異世界転生したけど日本語が通じなかった
Fafs F. Sashimi
第一部 Sdeumen Waxunde
一日目
#1 頻度解析の時間だ!
異世界転生物といえば大抵の人は次のようなことを想像するだろう。
主人公が神様によってろくでもない理由で殺され、お詫びとして高スペックとなって異世界に転生する、転生した主人公は力を発揮して敵をばっさばっさとうち倒し、複数の女の子と仲良くなるのが通例である。
俺、
満喫するはずである。
あるはずであった。
"Harmae co es tirne?"
目の前にいる少女は銀髪蒼眼、まさに異世界転生ものに出て来て主人公とハッピーエンドで結ばれるにふさわしいヒロインなのだが、一つだけおかしいことがあった。
(さっきからこの娘、言葉が通じてないんだよなあ。)
典型的に、トラックに轢かれて、神様に謝られて、超能力を貰ったらしいが使い方も分からなければ、言葉も通じないのは、さすがに「典型的」じゃない。
なんだ……一体何なんだ……神様は俺をおちょくって遊びたいだけだったのか……?
「あー、えっと……日本語喋れる?」
翠を見て、固まっている少女に話しかける。とりあえず、日本語は基本だろう。
異世界で日本語が喋れるのは異世界転生物の基本だが、少女は首をかしげて答えに困っている。
通じてないようだ。
だがまだ、希望はある。
今のように良く分からない言語が喋られてると思われているところもあるが、大抵は日本語をひらがな・カタカナ・漢字ではなく別の文字で書いていたり、日本語の音をそのまま入れ替えていたりする例が多い。Twitterでよく流れてくる異世界言語解読勢の解読を見ていると大体そんな感じだった。
だから、この異世界もきっと話は通じていなくても、その音の入れ替え方を理解するだけで日本語に簡単に戻せるに違いない。
しかし、どうやって……?
単純に考えれば、50音の並び替えだったとしても50の階乗通りの可能性がありうるわけだ。濁点・半濁点も別カウントなら80種類は下らない。英語を基にしたら26の階乗。
天文学的数だが、希望はある。エドガー・アラン・ポーの『黄金虫』やコナン・ドイルの『踊る人形』とかにあるように、英語ならeが一番よく出てくるから、多く出てくるものをeと置いて解いていけばいい。英語だろうと日本語だろうと先人の解読法によって頻度解析に使う音は大抵決まり切っている。
手元に手帳とペンを携行して良かったと思う。
少女の家らしきところには数冊本があり、そのうちの一つを引き抜いて、出て来る文字の頻度分析を試みることにした。
(ん……?)
見たところ、辞書のようである。
友人が前に国際言語学オリンピックとかいうものに出場していたが、問題のうちに「北ソト語の国語辞書を使って、北ソト語の文章を解読した旅行者が居る。お前もそれをやれ。」とかいう本当にできるのか分からない問題が出ていたのを思い出した。
しかし、今回はそんな鬼畜なことをやらなくて済むはずである。
この頻度解析が完了すれば、俺は『
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