第225話 手遅れモテ期
『現在もっとも旬なアイドル、彩奈さんの好きな男性のタイプは誰ですか?』
『古谷良二さんです』
『動画配信者だけでなく、いつくもの会社を経営している、現在もっとも勢いがあると評判のインフルエンサー『マナナ』さんが好きな男性のタイプは?』
『古谷良二さんですね。私と彼って釣り合うと思うんです』
『アカデミー主演俳優賞を受賞されたマリア・ヒリカさんが気になる人っているの?』
『そうねぇ……。やっぱりリョウジ・フルヤかしら。彼はクールでセクシーだから』
『わたしってぇ、古風な考えをしててぇ、古谷良二さんみたいな人のお嫁さんになりたいんですぅ』
「……これは、AIで作成されたフェイク動画だな」
「社長、その子たちは全員本物だから」
『私に相応しいのは、リョウジ・フルヤだけね。リョウジ、いつもで待ってるわ』
「と言われましても……」
「インフルエンサーって自分に自信があるから、上から目線の人が多いのだ」
「それは感じた。にしても、どうして俺がモテるんだ? 変じゃねえ?」
「長年陰キャだったせいで、自分を客観視できないのだ」
「うるせえ」
今日も動画の研究をするため、休みを使って色々と他の配信者の動画を見ていたのだけと、色々とあり得ないことが起こっている。
このところ、動画配信をするアイドルや女性インフルエンザーか増えているが、みんなが好みの男性を俺だって言うんだ。
俺は特にブサ面ではないが、イケメンでもない。
陽キャでなく、どちらかというと陰キャ寄りだと自覚しているのに、そんな俺が女性にモテるわけがないのだから。
「みんな、社長の知名度と金目当てだから、間違ってないのだ」
「……ズバリ直球はやめろ!」
俺が傷つくだろうが!
中には俺の内面がいいって女性が……俺、イザベラたち以外の女性とほぼ付き合いなかったじゃん!
俺をよく知らない彼女たちが、俺の内面いいなんて言い出したら逆に怪しいじゃないか!
「世間ではその人の内面が大切だってよく言うけど、みんな言うほど人の内面なんて見てないし、結局は金持ちがモテるのだ」
「身も蓋もない話で草」
それは陰キャの俺でも薄々気がついていたさ!
「でも、社長の内面を見て好きになった女性なら、イザベラさんたちがいるのだ。社長、客観的に見たら社長はモテモテ王国の住民だから、非モテで悩むこと自体がおかしいのだ」
「それはわかってるけどさぁ」
これまで、非モテ、陰キャ時代が長かったから、そう簡単に切り替えられないんだよ。
「さすがはプロト1社長、私はリョウジさんが素晴らしい旦那様だと思っていますから」
「ボクたちの命を救ってくれたり。冒険者として鍛えてくれたり。そんなこと、その辺の顔がいいだけの男性にはできないしね。リョウジ君は最高の旦那様だよ」
「良二様は、ご自分が思っている以上に優しくて素晴らしい男性ですから」
「私たちは表面上のスペックがいい男性なんていくらでも見てきたけど、リョウジには勝てないって思ってるもの」
「リョウジさんは、私を救ってくれた王子様ですから」
「リョウジ、自信を持ちなさい。私はあなたに会いたくて、元の世界からここにやって来たんだから」
「みんな……」
そうだよな。
イザベラ、ホンファ、綾乃、リンダ、ダーシャ、デナーリスは、動画で積極的にアピールしてくる、俺と結婚することで得られる大金とステータス目当ての女性なんかじゃない。
各々が自立している素晴らしい妻たちなのだから。
「まあ、言うて彼女たちと会うこともないだろうし」
「コラボの依頼はあるけど、みんな断っているのだ」
最近、俺とコラボしたい動画配信者が爆増していて、プロト1が断るのが大変だって言ってたのを思い出した。
俺は基本的に、イザベラたちとしかコラボしないからなぁ。
「ボクたちのチャンネルでも、リョウジ君とコラボすると視聴回数が増えるからね。特に最近は動画を始める人が増えているから」
「起爆剤が欲しいのでしょう」
「アヤノ、言い得て妙だね」
「最初の視聴回数が多いに越したことはありませんから、そこで良二様とコラボできればと考える人が増えても不思議ではないです」
このところますます生産性が向上した結果、ゴーレムとAIにできる仕事が人間に回ってこなくなった。
完全失業率は60パーセント超え、とにかくお金を稼ぎたい人が動画配信を始め、どうにか俺とコラボできないかと、問い合わせが殺到していたのだ。
動画配信者が増えた結果、これまでそこそこ稼げていた動画配信者たちの収益が落ち、テコ入れで俺にコラボを頼む人も多い。
全部プロト1が弾いているけど、動画配信者もごく一部の勝者と大多数の負け組に分かれつつあった。
だからとにかく目立とうと、炎上してしまう人が続出しているのだけど。
「まあよくよく考えたら、俺でも結婚できたことが不思議だけど」
俺、絶対に結婚できないって思ってたからなぁ。
「リョウジってば、相変わらずネガティブなんだから」
「ですが、そういう人の方が実は成功しやすいとか」
「日本人はそういう人多いのかな? この人たちは違うけど」
リンダが自分のタブレットで、俺か好みの男性のタイプだと言っている女性動画配信者、インフルエンサー、女優、アイドルなどを軽く数えて、その多さに顔を引きつらせていた。
『何番目でも問題ないです! 古谷良二さんの奥さんになりたいです!』
いいのか?
