第三章
#367 閉館日
翌日、語学研修所の前には俺含め、ニェーチとアルテリスの三人が立ち尽くしていた。
というのも、目の前にある張り紙と閉じられたドアを見てのことだった。
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珍しく同時に到着していた三人は、その張り紙を見てぽかーんと首をもたげていた。
逆修飾になっている "
いきなりの出来事に三人は戸惑うことしか出来なかった。
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"
訝しむニェーチと、それに答えるアルテリス。その横で俺は色々と考え事をしていた。昨日の豊雨のストーキングに関係しているかもしれないということが一つ。先日の機密文書に関係して、何かが裏で起こっているというのが二つ。単純にヴェアンの体調不良というのが三つ。
いずれにしても断定するには情報量が足りなかった。二人も何も訊いてない様子で、朝送ってくれた豊雨も何も言っていなかったのだ。
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ニェーチはケモミミを揺らして、首を傾げた。
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ニェーチの疑問に答えるべく、前々から起こっていることを一つ一つ説明する。彼女の横に居たアルテリスも聞きながら、怪訝そうな顔をしていた。
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どうにも "
ともかくどうやら彼等のもとにはイプラジットリーヤたちは来なかったようだ。辞書も然りだが、一般的にはMLFFはやはりタカ派の集団として見られているらしい。
情報を整理しよう。
どうやら、ニェーチやアルテリスたちの在外公館にMLFF(というかイプラジットリーヤたち)はデモや嘆願をしていないということだろう。同時には出来ないだろうから、時期を開けてやる可能性はあるが、もしかしたらイプラジットリーヤは日本に狙いを定めているのかも知れない。
もしそうだったら、あのテクストの内容に関わりがあるのかもしれない。
そんなことを思いつつ、俺は張り紙を見上げていた。
* * *
またもや、イレギュラーな帰宅になってしまった。
賑やかな帰り道を歩くのは良いのだが、疑問は増えるばかりだ。一応、豊雨に連絡を入れたものの、彼女はやはり何も知らなかった様子で「また確認する」と言って切ってしまった。
悶々としながら、帰る道中に見覚えのある人影があった。
猫耳のようなケモミミが生えた女性、髪は煤けたような銀色で、理性的な顔立ち。そして、トレンチコートと赤色のネクタイ。
そう、イプラジットリーヤ・アレス・レヴィアだ。両手には何かが大量に入ったビニール袋がある。彼女はすれ違いざまに俺を見つけると、微笑みながら近づいてきた。
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イプラジットリーヤは納得したような様子で頷いた。
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彼女が持ち上げた片方のビニール袋の中には色々と食料品が入っている。もう片方にはどうやら衛生用品が入っているらしい。
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"
"
"
そういって、イプラジットリーヤは二つの袋を持ち直して、俺を通り過ぎていった。その背中を振り返ると、付いてこいという言葉が強く感じられた。彼女もまた一人のリーダー。リーダーたるに必要なカリスマは、語らずとも人に言葉を伝えることができるという力なのだろうか。
逡巡したが、俺にも彼女に確認したいことがある。俺はそのあとを付いていくことにしたのだった。
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