#166 赤い目


 相変わらずの酷い状況だった。ガルタの説得も虚しく、インリニアはガルタを撃ってしまった。校舎に居た謎の黒外套が襲ってきた時は複数の弾丸を受けても無事だったというのに、今回は衝撃でよろけたがために鉄柵にぶつかって落ちるとは。


"Jisesn…… fal no, jazgasaki八ヶ崎.cenesti. Olさもなくば, fgir velesこいつが死ぬ retoo."


 インリニアが次はお前だとばかりにこちらに吠える。人質として髪を掴まれて無理やり立たされているカリアホの表情は依然辛そうなものであった。頼りになりそうだった男が転落して消えた以外、状況は何も変わっていなかった。

 彼女は翠が死ねば、カリアホは解放される――とは、言ったがこれはどう考えてもフェイクだろう。翠が死ねば、インリニアはカリアホを復讐の仕上げとして殺すはずだ。そもそも、シャリヤを残して自分を犠牲にするなどありえない。自分が党に呼ばれた時にそう決めたので自殺を解決法として選択するのはありえない。


(じゃあどうするんだよ……)


 少しでも変なことをしようとすればインリニアは迷いもせずにカリアホを撃ち殺すだろう。翠を自殺させようとするのはそういったパフォーマンスでしかない。やろうと思えばどちらも即殺すことが出来たはずだ。それだけの自信があるからこそ、彼女は人質を取って翠に惨めに自殺させようとしている。

 インリニアの銃を奪うなどして銃をどうにか出来るにしても彼女の剣術の腕を考えると、返り討ちにあうに決まっている。この場から逃げ出そうとすればカリアホがそのまま殺されるか、最悪ガルタを撃った腕前で自分まで撃ち殺される。

 インリニアに突進するのはそもそも得策とは言えない。カリアホが先に殺され、自分まで殺されたら終わりである。来て初めて兵士に撃たれても死ななかった自分の体に何らかのチートがあったのかどうかまだはっきりしていないというのにそんなことは出来ない。


"Co es何して harmie'iるんだ? Mi letix私には niv liestu時間がないんだ. 5 ler五秒 mi lkurf数える liestuから. Mal, 0 ioゼロになったら co reto co olこいつは mi reto ci殺すから."

"m, Miliま、待てよ!"

"Panqaい~ち."


 インリニアは凄く楽しそうにカウントを始めた。掴まれているカリアホは死にたくないとばかりに身を捩らせるが、インリニアが強く髪を引っ張ると痛がりながらそれを止めた。


"Qaに~い."


 カリアホがすがるようにこちらを見てくる。五秒以内になにかしないと、彼女は殺される。しかし、翠の頭の中には何も方法が浮かばなかった。焦れば焦るほどにカリアホが殺される未来が近づいてゆく。


"Dqaさ~ん"


 後ろを見る。破壊された鉄柵は見るも無残に床をえぐっていた。翠がここから飛び降りたら、命はないだろう。チートで体の能力がMMORPGキャラみたいになっていたら、それも選択に含まれたのかもしれない。ただカリアホの死を防ぐためには、この選択はそもそもありえない。


"Iupqaよ~ん"


 刻々と迫るタイムリミット、翠はただただ立ち尽くしていた。何も考えることが出来なかった。救えない、目の前で殺されてしまう。せっかく人々を救おうとここまで来たというのに。


"Neoqご~――"


 インリニアが満面の嘲笑顔でカウントを終えようとする瞬間、翠の後ろにある階段に続くドアが開いた音が聞こえた。インリニアの銃を持った右手が弾かれて、銃が鉄柵の向こうへと落ちていった。銃声が聞こえた方に振り向くと、そこにはシャリヤが立っていた。制服のまま、手にはライフル銃を持っていた。


「シャリヤ……!」


 その瞳はいつもの青玉のような青色ではなかった。怒りに満ちたような深い赤色の瞳はうっすらと光を放つようだった。だが、銀色の長い髪と端正な顔だち、その匂いと雰囲気は忘れることはないシャリヤのものだ。この状況は見覚えがある。フェリーサを驚かせたときの彼女の瞳と同じだ。

 シャリヤはインリニアを静かに見つめていた。


"Iska lut lipalainリパライン mianasti!"


 インリニアは叫びながら瞬時にシャリヤとの間を詰める。細刀を鞘から抜くのも一瞬であった。翠がシャリヤをかばう暇もなかった。

 だが、シャリヤはその一瞬を見きったかのようにライフルの銃床で刀身を反らすようにして防御した。その一瞬の判断と動作には無駄が一切含まれていなかった。


"Co es elmerお前は兵士か...... gahぐはっ!"


 体制を崩したインリニアの背に周りこみ、シャリヤは銃床で一撃を与えた。地面に叩きつけられたインリニアは吐血して気絶した。

 シャリヤはため息をついて、ライフルを地面に捨てるかのように投げた。


(しかし何故、シャリヤがこの場所を理解出来たのだろうか。)


 疑問は深まるが、これで脅威は排除された。カリアホは笑顔でこちらに抱きついてこようとする。翠も両手を広げてそれを受け止めようとしていたときであった。横を通ろうとしたカリアホの喉をシャリヤの腕が直撃した。いつの間にか持ち替えていたのか、その手には拳銃が握られていた。


「は?」


 痛そうに喉を抑えて、咳き込むカリアホに向けてシャリヤは拳銃を向ける。カリアホの表情は一気に絶望に満ちた。シャリヤの顔は全く見えない。だが、何をしようとしているのかははっきり分かった。


「おい……まさか」


 三発の乾いた銃声が屋上に響く、鉄柵に倒れ込んだ少女は喉を押さえたまま倒れ込んだ。血溜まりが打ちっぱなしのコンクリートに出来る。

 それと共にシャリヤはその場に尻餅をついた。手元にあった拳銃は手が震えて落としてしまっていた。彼女は何か恐ろしいものを見てしまったかのような顔で尻もちをついたまま手と足でひたすら後ろに体を引こうとしていた。


"Harmieなに...... fqa esこれ?"


 尻もちをついたまま、シャリヤは後ろに翠がいるのを見て絶望的な表情になっていた。ありえないとばかりに首を何回も振る。


"Niv違う, mi es niv私じゃない. Mi es niv私はこんな xale la lex'iことはしない."

"Xalijastiシャリヤ......"


 シャリヤが何故カリアホまで撃ったのか、理解することが出来なかった。戦争が再発するという話は理解していたはずなのに、何故こんな事が起こってしまったのだろう。


"...... Lulas molある luaspast ti!"


 シャリヤは泣きそうな声で何かを言うと、逃げ出すようにドアのある方へと走っていった。階段を駆け下りる音が聞こえた。翠はすぐに追いかけていた。シャリヤを守らなくてはならないと思ってたからであった。

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