#52 ジュリザード

 看守について行き、法廷まで行くともうすでに何人かが部屋の中に居た。日本でもよくニュースで出て来る法廷の様子によく似ている。


"No ler elmi'esmilerfhanka'd flarska'i fas."


 翠の先に立つ一人の男が言う。

 これからいわば裁判が始まるのだろうと思うと唾を飲み込むことすら少し苦労するほどに緊張が体に影響を及ぼしていた。だが、一つだけ疑問があった。


(居ない。)


 レシェールの描いた図では、自分の隣に良く分からない人が居るのとは別に自分の両端を挟んでいるはずの人が片方いない。すぐに絶望的な考えが想起される。弁護人も居ずに自己弁護することになるかもしれないという些細な考えが現実になりそうなことに驚いていた。


"Malそれでは, Dzylisard lkurf plax言ってください."


 真ん前に居る裁判長じみた人が翠の左側に立つ人の方を向いて何かを言わせようとしているらしい。"Dzylisardジュリザード"というのが名前か役職なのだろう。ジュリザードは席から立ちあがって、裁判長に手を掲げた。


"Jazgasaki.cen八ヶ崎翠は es fentexolerフェンテショレーです. Si es ceg fon彼は…… dznojuli'o……です."


 裁判長が翠をじっと睨め付ける。


"Jazgasaki.cenesti八ヶ崎翠よ, Co es fentexolerあなたはフェンテショレーですか?"

"まや むんそんしっしすく うぬぬむ?"


 裁判長の質問の直後に即座に被せてきたのは、自分の真横に立っていた人だった。通訳か何かなんだろうか?日本語のような発音だが、何を言っているのかさっぱり分からない。リネパーイネ語とも関連があまりなさそうだし、どう伝えるべきかさっぱりだ。

 そんなことを考えているうちに通訳さんは返答が来ないことに焦っている様子になっていた。


"あ……のや たかんせんき せまるむ?"

"Naceごめんなさい, pa cene nivでも、何を言っているか mi firlex lkurferl分からないんです."


 分からないということはすぐに伝わったらしい。通訳さんは自分の仕事がなくなってしまったことに気付いたのかきょろきょろと周囲が助け舟を出してくれないかと見ていたが、裁判長が見苦しそうに出ていけと手で指したので、そそくさと法廷から出て行ってしまった。どうでもいいが、せっかく助けになろうとしていたのに可哀想な人であった。同時に自分を弁護なりなんなりしてくれる人もいなくなったことになる。

 それはそうとして、気づいた時には議場は騒然としていた。戦中の法廷には信用性もクソもないということは十も承知だが、傍聴席の人間にまでマナーがなってないとなると裁判長も苦労することだろうと思う。まあ、自分の弁護人を用意せずに法廷を開いた責任者に同情はないが。


"Malそれでは, mi私は nunesk ny la lex. Co es fentexolerあなたはフェンテショレーですか?"


 仕切り直しというわけで、裁判長はしっかりと翠に訊き直してきた。フェンテショレーがレトラ市民やレシェールたちの敵であることはレシェールの説明で分かっている。


"Nivいいえ, mi es niv fentexoler俺はフェンテショレーではありません."

"Hmmふむ, mal dzylisardastiそれではジュリザード, selene mi senost私は……したい snalu mels tisodo harmiemietj eso'i fentexolerフェンテショレーであることを feas si?"


 そのように裁判長に訊かれていたジュリザードは、翠を睨みつけて、更に威勢よく半ばヒステリー状態になっているかのように反駁し始めた。


"Dzeparkymerfesti! Si es fentexoler彼はフェンテショレーだ cun lkurf言う jardzankatta xale elx lkurfo cene nivリパライン語を lineparine'it話せないこと. Lineparine'itリパライン kantio'i語を veleso教わること xale mauxelenon esである ceg'i edixa~し続けた dea!"

"Tyrnees plaxお願いします, Dzylisardasti. Eukiner mol居る?"


 続けようとするジュリザードを止めて、裁判長は何かを訊いていた。ジュリザードがヒステリックに事を荒立てようとしても、裁判長は冷静に証拠を出すように命じているらしい。ジュリザードはその裁判長の質問に対して、"Jaはい."と肯定すると法廷をでて別室に行ってしまった。

 しばらく待っていると別の部屋から人を連れてきたようであった。


(フィシャさんか……?)


 見覚えがある顔は捕まる最後に会った異世界人、宗教施設であるフィアンシャのなかで会ったフィシャさんであった。自分に対して敵意を持たずに接してくれていたはずの人物が自分を糾弾する立場に出てきて翠は非常に驚いていた。まさか、フィシャもシャリヤもレシェール以外の全員が何かの工作員で自分を嵌めようとしていたとか。そんなことを考えてしまったが、翠は感情的な憶測でしかないその考えを飲み込んでしっかりと今この法廷でやるべきことをやるべきだということを思い出した。

 法廷では、誰もがフィシャを注視していた。


"Malそれでは, Dzylisardastiジュリザード, Shrlo melfert……を引き eukinerなさい."


 裁判長がそういうと、フィシャは翠と裁判長の間まで進み出てきた。

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