#181 Kopf, Schulter, Knie und Zeh


 地図で見たのとは異なり、建物は路地裏にあった。その道は舗装が剥がれているところもあり、あまり整備されていない様子であった。見えてきた建物は複合ビルらしく、1から5までの数字が壁に書かれていた。2の横に"ivane'dイヴァネの kyrdentixti病院"と書かれていた。


"Xalijastiシャリヤ, lecu tydiest二階に行 qaこう."

"Jaええ, deliu lus二……へ azuazmalife行くには fua elx……を tydiesto qa'd desal使わなきゃ."


 シャリヤが指す先にクリーム色の階段が見えた。申し訳程度の白色の照明が当たっていて、壁には何やら宣伝広告紙のようなものが大量に貼り付けられていて見栄えは良いわけではない。どうやら、あそこを昇って上に行くらしい。彼女の指示に頷いて、階段へと近づいてゆく。シャリヤを気遣いながらゆっくりと階段を上がっていく間、翠はシャリヤの言った言葉を反復した。

 恐らく、"desalデザル"というのが「~階、フロア」という意味で数詞に属格が付いた形とともに用いられて階数を表すのだろう。そうすると"azuazmalifeアツアツマリフェ"は「二階に行くために使わなければならない」ものということになる。シャリヤが今歩いている階段を指して言ったところから考えてもこの単語は「階段」を指す単語だろう。

 そんな事を考えているうちに階段は小さい踊り場で一旦途切れ、折返して続く階段を更に昇っていた。階段の先には半透明のドアの付いた入り口の上に簡素な看板で"Ivane'dイヴァネの kyrdentixti病院 : Anistfart erjeno adit feniarvefenna, NLZ, selun子供"と書かれていた。見た目は病院というよりクリニックのように見える。

 コロンより後は殆どわからなかった。"aditは"恐らく"ad"に似た接続詞であろう。これまでリパライン語を聞いてきて、"ad"は二つの名詞を繋ぐことしか出来なかったが、"adit"は二つ以上の名詞を繋ぐことが出来るらしい。


"Ers fqaこれよ!"


 シャリヤが看板を見上げながら言う。瞳に安心が満ちているようだった。顔を見合わせると、お互いに笑顔になった。

 安心したついでに病院の看板を指差して、分らない部分の意味を訊こうと思った。


"Ers vynut良かった! Paでも, Harmie esあそこに veleserl書かれて kranteoいること fal fgirは何? Mi firlex俺は分から niv無いんだ <anistfartアニストファート> adit <erjenoエーイェノと>, <feniarvefennaフェニャーヴェフェンナ>, <NLZネーレーツェーが>."


 シャリヤは得心がいったようで無言で何回か頷いて、目線を反らしながら少し考えていた。しばらくするとこちらを見てから、看板を指差した。


"<Anistfart>'dアニストファートの kante意味 es sleerl診るものだよ. Zuつまり, erjeno es fqaエーイェノはここ."


 そう言いながらシャリヤは胸の中心、その横や喉、お腹を指した。


"Feniarvefennaフェニャーヴェフェンナ es xale fqaはこう."


 シャリヤは今度は手の甲を切るような動作をする。


"NLZ esネーレーツェーは fqa aditこことか...... fqa, fqaこことかここ."


 今度は目や鼻、喉をまた指した。

 シャリヤの説明と動作をまとめて考えるとすると、病院に行った時に「~科」とかいうものなのではないだろうか。多分、"anistfartアニストファート"が日本語で言う「科」を表していて、それに続く"Erjenoエーイェノ"、"feniarvefennaフェニャーヴェフェンナ"、"NLZネーレーツェー"がその具体的な診察する学科を表しているのだろう。ともすれば、"anistfart selun"は「小児科」という意味なのだろうか。

 そんな話をしていると、看板の下の扉が独りでに開いた。


"Selunussusti子供たち, Coss klie君たちは fua veleso診察のために sleo来たのかい?"


 前髪を綺麗に揃えた青年が白衣で出てきた。声も穏やかで、それだけを見ていると心が穏やかになるような心地よさがあった。だが、問題はその白衣の下のほうが真っ赤に染まっていることだった。血で染まっているのだろうか、何をどうすれば白衣の下半分が染まるほどの血が出てくるというのだろう。シャリヤもそれを見て目線を反らしてしまった。完全に引いている様子だった。

 青年は赤に染まった白衣が注目されていることに気付いたのか、濡れた裾を両手で上げながら、変わった調子で"Arあー......"と詰まってしまった。次に言う言葉をしばらく見失っていたようだった。


"Hah hah hahははは, coss君たちは nili kandyraverl stokyd?"

"......Ers nivではない kandyravo xaleような ciantio stokyd?のですか"


 雰囲気からして弁解しようとしているらしい青年にシャリヤが即座に言葉を返す。"kandyraverlカンデューアヴェール"や"kandyravoカンデューアヴォ"のような単語は"-erl~するもの"や"-o~すること"などの接辞が"kandyraカンデューア"という動詞に付いたらしいことは分かるが、それ以上は何も分からなかった。

 青年はシャリヤと翠が引いている様子を見ながら、ため息を付いた。


"Malそれで? Coss klie診察に fua veleso来たの sleoかい?"

"J, jaま、まあそうですね, co es ivaneあなたがイヴァネさんですか?"


 青年は翠の質問を訊いて、目を丸くして、そして笑った。


"Mi'd anfi'e es僕の……は niv li kyntestan……あの先生じゃないよ."


 どうやら、目の前に経っている青年はイヴァネ医師ではないらしい。青年はにやけが顔に残ったままで病院のドアを開けてくれた。シャリヤと共に階段を登りきり、そのまま病院の中まで入ると青年は戸を閉じた。

 部屋の中は少し暗かったが、血まみれというわけでもなく清潔感を感じるような感じになっていた。


"Perne fal fgirそこに座って mal mili plax待っていてくれ!"


 青年はソファまで案内して、そのまま奥の方へと行ってしまった。どうやらここは待合室らしい。シャリヤは疲れてしまったのか、座るとすぐにうとうととし始めた。そんな可愛いシャリヤの様子を見ながら、青年が戻ってくるのをおとなしく待つことにした。

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