第183話 結婚相談所、結婚式

「結婚相談所のCMですか? 確かに俺はまだ独身ですけど、結婚を焦るような年齢ではないですし俺は、案件は受けない……」


「冒険者特区が経営する結婚相談所なので、この前のカジノと同じ条件なので引き受けてほしいかなって」


「まだ結婚って年齢じゃないしなぁ」


「昨今は未婚、晩婚化が問題になっているし、それが少子高齢化の原因だって声が大きいから、冒険者特区としては早めに対策したいわけで」


「冒険者の婚姻率と子供の数は多いって聞くけど?」


「……冒険者と非冒険者との結婚も増やしたいなって。頼むよ」


「いいですけど……」




 まだ二十歳になったばかりの俺に、結婚相談所を宣伝する仕事がきた。

 俺は案件を受けない動画配信者として有名なんだが、渡世の義理ってやつがあるので、冒険者特区絡みの仕事は受けている。

 この前の高級カジノがそれで、今度は冒険者特区が経営する結婚相談所の宣伝ってわけだ。

 日本を含む先進国では少子化が問題になっているからそれを解決しようと……そう簡単に少子化は解決しないと思うけど……。


「引き受けてくれるんだ! ありがとう!」


「宣伝したところで、婚姻数が増えるのか不明ですけどね」


「古谷君の知名度なら、きっと沢山の婚活希望者が集まるはずだよ。急ぎ動画を撮影しないと」


 そんなわけで数日後、俺はイザベラたちと共に冒険者特区が経営する結婚相談所の宣伝動画を撮影した。

 本当に俺たちが出演しているだけの宣伝動画なので、この様子をダンジョン探索情報『後』チャンネルでもやってみたけど、視聴回数はいつもより稼げなかった。

 ただ結婚相談所の宣伝をした様子だから仕方がない。

 大して面白くないからな。


「しかしまぁ、つまらん宣伝動画だな。ただ良二たちが出ているだけだ」


 完成した動画を見たという剛の感想もそんなものだ。


「タケシ、お上が作る宣伝動画なんてこんなものだって。逆に面白さなんて追及できないんだからさ」


 剛の感想に、ホンファがツッコミを入れた。

 確かに、真面目に婚活している人たち向けの動画で面白さを追求しても意味はないのだから。


「それもそうか。しかし、そんなに簡単に未婚率って下がるものなのかね?」


「剛はもうすぐ冬美さんと結婚するだろう? だから結婚相談所の宣伝の仕事が来なかったんだろうけど」


「もうすぐ結婚する奴が出ても説得力ないものな」


「タケシは結婚相談所が必要なタイプにも見えないしね」


「そんな俺が、結婚相談所のCMに出るってのも不謹慎か……」


 ホンファの剛評は、とても正確だと思う。

 そんな話を少ししたけど、 基本的にあまり興味がないというか、俺はイザベラたちと正式に結婚することはしないけど、かなり前から実質恋人のような夫婦のような関係になっている。

 向こうの世界のように現代社会で一夫多妻制が認められるわけがないので、事実婚状態というわけだ。

 イギリス貴族であるイザベラや、元華族のご令嬢綾乃、大物華僑の一族であるホンファ、アメリカ大統領の孫娘であるリンダ、そしてビルメスト王国の女王であるダーシャ。

 俺が関係を持つ女性は多いけど、それを世間に公表する義務はないし、正式に結婚しなければ文句も出ないだろう。

 みんな、もしもの時は一人で生きていくことができる、自立した素晴らしい女性たちというのもあった。


「リョウジさん、ご安心を」


「世界のセレブの中には、契約結婚で、それぞれ何人も愛人がいたり、自由恋愛ができたり、隠し子がいたりと。マスコミに報道されないだけで、かなり乱れているからね。その点リョウジは私たちのことを大切にしてくれるから」


「良二様が浮気をしないというのは、とてもポイントが高いです」


 綾乃はそう言うけど、俺は五人の女性と関係を持っているけどね!

