#242 フィメノーウルとリノーツ
目の前に現れたのは曲剣と弓を構えた男たちだった。整った服装に髪型、透き通った蒼色の瞳には山賊たちに襲われたときのようなものを感じなかった。彼らに足元に過たず撃つことが出来るだけの精度があるなら自分たちは既に殺されているはずだった。ならば、彼らに殺意がないことは明白になる。
鬱蒼とした森の中で、お互いにしばらく膠着状態が続いたが暫くすると黒髪短髪の凛々しい少女――インリニアが毅然とした表情で彼らの方に歩き出した。
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相変わらずヴェフィス語は全くわからないがリパライン語と似たような発音の単語が幾らか聞こえてくるおかげで大体何を言っているのか予想できる。"
おそらく謝っているのだろう彼女の言葉を聞いて、リーダー格のような曲剣を持った男はその得物を下げた。それを見て、彼の周りの弓を構えていた者たちも弓を下げる。リーダー格の男は目を瞑って一拍置いてからインリニアの言葉に答えるように話し始めた。
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インリニアが真摯に聞いている横で、俺は分からないなりに聞きながら分析を試みていた。"
そんなことを考えているとリーダー格の男は背負っていた袋をおろしてその中から干し肉のようなものを取り出してこちらに渡してきた。その目はこちらを可哀想だと思っているのでもなく、ただしょうがないからという雰囲気で見つめていた。受け取ると彼らは踵を返して静かに森の別の方向へと去っていってしまった。
インリニアはその様子をじっと見送ると大きく息を吐いた。緊張が解けたようで腕を上げていた。身体を伸ばしていると胸元が強調されて、つい目が行ってしまう。有意な胸がないというのに強調されるとはこれは如何に? 胸の存在論的証明とは?
視界を閉じて頭を振る。バカバカし過ぎる考えに強制的に別れを告げた。
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インリニアはこちらに向き直って、彼らによる餞別を見分しながら近くの倒木に座った。
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シャリヤたち多くが信仰していたリパラオネ教では確かアレフィスだったはず。タームツィ教はPMCFの人々が信仰していた宗教だったし、もしかしたらヴェフィス人は他の宗教を信仰しているのかもしれない。
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言い終わるとインリニアは地面に落ちていた石ころをつま先で蹴って転がした。
おそらく、"
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そういえば、というような口調でインリニアは言う。その視線は先程までシャリヤが居たとこにあった。確かにこちらからではシャリヤの姿が確認できないでいた。なんだか、心のなかにざわつきを感じる。次の瞬間にはもう焦りで足が勝手に動いていた。
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インリニアの抗議するような声が後ろから聞こえたが足を止めることは出来なかった。
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