第三章

#367 閉館日


 翌日、語学研修所の前には俺含め、ニェーチとアルテリスの三人が立ち尽くしていた。

 というのも、目の前にある張り紙と閉じられたドアを見てのことだった。


  "Liaxu fqa lusven……に閉館して hankirlejいます. Fasripiet開館 : finibaxli.明日"


 珍しく同時に到着していた三人は、その張り紙を見てぽかーんと首をもたげていた。

 逆修飾になっている "hankirleハンキーレ" は良くわからないが、それ以外は分かるからほとんど意味は分かる。しかし、分からないのは今日まで休む報告が無かったことだ。

 いきなりの出来事に三人は戸惑うことしか出来なかった。


"Edixu vean lkurfヴェアン先生って fhasfa mels fqa何か言ってたっけ?"

"Nivいや, mi senost niv ja聞いてないが."


 訝しむニェーチと、それに答えるアルテリス。その横で俺は色々と考え事をしていた。昨日の豊雨のストーキングに関係しているかもしれないということが一つ。先日の機密文書に関係して、何かが裏で起こっているというのが二つ。単純にヴェアンの体調不良というのが三つ。

 いずれにしても断定するには情報量が足りなかった。二人も何も訊いてない様子で、朝送ってくれた豊雨も何も言っていなかったのだ。


"Selene mi nun君に一つ panqa co'c聞きたい, nierchestiことがあるんだが."


 ニェーチはケモミミを揺らして、首を傾げた。


"Harmie何を?"

"Edixu MLFF'dMLFFの人間 larta klie falが君の職場 co'd duxienalに来なかったかい?"

"Nivいや, niss klie niv ja彼等は来ないね. Harmie co nunなんでそんなこと la lex聞くの?"


 ニェーチの疑問に答えるべく、前々から起こっていることを一つ一つ説明する。彼女の横に居たアルテリスも聞きながら、怪訝そうな顔をしていた。


"Zuつまり, nihon melses日本は……に関わって alcirtaiumu'cいるってことか?"

"Jol e kantet nivそんなことはない la lex jaでしょ."

"Paでも, miss io la lex私達のところには klie niv ja来てないぞ."

"Alcirtaiumアルシータユムって kantet harmieなんなんだ?"

"La lex kantetそれは彼等の ceceserss fua政治的な考えの nisse'd lertasenのために攻撃を tisoderlする人たちだよ."

"Hmふむ......"



 どうにも "alcirtaiumアルシータユム" というのは「テロリスト」のような意味らしい。

 ともかくどうやら彼等のもとにはイプラジットリーヤたちは来なかったようだ。辞書も然りだが、一般的にはMLFFはやはりタカ派の集団として見られているらしい。


 情報を整理しよう。

 どうやら、ニェーチやアルテリスたちの在外公館にMLFF(というかイプラジットリーヤたち)はデモや嘆願をしていないということだろう。同時には出来ないだろうから、時期を開けてやる可能性はあるが、もしかしたらイプラジットリーヤは日本に狙いを定めているのかも知れない。

 もしそうだったら、あのテクストの内容に関わりがあるのかもしれない。

 そんなことを思いつつ、俺は張り紙を見上げていた。


* * *


 またもや、イレギュラーな帰宅になってしまった。

 賑やかな帰り道を歩くのは良いのだが、疑問は増えるばかりだ。一応、豊雨に連絡を入れたものの、彼女はやはり何も知らなかった様子で「また確認する」と言って切ってしまった。


 悶々としながら、帰る道中に見覚えのある人影があった。


 猫耳のようなケモミミが生えた女性、髪は煤けたような銀色で、理性的な顔立ち。そして、トレンチコートと赤色のネクタイ。

 そう、イプラジットリーヤ・アレス・レヴィアだ。両手には何かが大量に入ったビニール袋がある。彼女はすれ違いざまに俺を見つけると、微笑みながら近づいてきた。


"Salaruaこんにちは, liaxu co dosnudお帰りの途中 el sietivalですか?"

"Jaはい, cun liaxa sysnulu'd今日の「仕事」は «duxienerl» mol nivなくなったので."


 イプラジットリーヤは納得したような様子で頷いた。


"Iprasitlirjastiイプラジットリーヤさんは, harmie co es今何をしてる e'i fal noんですか?"

"Arああ, edixu mi dosyt loler……であるラッテンメ人たち mors fua harderのために色々と l'es rattemmess買っていたんですよ. Xelほら."


 彼女が持ち上げた片方のビニール袋の中には色々と食料品が入っている。もう片方にはどうやら衛生用品が入っているらしい。

 "harderハーデー" という良く分からない単語が聞こえたが、おそらくこれは「貧しい人」という意味の単語なのだろう。


"Lirsそうだ, cenesti翠さん, lecu co atあなたも一緒に klie mi'tj来ませんか?"

"Co'tjあなたと一緒に...... harmue tydiestどこに行くんですか?"

"Ers miss celdinal ja我々が助ける場所ですよ."


 そういって、イプラジットリーヤは二つの袋を持ち直して、俺を通り過ぎていった。その背中を振り返ると、付いてこいという言葉が強く感じられた。彼女もまた一人のリーダー。リーダーたるに必要なカリスマは、語らずとも人に言葉を伝えることができるという力なのだろうか。

 逡巡したが、俺にも彼女に確認したいことがある。俺はそのあとを付いていくことにしたのだった。

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