#236 信用と信頼


"Meinechachéマイナシャーシュ ne! Ailyriachéエリュリアーシュ!"


 一本結びの少女は何処から取り出したのか分からない槍を片手に馬を駆り、手当り次第に近づいてくる暴漢たちをなぎ倒す。馬の図体や槍にあたった暴漢たちは為す術もなく周りの草むらに投げ飛ばされたり、木の幹にぶつかって地面にのびていた。その周りの取り巻きたちも弓なり、槍を片手に襲ってくる男たちに対処していた。斬り付け、なぎ倒し、踏み付け、双方とも見るに堪えない暴力だった。


 シャリヤもインリニアも目の前で一体何が起こっているのか理解できていない様子だった。武士のような出で立ちの彼らからしてみれば、翠たちが囮となって暴漢たちに急襲させたという見方も成り立つだろう。彼らが暴漢たちを倒し終えたら、次の暴力の矛先が向くのは自分たちなのではないか。それなら今すぐにでも逃げたほうが良いんじゃないんだろうか。

 そんな心配をよそに女子二人は半ば敬意と共に見つめるように目の前で戦う一本結びの少女と付き従う男たちのことを見ていた。俺はインリニアにそっと近づき彼らに聞こえないような小声で耳打ちした。


"Inlini'astiインリニア, lecu fqa'dこの人達 lartass lerに殺される tydiest pesta前に逃げ retoil missよう."

"Retoilesti殺される? Harmie ciss彼女らが reto missなんで私達をわけも filx kanteなく殺すんだ?"

"Mi tisod ny la lex.俺たちの Niss nixことを firlexo miss gelx誤解してるかも deliu tydiest fal noしれないからだ!"


 インリニアは怪訝そうにこちらを見てくる。まるでそんなことも分からないのかと言いたげの様子で。


"Ci m'es niv彼女は私達に zirkrjelen mels miss………ない, vatimel esしかも…… xenlart dea……だ."

"Merえっと...... cene niv ekce君の言ってる firlex ftless zu言葉が少しわから co'd lkurferl letixないんだよな. "

"Fhurはぁ...... moviersti......"


 インリニアは呆れて物が言えないという様子で顔を背けた。何か吐き捨てるように言われた気がするが、気にしない。言葉が分からないというのはこういうところでは便利だ。疑いのない理由は分からなかったが。

 シャリヤは俺とインリニアが話していた間、ずっと戦いの様子を眺めていた。何かを思い出すように浅い息が早くなっていく。そのまま何処かへ行ってしまうような気がして俺は彼女の肩を掴んで自分の方に引き寄せる。柔らかい肌の感触と彼女の暖かさが感じられた。彼女ははっとした様子でこちらを見上げてくる。


"C, cenestiせ、翠?"

"Harmie co xel何を見てるんだ?"

"Merえっと, mi at snietijon私も難しくそれを tvarcar la lex信じてるんだけれど...... Zuつまり, jol ciss reto彼女たちは私達を miss lyme殺さないでしょう."

"Hmふむ, firlexなるほど......"


 インリニアのみならず、シャリヤも彼らのことを信用していた。ファイクレオネの文化圏に特有の何かなのだろうか、考えていても答えは出ないだろうがシャリヤが言っていた「信じがたさ」の言及にはどこか引っ掛かるところがあった。

 そんなことを考えている内に戦闘はいつの間にか終わっていた。周りには打ちのめされた暴漢たちが倒れていた。一本結びの少女とその取り巻きのような男たちは馬から降りて馬を近くの木に留めると俺達の方を見ながら何やら話し始めた。


"Mait, Andraiアンドレ fammioiファミワ nèhaisニェ qaileケレ jaisジェ anアン?"

"Nouesヌウ ouneitウナイ, fainséフェンス tufaitトゥフェ laiechèレエシュ leimeiusライマイウ faimmautフェモー."

"Filaichès分かりました?."


 男たちと少女の協議の内容は最後の言葉だけを聞き取ることが出来た。その「フィレシュ」の音は"firlex理解する"に似ている。だが、彼らが話している言葉はリパライン語とは全く別の言語のように聞こえていた。他人の空似ならぬ、他言語の空似なのだろう。だが、翠の理解もあながち間違っていないようで彼らは自分たちに敵対する様子を見せなかった。

 男たちのうちの一人は言葉が通じないなりに伝えようとしてくれているのか、こちらと馬とを指差して説明しようとしていた。馬を駆る取り巻きの後ろに乗らせてくれるらしい。


 しかし、その時彼女の背後の茂みの暗がりに一閃の光が見えた。何者かが、矢筒から矢を取り出して彼女に向けて番えようとしていたのが見える。暴漢のうちの一人が残っていたのだろう。それに誰も気づく様子はない。見ている眼の前で悪辣な笑みを浮かべながら、弓を番えようとする暴漢を俺は見逃すことが出来なかった。

 瞬時にシャリヤの足元にあった石を拾い上げ、振りかぶる。コントロールに自信があるわけでもない。ただ、善意のみが先走っていた。せっかく自分たちを森の外へ導いてくれるかもしれない人たちに出会ったのに一人でも失うだなんてありえない。

 一本結びの少女とその取り巻きたちの表情は豹変した。彼らにしてみれば確かにいきなり自分たちに石を投げつけようとしているようにしか見えない。

 だが――


"Aghぐぁっ!"


 石は暴漢の眉間にクリーンヒットした。素っ頓狂な声を上げて、後ろに倒れる男を取り巻きたちは見逃さなかった。すぐに槍でとどめを刺しに行く。

 その瞬間を見たくなかった俺は顔を背けた。人間らしからぬ音が茂みの方から聞こえた後に森は静寂に包まれた。

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