#154 恐れていること
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残った13の形態素。シャリヤは非常に説明に手間取っていた。抽象概念などは本当に言葉で説明しにくい。もし「剣戟の音」を日本語初心者に説明するとしたら、「キンキンキンキンキンキン!」と言わざるを得ないだろう。逆に言葉でダラダラ説明して通じればそうしているのだから、そういうことなのだろう。説明者の説明力不足ということは万一にも無い、そうきっと無い。
まず、シャリヤは"
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"zant"は「戦法」「戦術」のような意味らしい。"-nasch"が付くと「戦法や戦術を持つ」という意味らしい。"is"の補語になっているあたり、名詞か形容詞だと考えられ、多分「武装化した」、「武装化」という意味なのだろう。ただ一つ疑問がある。歌詞に出てきた単語は"
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"
翠の質問にはっとしてシャリヤは答えた。肩の前に垂れた髪をかきあげる。
"
"
"-eu"は緩衝音の一種と捉えたほうが良いのかもしれない。"
これで歌詞の一行目の意味は大体理解できる。"Viojassasti! shrlo is zantanascheu."は「同胞たちよ、武器を持て」くらいの意味だろう。二行目の"-'ceu"もきっと"
"
"
そういって、シャリヤはノートに書かれた"fe"を指した。
"
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シャリヤは冷静に説明してくれた。説明してくれる単語すら良くわからない状態でそれをちゃんと説明してくれるのはありがたい。
"fe"は助動詞で、「禁止」を表すというところまではわかったが肝心の三行目の主動詞らしき"
"
"
"
動名詞を表す語尾"-o"が付いているあたり、やはり主動詞という解釈はあっていたらしい。対象になっている単語からみて、"ydicelo"は「恐怖」とか「恐れ」で、"ydicel"は「恐れる」なのだろう。
つまり、三行目の意味も分かる。"Viojassasti! fe ydicel la lex."は「同胞たちよ!それを恐れるな」だ。
"
"
続きを言おうとしたのか、シャリヤは小声でか細く言った。
"
シャリヤは自分でそう言って、顔を真っ赤にしていた。度重なる紛争の中でシャリヤはここまで翠とともに行きてきた。お互いに欠かせない大切な存在なのだから、シャリヤを置いて何処かへ行くことなんてありえない。
"
"......
火照った顔をこちらに向けてシャリヤは問いかけてくる。青玉の瞳がこちらを見つめている。
"
答えを聞いたシャリヤの表情は安堵に包まれていた。それにしても、何故今こんなことを訊いてきたのだろうか。全く見当がつかないが、シャリヤが安堵してくれるなら幾らでも言ってあげようじゃないか。
そんなことを考えているとシャリヤは次の単語の説明を書き始めていた。思考を振り払って、説明の解釈に集中力を傾けた。
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