#192 人形でない者


 廊下は先程と同じような静寂に包まれていた。突き当りに半開きの扉がある。すきま風のような音が緊張で敏感になっている神経を逆撫でしていた。意を決して扉を開けると、そこには手足を椅子に固定された眠ったままのシャリヤとそれに向かい合うビェールノイが立っていた。彼に立ち向かう手段は手元に握るナイフしかない。彼がこちらに顔を向けるのに応えるように刃先をビェールノイの方へ向ける。

 彼の表情はいささか物憂げに見えた。


"Plorul, lanerme feat fqaこれ teleso esである la demoale fal ecurun? Edixa Selene私はしたくは niv mi無かった p'ode alsa'd全ての larfe o sedoterl jojysn, elx jol esである itanisamalne mels co君に関して."

"Cene niv miあんたが言っている firlex lkurferlことは分らない co'st paだが elx shrloまず fal panqaシャリヤを, xalija icveこちらに mi'l渡せ."


 ビェールノイは表情をしかめた。


"Cene nivそれは出 es la lex'i来ないな."


 その瞬間、背後から複数の金属音が聞こえた。後ろを振り向くと二人の使用人が小銃を構えていた。金属音は恐らくコッキング音だったのだろう。可愛らしいながらも無表情な使用人たちは銃口を翠に向けたまま、命令を待っているかのように微動だにしなかった。撃たせれば確実に全弾が翠の体を貫くだろう。そうなればシャリヤを助けることなど叶わない。

 ビェールノイは両腕を開いて、まるで外交使節を受け入れる高官のような立ち方で翠に向き直った。彼自身は手には何も持っていないようだった。大らかそうな表情でこちらを見据える。


"Fi fqa lerもしここから co君が eski tydiest行くのなら, elx wioll co niejod君は生かそう. Cun, selene…… niv mi……したくは tines xinevないからね."


 ビェールノイが言いたいことは、シャリヤを置いていけば見逃すということだろう。だが、最初から翠を生かしておくつもりがなかった彼がこの場所の存在をばらすような危険性をみすみす逃すわけがない。騙されて出てきたところを他の使用人が襲って終わりだ。

 そうならば、この状況から抜け出すすべは一つしか無い。


"Cene nivそれは出 es la lex'i来ないな!!"


 一か八かでビェールノイに組み付く。使用人たちは銃口をこちらに向けたまま撃とうとしない。ビェールノイを誤射する危険性を考えてのことであろう。その頭を掴んで、首元にナイフを突きつけて脅迫するような姿勢になる。ビェールノイはそんな翠の行動に全く動じた様子もなく、ただ静かに翠になされるがままになっていた。翠の体への射線は殆どビェールノイが遮蔽していた。使用人たちに撃たれる危険性は無いが、ここからどうするかが問題になる。


"Wioll coお前は veles retoo殺される. Ysev mosnatterserl."


 ビェールノイが呆れたようにぼやく。だが、そんなぼやきに構っている暇はなかった。


(――良く考えろ、どうにか出来るはずだ。)


 使用人は部屋の中では小銃を使おうとしているが、翠を追うときには小銃を使おうとしなかった。ビェールノイが翠を生きたままここから出そうとしていないことは諸々を考えて正しいだろう。ならば、何らかの理由で部屋の外、廊下では銃が使えなかったとするのが正しい帰結だろう。少なくとも廊下に出れば銃口を向けられることも無くなるということだ。


"Tydiest動け!"


 ビェールノイを乱暴に引っ張りながら、それでも使用人たちの射線を避けるようにして部屋の出口を目指す。半開きのドアの前にまで来るとそれを蹴飛ばして廊下にまで出てきた。ビェールノイは秘密を知ってしまわれたかのように悩ましそうに嘆息していた。人質にされているなどという緊張感が全く感じられなかった。

 廊下までビェールノイを連れて行くと使用人たちは銃を構えたままこちらに付いてきていた。試しに開いている左手を完全に射線が通っているところに出してみたが、撃ってくる気配は全く無かった。


"Harmue coどこに私を連れて derok mi行くんだい?"

"Ers e'i molala'l銃も使用人 filx paz adたちも居ない celdinerss場所へだよ."


 ビェールノイは鼻をこするような音を出して笑った。ついつい怪訝そうに顔を歪めてしまうが、訊くこともなんだか億劫だった。その瞬間、耳をつんざく衝撃が血を引かせた。


"Cene nivお前はここ co derok……私を連れ mi eski出すことは fqaできない!!"


 あまりの痛みに思わず倒れ込む。血が出ているのは脇腹で、さすった右手が血でまみれている。狂気に包まれたかのように笑うビェールノイの片手には小型の拳銃があった。


"Cene niv ciss彼女ら使用人が l'es celdiner銃れない pazes fal…… sivynにて. Co faut la lexそれが jelo見つけること p'es julesn正しい, co君は xelnkan eso niv mi私ではないこと feat astes."

「くっ……!」


 身を擦るようにして両手でビェールノイから離れようとするが、ビェールノイは銃を持ったまま一歩ずつ確実にこちらへと近づいていた。これ以上避けられない殺意に身を逸らすことは出来なかった。銃口がゆっくりと翠の額に向けられる。シャリヤを救うことが出来ず、こんなところで終わってしまうのかと思うと、近づいてくるビェールノイのイカれた顔を見ながらも何も考えられなくなってしまった。痛みと絶望に駆られたまま不安が心の中で増幅していく。

 だが――だが、こういう事は前にもなかっただろうか。


"Salaruaさようなら."


 引き金が引かれる。重い銃声が聞こえる。だが、倒れるのはやはり予想した通りビェールノイの方だった。ビェールノイが倒れ込んでいるのと正反対に立つ二人の影、それは忘れることもない一人と見たこともない一人の影であった。

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