第三章

#319 アメニティって良く分からないのも入ってる場合あるよね


 眩い光に思わず腕で目を覆った。どうやら朝が来たらしい。


"Arあら, edixa co pen起きた xelerl jaかしら?"


 シャリヤの柔らかい声が聞こえてくる。近づいてくる足音に挨拶を返そうと、ベッドから身を起こした。


"Jaああ, salaruおはよ...... うぁっ!?」


 目の前に立つシャリヤの顔を見て、ビクッと身体が震える。彼女の顔は不自然に白くてのっぺらぼうのようだった。

 頭を振って、寝間着の袖でまぶたを擦って、もう一度、彼女の顔をよく見た。のっぺらぼうなんかではない。どうやら顔にフェイスパックを貼ってるらしい。手元に開封済みの袋も持っているから間違いない。

 確かにアメニティ類の中にそんなものも入ってたような気もする。興味を持って遊び心で手を伸ばしたようだ。ほんわかしているとシャリヤは心配そうに少し俯いた。


"Dalle tisoderlやっぱり, fqa es xorln jaおかしいわよね......"

"Nivいや, la lex es それをするのはfarfel'd eso e'i普通のことだよ."

"Cen at lus fqa翠もこれをするの? Lirsそもそも, harmie fqa esこれって何なの?"


 どうやら用途も知らないで使ってみたらしい。そんな彼女もまた可愛い。

 それにしても、微妙に全く興味のない俺にしてみれば、美容パックは説明に困るものだった。しかし、花も恥じらう異世界乙女にお肌のケア情報を届けられないというもの、また可哀想だった。頑張って説明してみせよう。


"Arあぁ, mi lus niv la俺は普段はそれを lex fal farfelil使わないんだけど. Merええっと......"


 不思議そうに頭を傾げるシャリヤ、その目の前で俺は顔全体を指差してみせた。


"La lex lusそれはこれを fua fqa's is良くするためo i le vynutに使うんだ."

"Diunarlastiデュナール......?"

"Jaああ, ers diunarlデュナールだ."


 おそらく "diunarlデュナール" というのは「顔面」を示す単語だろう。そういえば "fegフェグ" という「顔」を表す単語があった気もするが、なにかの使い分けがされてるのだろう。

 だが、シャリヤは頭を傾げたままだった。少し引いてる感じもある。なんだろうか、俺は今なにか変なことを言ったか?


"D, diunarl is leか、顔がこれで vynut leusj fqa良くなるの?"

"Arああ, nivいや edixa mi nix間違えたよ. Selene mi lkurf俺がいいたかったのは mels diunarla'd fqa顔のここのことだ."


 そういって、自分の頬を引っ張ってみせる。多分「顔が良くなる」というのはリパライン語でも「ルックスの要素としての顔面が良くなること」、いわゆる「顔面偏差値を上げる」というふうに聞こえたのだろう。確かに必ずしも間違いでは無さそうだが、俺が言ったのはそういう意図ではなかった。

 すると、シャリヤは手を合わせて、頭の上に電球が灯ったような顔になる。


"Selene coもしかしてリュスノル kantet lysnolのことを言いたいの?"

"Lysnolastiリュスノル?"

"Jaええ, diunarl esデュナールは tisodal考えるところ. Fqa es fegここは顔のe'd lysnol jaリュスノルよね."


 そういってシャリヤも自分のほっぺたをむにっと引っ張ってみせた。

 なるほど "lysnolリュスノル" は「肌」で "diunarlデュナール" は「頭」という意味の単語らしい。どうやら顔を指差す行為はリパラオネ人にとっては頭を示すジェスチャーになるらしい。確かにフェイスパックを貼って、頭が良くなるというのは奇妙な話だ。

 昨今は様々な美容品が生まれているから、頭が良くなるものもあるのかもしれないが。


 軌道修正の表現を探しつつ、俺は布団の中から出て東京の町並みを見下ろした。人々が交差点を行き交い、車道の上に排気で淡い轍を残していく。日本だ、と安心すると共に本質的には自分はここにルーツを持たないのだということを思い出して、街から視線を外した。


"......Xalijastiシャリヤ"

"Jaええ, cenesti, mi firlex co私はあなたの lkurferl pa言っていることは分かるのだけど qune niv知らないことが......"


 言葉を遮るようにシャリヤを抱きしめていた。

 彼女にとって頼れるのは俺だけで、俺はこの国でいくらでも他の人に頼れると思っていたが、話はそう単純ではなかったのかもしれない。俺はここでも孤独だ。心の頼りはシャリヤしか居ない。そんな現実がふと怖くなった。


"C, cenestiせ、翠? Harmie co isどうかしたの?"

"...... Naceごめん."

"Deliu niv co謝る必要は nacees jaないのよ, cenesti. Lecu co lkurfどうしたのか mels co'd fafsirl教えてくれる?"

"...... Nivいや, mi es vynut俺は大丈夫だ."


 そういって、シャリヤを離してやった。余計な心配を掛けてしまったと自分の行動を今更後悔する。彼女も不安そうな顔で俺を見ている。だから、今度は努めて明るく言った。


"Lirsさて, lecu sysnul io今日は二人で miss tydiest rirnos新しいところにブランチ fal dytysnalしにいかないか."

"Dytysnalasti新しいところ? Harmueどこなの?"

"Wioll liaxa行って miss tydiest見るまでの melx jol co firlexお楽しみだ."


 シャリヤはそんな俺の言葉にまた首を傾げていたが、何かに納得したように頷く。そして、くるっと回転して、俺に背を向ける。顔だけこちらに振り向き、ニコッと笑った。


"Mi text xalur着るものを選んmerl jaでくるわね."

"Ar, jaああ、うん."


 鼻歌を歌いながら、衣装掛けを開くシャリヤ。その後ろ姿は嬉しそうな雰囲気満点だった。


(俺も支度をするか)


 心のなかでそう呟いてから、衣装掛けに近づこうとしたところ、シャリヤが俺に気づいて両手を広げて静止した。


"Mili待って! "

"Harmieなんだよ?"

"mi text着るものを xalurmerl gelx選ぶんだから shrlo miliあっちに…… xesnieponj fgir'ctて待ってて!"


 シャリヤは窓の方を指差しながら、そういう。あっちを向いてろとのことらしい。それにしたがって、俺は再び東京の町並みを見下ろすことになった。背後から楽しげに服選びをするシャリヤのハミングと独り言が絶え間なく聞こえてくる。

 やれやれ。俺が服を決めるまでにはもう少し時間がかかりそうだ。


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