#249 比較表現と最上表現
シャリヤは机の上に2つの壺を置いた。土器を重そうに運ぶ姿は可愛らしい。手伝おうと思うもビシッと手で止められてしまった。
壺は茶色っぽく、表面が荒い。まるで博物館に展示されている土器のようだ。アンフォラのようにくびれた壺2つはそれぞれ高さが違うものだった。
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シャリヤはそれぞれの壺を指して言う。"
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「あ……なるほど!」
シャリヤは俺のいきなりの日本語に驚きながらも分かった様子を見て、嬉しそうに口角を緩めた。
背の高い方の壺を指してから、背の低い壺を指していったということは恐らく比較構文を言っているのだろう。比較対象が"le"の前に置かれ、比較基準となる形容詞は"le"の後ろに来る。"
ということは、インリニアが言っていた"Lkurfer la lex es mi le ydicelen ja?"は「そう言う人は私より怖がりだよね」という意味として取ることができる。ここまでくれば、あとは検証するしかない。
スツールから立ち上がってシャリヤの頭に手を載せた。
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シャリヤの顔は恥ずかしいのか赤くなっていたが、嬉しそうでもあった。可愛いやつだなあと思いながらそのまま頭を撫でていると背後から視線を感じた。
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答えたのはシャリヤだ。俺の脇腹を掴みながら、背後から見ていたインリニアの方へと顔を出す。幸せな時間を邪魔されて不機嫌な様子だ。俺はシャリヤにしがみつかれ、身動きが取れなかった。彼女の暖かさを感じられるのは幸せだが、同時時に後ろから向けられる視線も怖い。
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インリニアの唸り声が聞こえる。会話の内容は良く分からないが、二人が話す機会が増えたことは微笑ましいことだった。
どうかこれからも仲間割れがありませんように――と願ったときには二人の間には火花が散るような空気が流れていた。なんだろう、さっきの会話は実は煽り合いだったのだろうか……?
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インリニアとシャリヤの間の緊張は更に高まっていた。二人には確かに因縁がある。だがそれでも、こんなところで喧嘩を始められると困る。せっかく、ユフィアという権威者の下で生活を安定させられそうなのだ。二人には抑えてもらわなければならない。
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シャリヤも不承不承という感じではあったが、理解を示してくれたようだ。だが、問題はまだ残っている。
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シャリヤの同意を得たインリニアは考え始めた。"le"を説明したから、"
インリニアはシャリヤが置いた瓶のよこに更にもう一つの瓶を置いた。一番高かった瓶よりも背の高い瓶が机の上に乗る。そして、インリニアはその最も背の高い瓶を指した。
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こっちは何かと思えば最上構文だった。"le"が比較構文を作る前置詞なら、"les"は最上構文を作る前置詞だろう。最上の対象となるグループは"les"の前につくようだ。一瞬での理解を勝ち取ったインリニアは満足げな顔になっていた。鼻っ面を上げて上機嫌だ。これだけで上機嫌になる人間もなかなかそう居ない。シャリヤはそれを見て面白く無かったのかこちらに詰め寄ってきた。
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二人が迫ってきて答えを要求する。ただ、どちらもほぼ同じような説明だった。優劣をつけるほどでもない。だから、答えられるのはそれだけだった。
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二人がずっこけてしまったのは改めて言うまでもない。
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