このアイドルは日本人なのに……。
俺は六人の妻を持つ男だが、それはデナーリス王国だから許される……実は世界には複数の妻を持っていい国は少なくないけど……ことであり、特に日本や先進国は一夫多妻制に批判的な人が多いはず。
それなのに、俺の妻になりたい。
何番目の妻でもかまわない。
なんて人たちが、多数存在したのだから。
「そういうのって、今の世の中では嫌がられるはずなのに……」
「リョウジ君はそれを隠してないし、リョウジ君の妻なら何番目でも構わないって思っている人が多いんだよ」
「一人で暮らそうにも、仕事がないので先立つものがありませんからね。失業率は上がる一方ですし……」
ホンファと綾乃の言うとおりで、もう世界で失業率が下がることはないと言われいた。
どんどん人間がやる仕事が減っており、となると条件のいい人と結婚したくなるのが心情らしい。
そしてその結果、俺の奥さんになりたいと願う女性が増えたのか……。
この世は男女平等で、みんなが自立して暮らし、結婚するのも、子供を生むのも本人の自由。
みんなが、そんな世界を望んでいたはずなのに……。
「そういう風に暮らしていける人は、とっくにそうしてると思うわ」
リンダの言ったことが正解何だろうけどさ。
「考え方の問題ですね。たとえ貧しくても、二人で慎ましく暮らしていくか、大金持ちの何番目の妻でもいいから贅沢に暮らしたいか。どちらを選んでもそれは本人の自由です。ビルメスト王国も一夫多妻制ですし」
「養える人が多くの妻を持つ。向こうの世界でもそうだったじゃない。リョウジ、忘れたの?」
「そうなんだけどね」
「大体、一夫一妻制が絶対正義で、不倫は悪だって言ってる割にはねぇ……」
暇になったからか、確かにこのところ、不倫が増えた……いや、不倫がますます強く批判される世の中になった。
このところ、ワイドショーでは毎日有名人の不倫報道ばかりしてるような気がする。
「特に、公的な地位にいる人の不倫にはますます厳しくなったわね」
議員が不倫で辞職なんてケースも増えており、これは無職の人たちが全力でそういう人間を引きずり下ろそうとしているのだと思う。
その人が職をなくせば、そこに別の誰かが入れる。
まあ、世間やネットでそういう人を批判している人たちが、そう簡単に引きずり下ろされた人たちの後任にはなれないだろうけど。
「その結果、いわゆる上流の人ほど品行方正になってきました。上手くそういう悪事を隠している人もいますけど、バレると世間から袋叩きですし」
「イギリス貴族でも?」
「資産や爵位は失いませんけど、今後二度と公職に就けなくなったり、離婚で奥さんから多額の慰謝料を取られたりと、不倫で失うものは大きいですね」
「なんだかなぁ」
今後、素行が悪い上流階級の人たちは大変になるのか。
「昔とは違って、どんなに社会的地位が高い人でも悪評はすぐに広がります。高い地位にいたり、資産がある人ほど品行方正さを求められ、それがない人は叩かれ続けるのです」
地位や権利、資産、知名度がある人ほど人格が優れていないといけない。
少なくともそう思わせないといけないよか。
「ただリョウジさんの場合、デナーリス王国では一夫多妻制が認められていますし、すでに世界中に私たちの存在は知られていますから」
定期的に一緒に動画でコラボしているし、イザベラたちが自分の口で俺の妻だって言っているというのもあった。
俺がイザベラたちと夫婦であることを今さら叩いても意味はなく……まあ、定期的に『けしからん!』って叩かれているけかど……俺は仕事以外はほぼデナーリス王国で暮らしている。
スキャンダルが漏れにくく……お休みの俺なんて、推しアニメを見るか、積んでいた漫画を読むか、イザベラたちとデートするか、子供たちの面倒を見たり、遊んであげているだけなのだから。
推しアニメの視聴が、不祥事になるわけがないしな。
もし週刊誌の記者が俺を尾行しても、『つまらない奴』って思うかもしれない。
「そもそもリョウジ君って、ボクたち以外の女性とほとんと会わないんだから不倫は難しいよね」
「確かに」
その気になればいくらでも会えるけど、別にそこまでして会いたいかって言うと……。
「私たち以外の女性冒険者で良二様とコラボできるのは、瀬里奈さんくらいでしょうか?」
「彼女は、男性としてのリョウジ君に興味なさそだけどね」
「モモセさんとでしたら、いつでも二人で会ってくださって問題ありませんわ。いつ週刊誌にスキャンダルをでっち上られるかわからないので難しいですが……」
「桃瀬さんとはたまに仕事を一緒にするけど、二人きりになったことがないけどね」
桃瀬さんは売れっ子でマネージャーがいるし、彼女ほどの人気者ともなれば、俺と顔を合わせた結果、ガッカリしたんじゃないかな?
しかしまぁ、金があるとモテるなんて当たり前の話だけど、世知辛い事実だよなぁ。
「なにが、古谷良二さんのおよめさんになりたいよ! あの子、彼氏が四人いるじゃないの!」
「えっ? リンリンさんって、そうなんですか?」
「マネージャー、知らなかったの? 凄く有名な話なんだけど」
このところ、結婚するなら良二様がいいと公言する女性インフルエンサーたちが増えてウザい。
そもそも一度もコラボしたことがないのに、どうやって古谷良二様と結婚するのよ。
しかもほぼ全員、人気者ではあるけど、色々と問題のある人たちばかり。
「(あの人たちが古谷良二様と結婚できるのなら、その前に私、桃瀬里奈が結婚できているはずだもの)」
今のところ、その兆候はないけど……。
「(でも私は古谷様とコラボできているから、このまま頑張れば……)」
いつか私をお嫁さんにしてくれるはず!
その時まで、イザベラさんたちみたいに冒険者として、動画配信者として頑張って、彼に少しでも追い付けるようにしないと。
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