卌八日目
#251 残念だけど、私を馬鹿にできるの?
料理人の手伝いも程々に手慣れてきた。料理と言っても、作るものはさほど複雑な料理でもない。異世界転生の典型としてこの古代世界は料理文化も発展途上ということなのだろうか。とはいえ、時間は掛かるし煮炊きを監視していなければならないのは変わらない。
一日は調理器具を洗うことから始まる。インリニアとシャリヤが皿を洗っている横で料理人は何か羊皮紙のようなものを見ていた。少し汚れてところどころ変色していたエプロンを脇に丸め、何やら悩ましげな顔をしている。手が空いていた自分にはその羊皮紙に何が書いてあるのか興味こそあれど、言葉がわからない以上話し掛けることは出来なかった。
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"
彼女は手は動かしながらも口を尖らせて嫌がっていた。特段彼女に嫌われるようなことを料理人がしたような覚えは無かった。インリニア自身、ヴェフィス語が話せることが逆に面倒な展開を引き起こさないかと危惧しているのだろう。
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"
"
話に割り込んできたのはシャリヤだ。手先は食器を洗いながら、顔はこちらに向けている。つぶらな蒼い瞳といたずらっぽい笑みが可愛らしい。
それにしても二人共良く器用なことが出来るな、と思う。自分だったら全自動皿割り器への転職を希望していたところだろう。
一方のインリニアはそんな彼女の言葉にむむっと眉をひそめる。
そういえばそうだ。"
そう思えるほどにお互いの間の空気は険悪になっていた。
"
"
"
「いや、インリニアさん? ちょっと待った、
インリニアを制止する言葉の最初は日本語で出てきていた。言っていることは半分くらいしか理解できていないし、"
そんな予感を証明するかのようにシャリヤはインリニアの肩越しにこちらを鋭い目つきで睨みつけてきた。
"
"
"
"
"
答えにまごまごしていると先にインリニアが勢いで答えてしまう。シャリヤとインリニアの間にはまたもや火花が散っているようであった。片や何故かある種の誤解を招くような言い方をする方と誤解を真に受けている方。
頭を抱えるようなこの状況を打開したのは先程まで悩み顔で羊皮紙を見ていた料理人の一声だった。
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"
"
ヴェフィス語が分かるのはただ一人、インリニアだけだったが彼女は料理人の話を聞いて面食らったような顔になっていた。彼女は料理人から羊皮紙を受け取った。シャリヤと一緒に彼女の両脇からそれを確認するとそれは文字列ではなく、地図のようなものが描かれていたものだった。
おそらく遠出してお使いにでも行って来いということなのだろう。何はともあれ、地獄のようなやり取りを中断してくれたのはありがたい。小太りの料理人に俺は心の中で"
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