 浮気に関しては、元々美少女で、さらに高レベルで魅力が増しているイザベラたち以外の女性に興味を持てないというか。

 唯一俺が興味を持つイザベラたち以外の女性は、好きな漫画、アニメ、ゲームの女性キャラだけだ。

 勿論誘惑がないわけではない。

 俺が冒険者兼動画配信者として有名になってから、恐ろしい数の誘いが……特に、『テレビに出ませんか? 好きな女性芸能人と一緒に出演できますし、そのあと食事などのセッティングもできますよ』なんてくるけど、全部プロト1に頼んで断ってもらっていた。

 他にも女子アナウンサーとか、他の有名女性動画配信者とか。

 元々どこに出しても恥ずかしくないフツメンな俺がモテるのは、間違いなく俺が大金持ちだからだろう。

 以前にも、俺との婚姻届を勝手に出そうとした女性がいたりして怖かったので、本当イザベラたちだけがいればいいと思う。


「本当は剛みたいに、幼馴染一人とラブラブできればよかったんだろうけど」


「お前の幼馴染はなぁ……」


「佳代子のことはすでに終わったことだ。それよりも、俺は剛の結婚式に着ていく服を用意しないとな」


「お前、スーツ 持ってなかったのか?」


「制服なら持ってる」


「大学生が冠婚葬祭で、学生服を着ちゃダメだろう。作ってもらえばいいだろう。ゴーレムたちに」


 俺は、他の有名動画配信者と同じくアパレルブランドを持っている。

 スーツなら、ゴーレムに作ってもらえば問題ないはずだ。


「じゃあ、富士の樹海ダンジョンにアタックするか。剛、浮かれて死なないようにな」


「俺は『 この戦争が終わったら結婚するんだ』ってフラグを立てる兵士か!  冒険者高校を卒業してからずっと一緒に住んでるんだ。そこまでの新鮮味はないというか。そんな感じだ」


 俺たちは普段の生活に戻り、 結婚相談所のCM をやったことなど すっかり忘れていたが、あとでとても大変だったことを飯能総区長に教わったのは、かなりあとのことであった。






「ですから、古谷良二さんは登録していません」


「古谷良二さんは登録していないんです」


「古谷良二さんは登録していません。はい、そうです」


 日本政府と冒険者特区の肝入りで始まった結婚相談所だけど、初日から大勢の女性が古谷良二さんと結婚したいと受付に押しかけ、電話が殺到してその対応に……大半がAIとゴーレムがやってくれているけど。


「(所長、古谷良二さんが宣伝したのは逆効果では?)」


「( 真面目に結婚を希望している男性と女性も沢山いるから)」


 どうして日本政府と冒険者特区が結婚相談所を運営することになったのか。

 実はダンジョンが出現して好景気になった時、日本政府はこれで婚姻数と子供の数が増えると大喜びしていた。

 どうやら大勢の日本人が勘違いしていたようだが、日本人の少子化は婚姻数が減ったからであり、婚姻数が減ったのは日本人の収入が下がったからだ。

 実際、1970年代から子供を三人以上持つ家庭の割合は高収入な家庭の方が多かったし、今も二十五歳から三十四歳で年収六百万円以上の男性の未婚率は四パーセント弱でしかない。

