#321 「またどうした?」
その後はしばらく公園の周りを散策してから、ホテルに戻ってきた。先日渡された文書の翻訳との睨み合いが始まることになる。
俺とシャリヤはお互いに向き合って座り、俺が文章の分からない点を質問しながら、少しづつ日本語への翻訳文をノートに書き記していく。そんなやり方を今回は試してみようと思った。
"
シャリヤはそんな封切りの言葉に無言で頷いた。強い眼差しが「どんな表現でも来なさい」という彼女の自負を表しているようだった。
文書に目を向ける。始まりはこんな感じだ。
『
なるほど、この文は "
"
"
ふむ、 "
"
"
日本語で表すなら「燃え残り」とかだろうか。それなら、さっきの文章の直訳は「最初の攻撃の燃え残りはまだ燃えている」と訳せる。だが、シェルケンが東京を燃やして、そこが燃え残っているというわけではなかろう。どうやら "
次の文章に目を向けようとしたが、シャリヤが脚を組み替えたのに目が惹かれて少しばかり深青のカラータイツに包まれた彼女の脚を見つめてしまった。
"
"
なんだかシャリヤが面白く無さそうな表情を見せたような気がするが、気にしないことにした。
次の文に行ってみよう。
『
今度の分からない単語は "
"
"
それまで不機嫌そうに窓外を見つめていたシャリヤがいきなり立ち上がる。勢いよくオウム返しされ、俺は言葉を返すこともできない。何か気に触ることを言ってしまったのだろうか……?
腕を組んで「ふんっ」といった様子のシャリヤ。ううむ、どう宥めたものだろう。いや、ここは下手に策を練るより、率直に訊いたほうがいいだろう。
"
"
彼女はふてくされたままで、むぅむぅ唸るだけで答えてくれない。次にどんな言葉を出せばいいのか至極困っていた。しかし、シャリヤは聞こえるか聞こえないかくらいの声で何かを呟きだした。
"
おや……?
分からない単語は "
シャリヤも積極的になってきたものだとふと感じる。頭をフル回転させながら、褒め言葉を探した。
"
辛うじて言えた褒め言葉はそんな感じだった。ちなみに "
シャリヤはしばらくそっぽを向いていたが、ややあって仕方がなさそうにこちらの方に向いてくれた。
"
そういって、彼女は呆れた様子でため息を付きつつも、愛しそうに苦笑していた。どうやら本気で怒っていた訳ではないらしく、俺も胸を撫で下ろした。
シャリヤは椅子に戻って、再び脚を組んで座った。気づけば日は傾き、夕日が窓から差し込んでいる。オレンジ色の光が、彼女の銀髪を撫でるように染めていた。
"
"
"
"
シャリヤは首を傾げるばかりだ。俺の言っていることがよく理解できていないらしい。
ううむ、 "
ここまでの文法理解でおかしいところは無いはずだが、シャリヤには伝わっていない。少しばかし、訊き方を変えてみよう。
"
"
"
"
"
そんな理解をしたところで、俺はシャリヤの思い違いに思考を向けた。
"
尋ねると同時にシャリヤは鉛筆を持って立ち上がる。そして、二人の間にある小さなテーブルに鉛筆を置いた。
"
シャリヤの言葉に頷きを返す。彼女は "
シャリヤはテーブルから鉛筆を持ち上げ、再び同じ動作でテーブルに戻す。うん、それが "
"
翠に電流走る。
その理解で今までのシャリヤの反応が全て説明できる。そう "
"
何はともあれ、これで二文目の意味も分かったことになる。「我々は計画について再び考えねばならない」だ。
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