#247 噂の真相


"Le alinaudesアリノーダ se failaiséフェレス fammiaiファミエ?"


 ユフィアが建物の中を見上げながら呟く。壮年の男性――詩学院の教師なのだろう――はそれを見ながら、唸り声を上げて何かを悩んでいる様子だった。

 石造りの建造物の中には木製の質素な机が並んでいる。壁には何やら文字が刻まれているもののリパーシェとは全く違う文字体系で読むことは出来ない。この建物の外側に書かれていた文字とどうやら同じようでヴェフィス語か市民が話していた古典リパライン語が書かれているのだろう。


"Voiヴワ pai ne pas...... varヴァル kynèsキュン doukesドゥカ anアン mait kailesケレ anpaisèvaieiuアンペスヴェアーユ."

"Filaichèsなるほど?."


 ユフィアは教師の言っていることに頷くと彼女もまた悩ましい表情になった。相変わらずヴェフィス語が一ミリも分からないせいで何の話をしているのかがさっぱりだった。助けを借りようとインリニアの方に顔を向けると、彼女は呆れた様子で首を振って答えた。


"Edixa si彼が lkurf ny la lex言うに. Nulter velesヌルテーは見た xelo niv paことはないけど lersseer ydicel生徒たちが怖がって la lex magそれで klie niv fqa'l授業に来ないん fua lersseだとさ."

"La lex esそれって niv surul fua……のための nurna tirne…………じゃないの?"


 そっと近づいてきて会話に参加したのはシャリヤだ。彼女の美しい銀髪はは薄暗い部屋の中で僅かな光を受けて輝いていた。蒼い瞳は興味深そうに壁に掘られた文字を見ている。会話が良く分からないだけにそういった美しさに見とれてしまった。


"La lex molそれがあった mal vusel pa……だけどな."

"C'ydicel……怖い?"

"Ers mygi……だ!"


 リパライン語も完全には理解できないものの、インリニアとシャリヤが楽しそうに話しているのを見ると心が温まる。過去のことは一旦さておき今は協力するしかないのだから、お互いをどう思っているかは大切だ。

 こんな話をしている間にユフィアと教師は未だに何か答えを出せないような雰囲気で唸っていた。

 話を整理しようにもここに来た理由は"nulter"が居る学校であるという情報しかない。ユフィアに連れられてのこのこ着いてきたが、もしかして悪魔憑きの学校だから除霊してくれということだったりするのだろうか?

 シャリヤの肩を掴んで寄せながら、ユフィアの様子を確認するもまだまだ解決策は出そうになかった。


"Xalijastiシャリヤ, fqa'dこの duxieno仕事は es nivフィアンシャの vynut fuaシャーツニアーのほうが fi'anxa'd合ってるんじゃ xarzni'arないかな?"

"Mi at私…… tisod xaleそう思う la lex paけれど niss彼らは tvasnkリパラオネ教を lipalaone信じてるの jaかしら?"

"Arあぁ......"


 確かにシャリヤたちとは違って、ヴェフィス語を話すヴェフィス人達にはフィメノール教という別の信仰がある。そういえば、リパラオネ教の悪魔的存在は"dolumドルム"と呼ばれていたが、"nulterヌルテー"のことを説明する際には全く参照されなかったところを見るとやはりリパラオネ教とは別のセンスでこういったスピリチュアルな存在を扱っている気がしてくる。

 自分は全く興味が無いし、信じてもいないのだがこの時代の人々なら十分そういったことは懸案事項に値するだろう。そう考えてみると確かに学校の中は薄暗くて不気味に感じられる。学校が舞台の怪談は日本でもメジャーだ。この手の噂は広がるのも早いだろうし、納得もできる。教室を見渡すと窓が文書やら小道具で埋まっていた。


「掃除が必要かもなあ」

"Coudzi-stiソウジ? Corsh……?"

"Nivいや, nivいや……掃除ってなんて言えば良いんだ……?」


 尋ねてきたシャリヤは首を傾げてしまった。「掃除する」すら言えない状況でここまで生きてこれたのは奇跡的に思えてくる。それ以上に言葉を伝えきれない現状がまどろっこし過ぎる。肩を近づけているシャリヤがこちらに振り向きながら、首を傾げているのがとても可愛い。彼女の頭を撫でながら、出来るだけ意図していることを伝えようと頭の中をこねくりまわす。


"Miss俺たちが letixerlstこの書物を fgir'dあっちの kranteerlほうに持って etala'l行ったら mal isこの状況が vynut mels na良くなるんじゃないか?"

"Hmmうーん...... Zuつまり, la lex esそれって ycaxo切ることってこと?"

"Ycaxosti切ること?"


 シャリヤは反射的な問いかけに頷く。ただ、文脈的に良く分からない答えに今度はこちらが首を傾げてしまった。

 "ycaxo切ること"は動詞"ycax切る"に動名詞語尾"-o"が付いた形だろう。確かリパライン語では「爪を切る」を"ycax lefhil爪を切る"というはずなのでこれは確実な情報だ。こういう場合、考えられるのは"ycaxユサシュ"の意味範疇を間違えて理解していることだ。


"Xalijastiシャリヤ, shrlo ycaxユサシュをして plax mal kantiその意味を la lexe'd俺のために kante fua教えてくれ mi plaxるか."

"Merえっと, firlex分かったわ."


 シャリヤはとことこと窓の近くまで行って、書物と筆記具などが積み重なっているのを少しずつ机に移し始めた。少しずつ、窓から光が入ってきて薄暗かった教室の中が次第に明るくなっていった。

 シャリヤの行動を見ると、"ycax"という動詞は「整理整頓する」という意味も持ち合わせているのだろう。というより、元々が整理を表していて"ycax lefhil"も「(伸びた)爪を整理する」という言い方で「爪を切る」を表していただけなのかもしれない。これでまた一つ、リパライン語に詳しくなった。


"Aあぁ filaichèsなるほど?, anアン le kaschaileカシェレ famieiファミアイ! Qoinéクワン paivaiséペーヴェス dönaiséデーネス wellesワラ!"


 シャリヤが物を整理して窓から光が入ってくると、ユフィアたちもそれに気づいたようで称賛するように声を上げる。あまり大したことはやっていないような気はするし、シャリヤだけにやらせている感じもして申し訳なくなってきた。

 書物整理を手伝いに彼女のもとに寄るとシャリヤはヴェフィス語が分からなくても何か成功した予感を感じ取ったのか、笑顔でこちらに振り向いてくれた。

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