卅六日目

#196 Anskejemro


 私――ヒンゲンファール・ヴァラー・リーサはもしもの事があればということで渡された自動拳銃が動くかどうか気がかりになっていた。自分たち大人を先頭に渡された書類を持って人混みを掻い潜るように進んでゆく。出国書類はラヴュールのルートを通じて、特別警察のお得意様に偽造してもらったもので越境審査官フォンティアヴェー・マッサグリムにも何一つ疑いの目を向けられることはなかった。国際空港とはいえ中心空港とはいえないから警備が雑なのであろう。翠が越境審査に手間取っていたが特に怪しまれることもなく通過することが出来た。

 ラヴュールの先導に従って裏口を通っていくと、駐機場に出ることが出来た。テロリストのようなことをやっていて、これまで誰にも見つかっていないのがまるで奇跡のようだ。


"Harmue例の aiarshostan小型機は mol何処だ?"


 全員が緊張に顔を固くするうちに早速痺れを切らしたようにレシェールが呟く。レシェールが駐機場に止まっている予定通りの小型機を見つけて静かに近付こうとしていたそのとき、大声の呼びかけが聞こえた。


"Celde何をしている! Xel da. Fqaここは立ち入り es feklenal禁止区域 enoだぞ!"


 飛行場警備員の警告の声がはっきりと聞こえた。瞬間的にレシェールが胸ポケットから拳銃を取り出して即座にコッキングして威嚇射撃を行う。子供たちにも分かっていたことだろうが、いざ起こると体が動かなくなってしまっていた。ミュロニユがエレーナとフェリーサの肩を強く押し走ることを促す。レシェールはといえば翠とシャリヤの手を取って小型機のタラップへと走っていた。警備員たちも負けずと手持ちの銃で応戦を始める。


"En etixonj早く行け!"


 ラヴュールがこちらを振り返った一瞬に彼の体勢が崩れる。特別警察の紺色のブレザーに血が滲む。レシェールはそれに顔を向けることもなく子供たちを機体に乗せることを優先していた。ミュロニユは既に機体の中に入って、既にエンジンの始動準備を進めているようだった。


"Flaccamoしまった......"


 苦渋の決断を迫られていた。ここでラヴュールを見捨てるべきなのだろうか、それではわざわざ命を賭して救った子供たちに示しがつかないのではないのか。自分たちが逃げるためだけに彼を道具のように消費したと後から悔いることになるだろう。それだけは――駄目だ。


"Mi celdin si彼を助ける!"

"La lex celdeな、なんだって!?"


 レシェールの驚きの声を後ろに胸ポケットから拳銃を取り出す。選んでいたのはケートニアー用拳銃であった。警備員たちはこちらを銃を持っていないと勘違いし、警戒していなかったようで簡単に仕留めることが出来た。レトラで撃って以来、銃を撃つことがなかったから、腕が鈍ったかと思ったがそんなことはなかった。

 息も絶え絶えのラヴュールに近づいて、その体を機体へと引っ張ってゆく。そんなことをしているうちに空気が漏れるような音と共に轟音がなり始めた。エンジンが起動したのだ。


"Mirgess追手が klie来てるぞ! En etixonj早く行け!"


 レシェールがタラップの上から銃を構えて呼びかける。必死の様相の視線が向く先には更に多数の警備員がライフルを持って駆けてきていた。タラップの横の壁を防壁としながら這うようにしてラヴュールを機内へと連れ込む。レシェールは皆が入ったことを確認して、タラップとの結合を解除しドアをロックした。


"Cene distyk飛ばせる jaのか, myloniju'sミュロニユ!?"


 怒号のようなレシェールの声がコックピットに居るミュロニユに向けて発される。


"E es ekce多少手荒 sylut paにはなりますが eo lex wioll飛び distykます."

"Jaああ, parxam jetesonとにかく es e'i早くしろ!"


 そんなことを言っているうちに機体は動きだし、タキシングを始めた。私は息苦しそうにしているラヴュールを子供たちからは離れた席にとりあえずは座らせ、シートベルトを付けてやった。


"Edixa mi僕はこう言 lkurf ny la lexったはずだ. En etixonj早く行けと. Mi c'aziugar今の連邦が aziurgstan嫌いだから, mi lirf niv no'dでも一人で抗えば fankas pelx殺される edixa panqa elmだから殺されるのなら felx veles reto gelx人のために死のう jol wioll jisesnとこの計画を fua larta fiesan立案した veles retooんだよ. Edixa mole la lexそんなどうせ死ぬ xale jisesn petexj人間なんか zuj larta petex置いていけば fanken良かったのに."


 ラヴュールの表情は痛さと悲しみが混ざりあったものだった。私には彼の自虐に頷いてやることは出来なかった。


"La lex xalepe iulo'iそんなことは...... es cene niv出来ないわ. "


 ラヴュールはそんな回答を聞いて苦笑いした。


"...... Sesnud selunuss僕が居なくなっても plax pestaあの子達を fenxeil baneart守って lefjcenaviju'ctやってくれ."

"Jaええ."


 ラヴュールは傷を痛がる様子も無くなり、静かに願いをいうと嘆息して眠るように目をつむった。ネートニアーの一生はつくづく短いものだと気付かされる。それも使命に駆られたような若者のネートニアーの死は本当にすぐにやって来る。残酷過ぎる定めに思えた。航空機は飛び上がり、その浮遊感が彼を弔っているような気がした。


 飛行が安定すると、子供たちの様子を見に行きたくなった。

 翠とシャリヤは座席から安心した様子で窓の外を眺めていた。窓の外に映るのはユエスレオネから下の世界の様子だ。ギラギラと輝く海を好奇の目で眺めているのもしょうがない。彼ら若い世代は海をまともにのだから。ラヴュールの犠牲を無駄にしないためにも、彼らをPMCFで生きていけるようにしなければならない。そう、私は心の中に刻みつけた。

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