 若い世代の価値観の多様化、若い世代の恋愛への忌避感、インターネットなどの娯楽の多様化、女性の高学歴化。

 少子化の原因としてよくあげられるものだが、すべて根拠のない話、思い込みの類であり、ようするに収入がないから結婚できない人が多かっただけだ。

 ゆえに日本政府は、この好景気で未婚者の増加と少子化が改善すると思っていた。

 ところがAI、ゴーレム、ロボットの大量普及で失業率が上昇してしまい、未婚率と子供の出生数は現状維持が精一杯だった。

  それでも下がらなかったのは、お金を稼ぐようになった冒険者が結婚し、子供を作るようになったからだ。

 冒険者こそが、 日本の人口減と少子高齢化を解決する。

 そう考えて結婚相談所が作られたわけだが、私は残念ながらあまり上手くいかないと思っている。

 なぜなら……。


「登録している冒険者の数が少なくないですか?」


「未婚の冒険者に登録を呼びかけているので、 じきに登録者数は増えます」


 ゴーレムが受付でクレームをかけてきた女性の対応をしているが、 冒険者は基本的に稼ぐので婚姻率が高い。

  現在未婚でも恋人がいたり、結婚する予定の人も多く、なかなか冒険者の利用者は集まらなかった。


「美人な二十代で、子供を産んでくれて、家事もすべてやってくれて、僕の両親の介護をしてくれる人を希望しています!」


 で、以前からそうだったが、 こんなことをのたまう無職、四十代男性や……。


「二十代でパーフェクトマンの有沢君に似て、年収二千万以上で、私を専業主婦にしてくれて、家事はお手伝いさんを雇ってくれて。あっ、私子供は嫌いなんで産みたくないです。両親の介護もちゃんとやってくれる人がいいです。私二十代に見られるので、条件は妥協したくないですよねぇ」


「……」


 私は他の結婚相談所からの転職者だが、そこでも問題になったというか、まともなお客さんが寄り付かなくなるという理由で入会を断られたような男女が多数、詰めかけていた。

 お金持ちの冒険者と結婚して人生逆転。 

 さらにこの結婚相談所のCMは古谷良二がやっていたため、彼と結婚できると勘違いした女性が大量に押しかけていた。


「イザベラさんと結婚できるんだろう?」


「はあ?  登録してないだと! インチキじゃないか!」


 ゴーレムに怒鳴りつける、バーコード頭の男性。

 プロフィールを確認すると、五十代、無職と書いてあった。


「(どうやって無職、五十代がダンジョンの女神と結婚できるんだよ!)」


 そう怒鳴りたくなってしまうが、相手は一応お客さんだ。

 前職でもよくいた種類の人たちなので冷静にならないと。


「古谷良二君と結婚したら、私も夢のセレブ生活かぁ」


「ですから、古谷良二さんは登録していませんから」


「そんなのおかしいじゃない! じゃあどうしてCMに出てるのよ?  詐欺よ!」


 受付で応対しているゴーレムに怒鳴りつける、四十代無職、体重が私の倍くらいありそうで、自称女優の〇〇に似ているが、私は相撲取りの〇〇に似ていると思う女性。

 そのスペックで、どうして現在世界一のお金持ちと言われている古谷良二さんと結婚できると思っているのか。

 彼女たちのポジティブさは見習った方が……いや、ただ痛いだけなので見習わない方がいいな。

 

「(はあ…… 前の職場と同じじゃないか)」


 ただよかった点もあって、前職ではあんな人たちの相手をして精神を病んでしまう職員も少なくなかったけど、ここではゴーレムが相手をするので、彼ら彼女たちのせいで心を病む職員がいない点だろう。


「私が入会できないってどういうことよ!」


「あなたは、当結婚相談所の入会条件に合わなかったので、速やかにお帰りください」


「きぃーーー! バカにしているの? 私は元モデルで、昔はモテたんだから!」


 そう言われると昔はモテただろうなという雰囲気はあるけど、残念ながら今は……やめておくか。

 とにかくこの結婚相談所は、子供を望む冒険者の結婚を仲介するためのものなので、自然と三十代半ば以上の女性は足切りとなってしまう。

 他にも、これは男性にも言えることだが、無職や収入が低い人も入会を許可されない。

 結婚相談所は、困窮した自分を養ってくれる異性を探す場所じゃないからだ。


「(まあ当然だよな。条件のいい冒険者と結婚したいんだったら、相手にも相応のスペックがないと)」


 二十代で二千万円稼ぐ冒険者が、四十代、五十代のおじさん、おばさんを選ぶわけがないし、それを不平等だと騒いで炎上させたところで、一部の人たちの支持と共感だけを得て終了というのが関の山なのだから。


