#35 意外な点数
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シャリヤは悩んでいる。多分どうやってセーケを翠に教えようかということなのだろう。翠も「将棋を教えてくれ」と言われたら、どこから教えればいいかなんて分からない。駒の動かし方とか成り方とかは教えられるだろうが、戦法とかに至ってはさっぱりわからない。そもそも戦術が教えられるほど、例えば通算5000兆勝でもしていれば異世界転生なんてせずに済んでいるはずだ。いい人生よな。
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悩んでいるシャリヤにフェリーサが話しかける。ボードゲーム上の駒の字を指の腹で撫でながら、持ち上げたり、打ったりしながら、話を続けていた。そして、翠は一つ重要なことを思い出した。
"-'i"の話である。
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ふむふむ。
基本の語順はどうやら
つまるところ、"-'s"は「~は」という意味を表す
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珍しいのか何なのかについては、他の言語がどうなっているか知らないために分からないが、面倒なことに「~だ」という意味の"es"はどうやら二つの用法を持っているらしい。
まず、一番最初に出てきた"単語 es 単語"の形だ。この形は「単語1は単語2である」という意味を表す。インド先輩の言葉を借りるとこの"
二番目に、"単語 es 単語-'i"の形。
この形はまだ一例しか出てきていないが、"
(変な言語だ……)
大抵be動詞にあたる動詞は存在動詞的であると言われる。日本語の「~である」も「在る」だし、英語のbeは普通に存在動詞としても使う。インド先輩が言っていたタミル語のஇருもそもそも原義は「ある」らしい。
だが、このリネパーイネ語はどちらかというとそうでもない。代動詞の意味を持ち合わせるということは何か違う意味のイメージを持ち合わせている気がする。
もし、これに加えて"
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"Lirs xij
フェリーサは手をひらひらさせて言う。駒はいつの間にか整理整頓されており、きれいに並べられた駒を盤面であったうす茶色の布で包まれて緑に染色された縄で結ばれる。フェリーサの手さばきは一流の作法のようであったし、シャリヤを即座に打ち負かすほどの強さから見てフェリーサはセーケの棋士だったりするかもしれない。
(シャリヤがただ弱いだけかもしれないけど。)
フェリーサが言ったことは多分、「とにかくお前はリネパーイネをやってまともに話せるようにしろ」ということなのだろう。"
こういうときはインド先輩のTOEICの点数が400点台であったことを思い出して心を落ち着けよう。彼、言語学的な知識だけは豊富にあるうえ、一応英語圏のインドに住んでいた経験があるのになぜか英語が苦手らしいのだ。世の中の七不思議くらいに入りそうなものだ。
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フェリーサにシャリヤが何かの冊子を渡す。フェリーサは驚きつつもそれを受け取っていたがしばらくしてからシャリヤが内容を色々と説明している様子であった。
説明を聴いていると名詞クラスに関わる話も出てきたらしいが知らない単語ばかりでほとんど何も理解できなかった。というか、教科書があるなら渡してくれてもいいじゃないか?先の授業の内容はまだ教えられないって?そんな殺生な。
そんなことを考えていると、突然部屋のドアが開いてまた新しい訪問者が来たことが分かった。もっとも、この訪問者はエスペラントでvizitiの語幹vizit-に「する人」を表す-antoを付けた単語で表されるそれではないのだが。
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フランクな感じで入ってきたのは先日フェリーサによって部屋をボロボロにされたレシェールおじさんであった。
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