卌八日目

#251 残念だけど、私を馬鹿にできるの?


 料理人の手伝いも程々に手慣れてきた。料理と言っても、作るものはさほど複雑な料理でもない。異世界転生の典型としてこの古代世界は料理文化も発展途上ということなのだろうか。とはいえ、時間は掛かるし煮炊きを監視していなければならないのは変わらない。

 一日は調理器具を洗うことから始まる。インリニアとシャリヤが皿を洗っている横で料理人は何か羊皮紙のようなものを見ていた。少し汚れてところどころ変色していたエプロンを脇に丸め、何やら悩ましげな顔をしている。手が空いていた自分にはその羊皮紙に何が書いてあるのか興味こそあれど、言葉がわからない以上話し掛けることは出来なかった。


"Ejなあ, inlini'astiインリニア, lecu co nun si'c彼に何を悩んでいるか malfarnoverl'i ja訊いてきてくれよ."

"Harmyなんでさ? Selene niv miあんな小太りと lkurf si'tj zu es喋りたくは estyvertzerphないん xale la lexだけど."


 彼女は手は動かしながらも口を尖らせて嫌がっていた。特段彼女に嫌われるようなことを料理人がしたような覚えは無かった。インリニア自身、ヴェフィス語が話せることが逆に面倒な展開を引き起こさないかと危惧しているのだろう。


"Merまあ, lkurf niv xaleそんなふうに la lex ja言うなよ. Malfarnoverl ler些細なこと dzeparで働くduxienalつてが elx edixa mol無くなっ niv melxたら wioll miss is困るのは malfarnover ja俺たちだろ."

"La lex es julesn paそれはそうだけど......"

"Si es niv彼は…… nulter tiじゃないわよ."


 話に割り込んできたのはシャリヤだ。手先は食器を洗いながら、顔はこちらに向けている。つぶらな蒼い瞳といたずらっぽい笑みが可愛らしい。

 それにしても二人共良く器用なことが出来るな、と思う。自分だったら全自動皿割り器への転職を希望していたところだろう。

 一方のインリニアはそんな彼女の言葉にむむっと眉をひそめる。

 そういえばそうだ。"Nulterヌルテー"と言えば、インリニアの恐れていたものだ。シャリヤはそれを揶揄して言ったんだろうか?

 そう思えるほどにお互いの間の空気は険悪になっていた。


"Co nat lkurf君は……それ la lex jaを言うのか? Ers niv vers xarne……ことだけ iulo lap atでもないぞ."

"Niv違うわ, mi tisod私は…… ny la lexそう思って. Edixa co natあなたがそれ firlex niv la lexe'cを分かってない."

"Co movies mi君、私を……してるの? Plorul……, Edixa co'd kotiel君の……は xel kotieless……を私と mi'tj fal nestile'd過去の夜に nukus ja見たよ. Miss sulaunその後で fasta la lex pelx私達は寝たけど cene co movies mi君は私を……できるの?"

「いや、インリニアさん? ちょっと待った、mili plax待ってくれ mels la lexそれは――"


 インリニアを制止する言葉の最初は日本語で出てきていた。言っていることは半分くらいしか理解できていないし、"moviesモヴィェス"は「馬鹿にする、愚弄する」という意味で、"moviモヴィ"と動詞を作る語尾"-esエス"で出来た合成語で前者は「馬鹿、愚者」という意味だろうということくらいしか理解出来なかった。だが、きっと何か大きな誤解を招くようなことを言っているような気がする……

 そんな予感を証明するかのようにシャリヤはインリニアの肩越しにこちらを鋭い目つきで睨みつけてきた。


"Cenesti......?"

"N, nacごめ―― じゃなくて…… Mi es nivその夜は als fhasfa'i fal何もして nukusustanないよ!"

"Firlexなるほど,? Qa'd lartastan他の日は xelvin es fhasfa'iなにかしてた fal ete'd nukus jaってことよね?"

"Merえっと......"

"Jaああ! pa cirla esでも本当を言えば nestil ad過去と ete'd snenik他の日e'd nukusの夜もだ!"


 答えにまごまごしていると先にインリニアが勢いで答えてしまう。シャリヤとインリニアの間にはまたもや火花が散っているようであった。片や何故かある種の誤解を招くような言い方をする方と誤解を真に受けている方。

 頭を抱えるようなこの状況を打開したのは先程まで悩み顔で羊皮紙を見ていた料理人の一声だった。


"Le chieroumielシエルミオー! Jeaiessジュエス qaileケレ mait lyncachéリュンサーシュ jaileジェレ qouirクィール plaisプレ. Routéルート no adkesĥoitsアドカスワー falaidesフェレーダ lesditékstラーディート."

"Routéルート no adkesĥoitsアドカスワー......? Litelgatéリトーガ failaiséフェレス fammieファミエ?"

"Ichaイシャ voisヴヮ gwon-alteitグォン・アルタイ. Qais est ichaイシャ betĥiénautバーティーノー."


 ヴェフィス語が分かるのはただ一人、インリニアだけだったが彼女は料理人の話を聞いて面食らったような顔になっていた。彼女は料理人から羊皮紙を受け取った。シャリヤと一緒に彼女の両脇からそれを確認するとそれは文字列ではなく、地図のようなものが描かれていたものだった。

 おそらく遠出してお使いにでも行って来いということなのだろう。何はともあれ、地獄のようなやり取りを中断してくれたのはありがたい。小太りの料理人に俺は心の中で"xaceありがとう!!"と連呼していた。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る