#292 そういう問題じゃないの
(それにしても、学園祭のような騒ぎだな……)
レフィに適当に話を付けて、彼女とは別れて学園内を散策していた。いつまでも彼女と一緒に居ると心が締め付けられる気がして、一人の時間を設けたかった。彼女は快く了承してくれた。お菓子は後で部屋においておくそうだ。
相変わらず、喧騒は学園祭じみていた。レフィが言っていた"
俺はそんなことにはあまり興味がなかった。以前シャリヤが囲まれていた場所にまた彼女が現れないかと思い、訪れるも喧騒も彼女自身も見つけられなかった。
そんなとき、早足でこちらに近づく足音が聞こえてきた。気になって背後を振り返る。
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話しかけてきたのは、制服の少女だった。生徒であることは間違いない。しかし、驚いたのは見覚えのあるその顔だった。ショートボブの黒髪に、オブシディアンブラックのような黒目。古めかしい丸メガネは少女が大人しげであることを示している。
そう、彼女の名はスカースナ・ハルトシェアフィス・エレーナだ。彼女と会ったのはPMCFで別れたのが最後だったはずだ。彼女は驚いたままこちらをじっと見つめていた。
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俺の声を聞くとエレーナは手を顔に当てて、天を仰ぐように顔を上げた。
そんな彼女に自分を指差して問いかける。
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エレーナはそれにこくこく頷きながら、腕を組んだ。
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少しうつむきがちになったエレーナの顔には疲労と困惑と悲哀とがごちゃまぜになったような感情が感じられた。上目遣い気味に彼女はこちらに視線を向けてきた。
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エレーナは見知らぬ人に話しかけるような仕方で話してきた。その理由が知りたかった。
彼女は組んだ下の腕を人差し指で叩きながら、ふぅと息をついた。
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状況は大体同じだったようだ。転移以前までのシャリヤの記憶は俺に関しても、エレーナに関しても同じように無い。エレーナは恐らくシャリヤを追う人間の中に誰かこの奇妙な現象を説明できる者がいるのだと追っていたのだろう。彼女は夕張の正体も知らなければ、そのあとの叙事詩の世界での経験も知らないわけだ。そうなるのも仕方が無い。
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エレーナはため息を付いて、眉を下げた。
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"......
これもまた奇妙な話だった。俺たちがウェールフープ転送装置に乗ってきたというのに、エレーナは来る前の記憶を持ち合わせていないという。
一体これはどういうことなのだろう。そんな疑問が頭の中に満ち始めたころにエレーナは周りを気にし始めた。
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エレーナは怪訝そうな視線をこちらに向けた。言ってから気づいたが、女の子の部屋に自ら積極的に行こうなどと言うのは如何なものか。しかし、こちらにはしっかりとした理由がある。
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はあ、とエレーナは浅いため息を付いて、こちらを恨めしそうに見つめた。
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納得いかなさそうなエレーナは一人で勝手に歩き始める。俺はそんな彼女の機嫌を直す方策を考えながら、ついていくことになった。
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