#164 復讐の連鎖


 翠は緊張と共に屋上へと続くドアに手を掛けた。ガルタも共に息を呑むような表情をしていた。この先にインリニアが居る。それがカリアホの失踪とどう関係しているかということは分らない。だが、自分たちを襲撃してきたということは敵対する関係となっていることは明白であろう。


"Edioll liaxu待って mi mili coいたよ......"


 ドアを開けると、屋上を見回すまでもなく奥の方にインリニアが居た。彼女は寂しそうな、それでも確固とした信念を自分の中に抱いているかのような表情でこちらを振り向いて呟いた。

 彼女の後ろにはカリアホの姿があった。縛られているのかひざまずいたまま、こちらを物欲しそうに見つめている。インリニアはそんな状況を見て固まっている翠とガルタを前に端末を取り出して何かを打ち込んだ。瞬間、左から爆風とガラスの割れる音が聞こえた。少し遠くの爆発、衝撃が床を揺らす。インリニアの短い黒髪は爆風に煽られて揺れた。


"Harmie何だ!?"


 ガルタは衝撃が収まったところで爆破したところを確認しようとして鉄柵から身を乗り出すように眺めて、そして顔を青くしていた。翠も確認しようと鉄柵に近づき、彼の見る方に目を向けた。

 爆破でぼろぼろになり、炎上する校舎の一部。なにか見覚えがあると思えば、そちらはユミリアが行った教員室のある棟である。

 インリニアは用は済んだとばかりに端末を投げ捨てた。端末が屋上の打ちっぱなしのコンクリートの床に落ちて、安物っぽい軽い音がなる。めらめらと燃える炎と慌てふためく教職員や生徒たちの雑踏のざわめきがあるのに、何故か自分たちの空間だけは静寂に包まれている気がした。

 懐から銃を取り出して、背後に居る縛られたカリアホの頬に押し付ける。近付こうとする自分たちへの牽制だろう。


"Jumili'aユミリアは veles retoo死んだよ. Cene miss私達は xelvin lkurf続けて話せる."

"Inlini'aインリニア......! Harmie edixa coなんでこんなことを es la lex'iしたんだ!? Krantjlvil io図書室で co'it xelil ler君を見たときから co laozia全部仕組んで als eso co'st e'itいたというのか?"


 疑問でならなかった。最初から、インリニアは本当にこういうことをする意図があったのか確認したかった。ガルタが横から突っついてくる。そんなことをしている場合ではないと言うことだろうが、敵対するなら皆殺しなんて酷すぎる。まるで異世界転生作品でよく言われるサイコパス主人公だ。なまじ学校生活の中で情を持った人物であったから、なおさらであった。


"Jaそうだ. Edixa mi esお前、八ヶ崎 la lex'i fua翠を殺し retoo co l'esこの改宗者 jazgasaki.cenどもの ad retooユエスレオネ xolersse'dを殺す yuesleoneためだ。. Jol mi'd私の larkra'it…… nixtanestol p'es feut, la lexそれ at es firlexainerl."


 インリニアは胸に手を当てながら、皮肉な笑みを浮かべる。言葉がわからずとも皮肉そうだと思ったのは、それが状況と全くかみ合わなかったからであった。彼女の目的は翠の殺害と「改宗者のユエスレオネ」、つまり"fentexoler異教徒"が対立する宗教権威が主力となってしまった今のユエスレオネの「殺害」だった。ガルタはそれを聞いてから、鋭く彼女を睨みつけていた。翠は更に質問を続けたく思い、一歩自分の足を前に出したがインリニアが更に強くカリアホに拳銃を押し付けたためにガルタに肩を掴んで止められた。


"Harmie selene何故俺を co reto mi殺したがる?"

"Harmie何故, harmieなぜ, harmieナゼ!"


 インリニアはからかうように一語ごとに口調を変えた。翠の問に少しばかり苛つきを抱いているらしかった。彼女の目尻は怒りで釣り上がっていた。


"Co qune niv過去にお前が mal firlex niv何をした ny la lex falのか覚えて nestil? Edixa harmieいないと言う co es e'iのか? Mi'd relod xale molo私の家族のような存在 l'esだった fixa.leijuaf'iフィシャ・レイユアフを retover es co殺したのはお前だ! Mi lus als私はこの時のために fua no全てを利用してきた!"


 だいたい流れがつかめてきた。インファーニア・ド・スキュリオーティエ・インリニアは、レトラの礼拝堂フィアンシャに潜伏していた敵対的な異教徒フィシャ・レイユアフとの知人であった。親しかったはずの友が殺されて、インリニアは復讐を決意した。その対象が、革命の立役者であり、レトラの潜伏者を暴いたことでユミリアなどに知られていた翠に向かうのは当然のことだ。しかも、レイユアフが死ななければならなかった理由である宗教対立としては、ユミリアや今の政府も復讐の対象となる。

 翠は身震いした。目の前に立っているのは復讐に燃え、全てをこの時に注ぎ込んだ人間である。復讐の舞台を整えるために学校に潜入し、翠に近づき、目立つのを避け、カリアホを誘拐し、ここまで翠たちを誘導してユミリアが別れて行動をするところまで予測して爆薬を仕掛け爆殺した。カリアホの存在や襲撃してきた人間を雇うまでにシェルケンやハフリスンターリブ、異教徒派閥との繋がりを利用したのだろう。小手先の行動では、対処できそうになさそうだ。


"Fi co retoお前が死ねば, ci niejod彼女は生きるだろう."


 インリニアは翠を指差した。その指示は翠の自殺を示していた。彼女の顔は復讐の愉快さを半分、怒りと悲しみが半分を満たしているように見えた。


"Lkurf俺と ekcej……を mi'tj plax話してくれないか, inlini'astiインリニアさん."


 翠がどうするべきか悩んでいる間に、ガルタが口を開いた。先程の敵意に満ちた目ではなく、インリニアを憐れみの目で見ていた。

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