#221 ヴェルバーレオ


 玄関で受け答えするレシェールを部屋の中からぼんやりと見つめていたが、ややもすれば彼はドアを閉めて部屋の中に戻ってきてうんざりした表情で座り込んだ。レシェールの周りを一回転してから、フェリーサが覗き込むようにして不思議そうに見ていた。


"Lexerlestiレシェール, harmie si彼は何を lkurf言ったの?"

"Fi'anxa ioフィアンシャに korxli'a難民が mak cierjustel ly."

"Hmふーん......?"


 フェリーサは意味が良く分からないという様子で頭を傾げていた。確かに彼女はフィアンシャに多くのユエスレオネ難民が追い出されていたことを知らない。彼女にとっては良くわからないことでも翠やシャリヤ、エレーナにとっては辛いほどに理解できる事柄だった。苦虫を噛み潰したような顔をしているのはヒンゲンファールだ。彼女も事情を理解しているのだろう。

 だが、一度追い出されたところにしがみつくように向かい続けているのは謎だった。それには何か理由があるのかもしれない。


"Cenesti?"


 シャリヤに名前を呼ばれて初めて気づいたのは自分がいつの間にか立っていたということだった。難民がフィアンシャに集まっている、と聞けばそこに行く以外に思いつかなかった。デモ行進を企画するなら、人々の窮状をしっかりと理解していなければならない。そうして地道に人を集める以外に方法がないということに気がついたからだった。

 気づいた時にはシャリヤ達を置いて、住居の外に出ていた。レシェールを尋ねた銀髪蒼眼の男を見つけようと右左に目を向けるがその影は既に無くなっていた。目の前に広がるのはPMCFの日常風景と赤茶けた舗装されていない道だった。


"Jeiねえ, mili待ちなさい!"


 少女らしい可憐な声と背後から駆けてくる足音が聞こえた。振り向くとらしくもなく息を上げたエレーナがそこに立っていた。膝に手をついて方で息をしている。いつも本を読んでいる文学少女のイメージが強い彼女らしい運動不足感を感じた。何故付いてきたのか良く分からないが、彼女をここに放っておいてフィアンシャへ向かうのも可哀想だと思って、息が落ち着くのを待っていた。

 少しすると、エレーナは深呼吸をして翠を見据えた。


"Co quneフィアンシャへ tydiestelの行き方 fi'anxa知っているわけ?"

"Nivいや, mi qune知らない niv paけど......"

"...... Wioll mi karse feyl'i fi'anxa'lフィアンシャ."

"E?"

"Klie来て!"


 なんだか不機嫌そうなエレーナは勝手に道を歩き始めた。どうやら一緒にフィアンシャに行ってくれるらしい。というより、翠がフィアンシャに行く道を知らないから先導しようということなのだろう。横に付いて歩くと彼女は翠の方を向いて、何かを言い出そうとして言い出せないような雰囲気になっていた。翠も思い切って何が言いたいのか訊こうと思ったがなかなかきっかけが掴めなかった。


"...... Naceごめんなさい."

"He?"


 言い出せないでいるとエレーナの方がいきなり謝ってきた。その謝罪はこちらを向かずに俯いて赤茶の道を見ながらだったが、絞り出したようなその声色は彼女の素直さの鱗片を表しているように感じた。


"Cene niv私はシャリヤを mi is xurzen……以外に filx elx……に virotil xalijaなれないの. Mi ekce lkurfもし私が少し dlerngn iulo……ことを felx selene言ったなら veles elx panoそれを許して la lex欲しいわ. Naceごめんなさい, cenesti."

"Arあぁ, merえっと......"


 言葉が全部分かるわけではないが、エレーナの謝りたい気持ちは強く伝わってきた。言い切った彼女はちらちらとこちらを見ながら、心配そうな表情で様子を伺っていた。素直じゃないと思ったが、どうやら翠の意見を否定ばかりしたことを悪く思っているらしかった。


"Mi es俺は vynut mels別に大丈夫 la lexだよ."


