#289 傷つけたいわけじゃないんだ
結局二人共、ずぶ濡れになってしまった。図書館の前を往来する人たちから二人は好奇の目を向けられていた。いつの間にか空は快晴になっており、全身が濡れた二人は人々の目に奇妙に映っているのだろう。そんな目から逃げるように俺達は落ち着ける場所を探して図書館の裏へと回っていた。
レフィはワンピースの裾を掴んで、絞っている。際どいところまで捲られている彼女の素足を一瞥して、静かに俺は目を逸した。
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レフィの顔がニヤつく。肺の浅いところから自然にため息が出てきた。
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「乾かす」という単語が分からず、"
レフィは頬に手を当て、悩んでいるようだった。
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レフィが魔法詠唱学の存在を教えてくれたときに唱えていたのは"
俺が人差し指を立てると、レフィはその先に心配そうな視線を注いだ。
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指先に小さい光が灯った。と思いきや、光は指先からレフィの真上へと移動し、何かが弾けるような音と同時に彼女のケープに光が落ちる。それと同時にケープに火が付いた。
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レフィの肩は燃えていた。俺は焦りながら自分の上着を脱いだ。何かを喚きながら、クルクルと走り回るレフィを捕まえる。片手に持った上着で火をはたくと延焼はすぐに収まった。
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レフィは涙目でこちらを見上げてくる。捕まえたときに焦って抱きつくような姿勢になっていたから、彼女が間近に居てこっちのほうが混乱してくる。恥ずかしくなってレフィを離そうとすると、彼女は逆に俺にしがみついてきた。
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"......"
レフィは温もりを求めるように俺の胸に顔をうずめる。雨に濡れて冷えた体に彼女の体温が染みるようだ。しかし、果たしてこの温かみを享受し続けて良いのだろうか。シャリヤに偽証を立てていることにならないだろうか。
そんなことを思っているとレフィはすすり泣き始めた。落ち着かせようと彼女の頭を撫でる。
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"......
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そう言うと共に彼女の掴む手が強く握られる。
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レフィは顔を上げる。涙で潤んだ瞳は俺の目を真っ直ぐ見つめていた。俺がいくつもの問題と板挟みになって葛藤している中で、彼女もまた悩んでいたのかもしれない。
レフィはただただ静かに泣きながら、こちらを見ていた。何か彼女の確信となるような答えを待っているような気がしていた。
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"......
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絞り出すようにして出した言葉にレフィはただすんと頷くだけだった。
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