#59 置き手帋より
フェンテショレーによる侵攻はレシェールたちによって食い止められたらしかった。実際に戦闘がどのように行われたかどうかについては良く分かっていないが、どうやらシャリヤと翠が再会したのちに大体外部の敵は排除できていたようだった。敵が勝てなかったのは多分5000対300でも楽々に勝つことが可能であるとされた崇高伝統文学作品群が残した偉大な戦術「包囲殲滅陣」を利用しなかったからであることが明白であろう。
冗談はおいておいて、翠はシャリヤを身を捨てて守ろうとしたことを英雄的行為であると考えられたからか、レトラで自由人として解放された。シャリヤやレシェールと再会したことによってまた生活が元通りになりつつあるものの未だに疑問に思うことはいくつかあった。
「……。」
一つ目は、住んでいた部屋に置かれていたシャリヤ以外の筆跡の置手紙。シャリヤが何らかの外圧で翠と共に居れなくなった場合、まず怪しまれるのはそういった翠を排斥しようとする風潮だが、次に直接的な原因があったということも考えられる。手紙がそれに関係していれば、誰が翠を追い出そうとしたのかということが分かるはずだ。
二つ目に安全だと思われていたレトラがフェンテショレーによって侵攻された理由。元々レトラはレシェールが知っていた安全な町だった。レトラ市民たちが安心して街の中で産業や農業を育み、戦時中なのにも関わらず図書館まで運営できたことはきっと長い間そういった安定した状態が続いていたからであろう。何の理由でこの地点がフェンテショレーに襲われたのかは謎だ。
三つ目に自分が何故フェンテショレーだと思われたのか。そもそもフェンテショレーとは何なのか。この紛争の根幹的なことは何一つ理解できていない。もし自分がフェンテショレーと怪しまれる行動を無意識にやっていたのであればそれはこれからも繰り返す可能性が高い。
事を荒げたいと思っているわけではない。変な行動を起こせば翠とシャリヤ、それを助けたレシェールの立場も危うくなることは理解できている。だが、自分に危害を与えようとする存在がいるとすればそれが何であれ予知できるようにしておくべきだろう。
一番最初に調べるべきことは三番目の内容であったが、言語が良く分からない状態で歴史書などを読んでも理解できるとはあまり思えなかった。人にフェンテショレーのことを訊いて回るようなことをすればまた怪しまれることは分かっている。ということで、手紙の単語量ならば解読が出来るであろうと踏んで、無事にシャリヤと共に家に帰って来てから手紙を見返してみていた。
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Fastacergon f'ulesn, marler jat
E kelchli'es
En
―nilier
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まず、短くて簡単そうな最後の文章を調べることにしよう。
分からない単語は"
【ft.i】(S-'s I-'i C-'c)Ers eskavon amolo S'st I'it C'ct.
【ft.i】(S-'s I io)
【ft.i】Ers veleso elminal's ternejafnao'i.
【ft.s】(S-'s C-'c/eska)
:
「なんじゃこりゃ……。」
複数の語義が書かれていてさらに混乱してしまった。それに良く分からない括弧と記号までついてきている。これをさらに解読するのは面倒なので、保留にしておく。とりあえず"en"の意味は「~から選んで~が存在すること」、「~が~……行くこと」という風に考えておこう。次は"el"がどうなっているかを見てみよう。
【krx.】(el S)
:
なるほど、この語釈によると"el"は"
(あれ……?)
ここまで調べたことを総合すると、最後の文"En niv el fi'anxa."は「フィアンシャに行くな」ということになるのではないだろうか。何故この置き手紙を書いた人物はシャリヤにフィアンシャに行くなと指示しているんだろうか。
(これは信用できる人間に訊いてみるしかないな。)
そう思った翠は立ち上がり身支度を始めることにした。
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