 そう答えても彼女は何だか心配そうな表情のままだった。そんなことを言っているうちにフィアンシャに到着してしまっていた。以前と同じように入口のあたりに靴が散乱していた。エレーナと顔を見合わせて、中側に顔を振って「入るぞ」と暗に示す。


"Deliu...... mi en co'tj一緒に行かないと駄目なの?"

"Mi firlex俺はリパラオネ教 niv lipalaoneが分かってないから. Deliu co君が'tj mol必要だ."


 エレーナは翠の言うことを聞くと目を瞬いて驚いていた。それまで靴を脱ぐのを本当に嫌そうにしていたが、言った途端にすぐに脱いで翠の脱いだ靴の横に揃えて置いた。

 フィアンシャへと入って行くと以前と同じように閉じられたドアの前で悲嘆に暮れているユエスレオネ難民らしき人々が居た。大体の人は疲れ果てた様子で地べたに座り込んでいた。フィアンシャに入ってきた二人を見て恨めしそうな目を向けるが、何も言わなかった。翠とエレーナは外見だけ見れば確かにPMCFの大半を占めるアイル人やタカン人、スルプ人のような人々と似ている。恨めしそうな目は民族同士の反目が芽生え始めていたことを示していた。


"Harmie is今日は何が fal sysnul起きたんですか?"


 翠は地べたに座り込んでいるうちの一人の女性に近づいて話しかけた。出来るだけはっきりとゆっくりと丁寧にユエスレオネ人らしく言うと女性は翠を見上げた。周りの人々も同胞だったと気づいたような感じでその声に耳を傾けていた。


"Edixa cene niv私達ユエス miss l'esレオネの yuesleone'd難民たちは korxli'assヴェルバーレ velbarleすることが出来ない ja. Malそれで, letixer nivお金を持って arte'elいない人が malfarno……るのよ."

"velゔぇる......?"


 理解できていない言葉を質問しようとして止める。女性には少し奇妙に見えたらしいが翠が異世界出身だということはバレていないらしい。エレーナを引っ張って、座り込む難民たちから少し離れる。腕を掴まれた彼女は瞬間湯沸かし器のように顔を赤くしていたがそんなことを気にしている場合ではなかった。

 彼女にも聞こえるか聞こえないくらいの声で質問する。


"Elernastiエレーナ, <velbarleヴェルバーレ> es harmieって何?"

"Merえぇ...... cirla io本当に co firlexあなたは niv lipalaoneリパラオネ教を知らない tirja……のね......"

"Cene niv否定 mi lkurfは出来 <niv> jaないな."


 エレーナはその答えを聞いて呆れたように首を振った。


"Velbarleo esヴェルバーレすることは icveo knloanerlフィアンシャで食べ物を fal fi'anxa ja貰うことよ."

"Hmふむ......"


 エレーナの真面目な説明を前に考え込む。レトラのフィアンシャでも、シャリヤと逃げ回った街のフィアンシャでも食べ物をもらったことがある。シャリヤもその時"selene miヴェルバーレ velbarleしたい"ということを言っていた気がする。フィアンシャで貧しい人々に食事を与えるのがリパラオネ教の慣習「ヴェルバーレオ」なのだろうが、ここに居る難民たちは貧しいにも関わらず、その恩恵を受けられていないのだろう。


"Malそれで, wioll coどう es harmie'iするの?"


 エレーナは座り込む難民たちを見ながら嘆息する。その表情には諦めの色が強い。

 ヴェルバーレが宗教的な事情である以上、それをどうにかすることはリパラオネ教が理解できていない翠には不可能だ。だからこそ、もっと根本的な目的に戻ってこなければならない。


"Wioll mi言葉で vasperlkurf訴える."

"E vasperlkurf訴える...... fal fqaここで?"


 エレーナは怪訝そうにこちらを見る。翠の意図が汲み取れていないのがはっきりと感じ取れた。


"Merまあ, xel見てろよ."


 そう言って翠は閉ざされたドアを睨みつけた。

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