zu icve mi'st?ができた"

"......edixa niv全部は akranti als.読めてないけど"


 シャリヤの真ん前に座って問いかけにさっと返答する。レシェールも座ったところで、手を合わせてしっかりといただきますと言う。日本人なら誰でも行うような風習だが、シャリヤとレシェールには異様に映ったようで不思議そうに自分を見つめていた。


"Harmy co cilどうして食べる時に fal knloanil?……するの?"

"Ja確かに, harmy cenesti?どうしてだ、翠"


 二人ともそれを見て変だと忌み嫌うような表情ではなく、純粋に興味から訊いている様子だった。多分、食前食後のお祈りのような風習はこちらでは一般的ではないのだろう。

 しかし、どうやって説明するかが問題だ。「いただきます」が食前の慣例的な挨拶であることは明確だけど「挨拶」を表す単語は知らない。「自分の糧になる植物や動物の命に対する感謝」という説もあるが、それを単純に"tvasnko信仰"で表すのもどうかと思うし、言い方に困る。

 まあ、言えないなら、話を続けられるくらいの返答で良いだろう。


"Mi firlex niv俺も良く分からない pa alsa's e'iけど、みんなこうやって es xale fqa.するんだ"


 シャリヤもレシェールもそんなこんなで納得してくれた。どうやらこの地域にはこういった風習がないと断定して良いみたいだ。


 食事を終えたら、家に帰る。既に日は沈んでいたし、辞書とにらめっこをしているうちに体力が削れてしまったから、すぐに帰って寝たかったために、シャリヤやレシェールよりも先に食べ終わった食器を片付けて、部屋に戻っていた。

 ベッドに突っ込むと共に眠気が頭を支配し、そのまま入眠してしまう。今度はフェリーサの邪魔も入ることはないだろう。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る