#280 昔より、今のほうが好きですから……
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レフィは俺の適当な返答を聞くと、先まで酷く混雑していた廊下の方へと歩き始める。
あのウェールフープ・バトルが終わった後、俺達二人は元居た場所に戻ってきていた。思った通り、体の傷はいつの間にか治っていたし、服の綻びた部分さえ元通りになっていた。一体どういう仕組なのだろう。
ただ、全てが元通りというわけではなかった。体には、なんとも形容しがたいだるさのようなものが残っている。
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答える前に出てきた言葉を整理しよう。"
文脈的には"tuan"の意味が"nitek"と同じであると言いたいのだろう。"dalle"はこれまでも何回か聞いたことがあって、PMCFで博打で負けて暴れた男が"
そこまで考えたところでふと浮かんできたシャリヤの温もりの記憶が心を締め付けた。雰囲気の変化に気づいたのか、レフィが心配そうにこちらを見上げた。
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「あっ……えっと……
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がっくりとするレフィ。記憶喪失なのは最初から分かっていたことなのにそんなにうなだれなくても、と思ったが彼女のリアクションが一々大げさなのは今に始まったことではない。
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そこまで言って、言葉が詰まったのは良心の呵責にあった。忘れているものなんて一つもないのに話を合わせるために全部忘れたことにしてしまって良いのだろうか。これじゃ、シャリヤに近づくための手段として彼女を使っているようなものだ。
そんな憂いもレフィが照れくさそうにニコニコしているのを見ていると吹き飛びそうになる。褒められて、喜んでいるらしい。
それまで歩いていた距離を彼女はより詰めてくる。手や肩が触れ合う度にドキッとした。
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レフィは頭を傾けながら、形容に困っていた。しかし、ややあって彼女は小悪魔的な笑みと共に人差し指をこちらに向けた。
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サフィアといえば、スキュリオーティエ教典に書かれている悪魔のような人間、ユフィアの敵の筆頭で人を殺すために生きているような、殺しのためであれば何も厭わないような人物だった。シャリヤもインリニアもそう説明していたはずだ。
この世界に俺が来る前の俺のガワを被った別の人格がそんなことを言われるほどのことをしでかしていたという話だ。そういえば、学園内の視線もなんだか腫れ物を避けるような感じがしてきた。あの二人が突っかかってきたのも、もしかして過去の「オレ」が何かやらかしてたからなのか? またオレなんかやっちゃいましたか? ではすまないぞ、過去の「オレ」!
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レフィは顔を背けた。何か言いづらいことを追求してしまったのだろうか。そう思った瞬間、彼女はぼそっと呟いた。
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レフィの顔は真っ赤になっていた。あまりに恥ずかしかったのか、目をつむったまま両手を振り回してぽかぽか叩いてくる。周りの生徒の注目を集めてしまって、こっちまで恥ずかしくなってくる。
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ぽかぽかぽかぽか……。結局レフィがなんと言ったのかは分からずじまいで、しばらく猛攻を受け続けることになったのであった……。
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