「古谷良二と私を結婚させなさいよ! 私は仕事をしていないし両親が年を取ってきたから、老後の生活が面倒見てもらわないといけないのよ!」


 そりゃあ、普段古谷良二さんが世間に顔を出さないわけだ。

 

「所長、初日からえらいことになってますね」


「じきに落ち着くはずだ。 数少ない高スペックの冒険者と結婚するには、 自分にも相応のスペックがないといけない。 それがない人がいくら大勢を仕掛けたところで、入会を拒否されるだけなのだから」


 所長の予感は当たり、この結婚相談所は非冒険者の入会が日本一難しいところとして有名になっていくのであった。

 その分成婚率は非常に高く、評価されるようにもなったのだけど。





「……イザベラ、ホンファ、綾乃、リンダ。俺、なにか悪いことでもした? 怖いよぉ」


「リョウジさんが人気なだけですから、ね?」


「そうそう、人気者は辛いね。おーーーよしよし」


「私たちが周りにいるから安心ですよ」


「しかしまぁ、酷いテレビ番組ね」


 後日、俺は様々な某体で、『自分と結婚しない古谷良二が悪い!』と荒ぶる、母親の年齢のような女性たちに批判され、さらに彼女たちを擁護する自称進歩的知識人たちのせいでテンションがダダ落ちしてしまい、イザベラたちに慰めてもらうのであった。






『プラチナシルクワームの糸は光沢があってとても美しく、防具のみならず、高品質な服の素材にもなります。今日は 注文が沢山入ったので、容赦なく狩りますよ』



 久々の生配信で俺はモンスターを次々と倒していき、多数のコメントや投げ銭の多さで盛り上がっている。

 今日は一人で富士の樹海ダンジョンに潜り、モンスターを倒しまくっていた。


『今日の生配信を記念して抽選で十名様に、今日狩ったプラチナシルクワームの糸で作ったオリジナルブランドのTシャツをプレゼントします。応募待ってますね』


 その目的は、俺が経営しているアパレルブランドで製造、販売する服の材料集めなんだけど、実はもう一つの目的があった。


「無事に必要な量のプラチナシルクワームの糸が集まったな。それにしても久々だ。多くの作業をゴーレムたちに任せないのは」


 裏島にある作業場に戻った俺は、倒したプラチナシルクワーム…プラチナ色のカイコ……のお腹を割いて糸を取り出し、これを丁寧に処理していく。

 さらにこれを、魔法道具の編み機で編んで布を作った。

 久々だったけど、失敗することなくプラチナシルクの布が完成し、これを縫製して防具を作ると、魔法防御力に優れた服が完成する。

 これは、魔法使いには最適な防具であった。

 他にも高品質で美しい服が作れるので、俺はイザベラたちのウェディングドレスを作っている最中だ。

 イザベラたちとは正式に籍を入れていないけど事実婚状態なので、内密に結婚を挙げることになり、俺がイザベラたちのウェディングドレスを作ることにしたのだ。


「デザインはこんなものかな」


 表示はされないけど、俺には職人系のスキルもあるようで、武器や防具のみならず、服も作れた。

 普段はゴーレムたちに任せてるけど、これだけは自分で作ろうと思ったのだ。


「生地が完成したから、あとは裁断と縫製だな。装飾もしっかりやらないと」


 俺は一週間ほどかけて、イザベラたちのウェディングドレスを縫い終える。


「バッチリだな」


 あとは結婚式当日を待つだけだ。

 非公式の結婚式とはいえ、かなり大勢を招待しているというか、非公式の結婚式だからこそ招待しないとヘソを曲げる人もいるので、プロト1と招待客を確認し、ちゃんと招待状を送らないとな。


「リョウジさんが作ったウェディングドレス楽しみです」


「ボクたちって幸せ者だよね」


「良二様って、とてもセンスがいいですからね」


「どんなウェディングドレスかしら。早く着てみたいわ」


「リョウジ、私も結婚式に参加できるなんて嬉しい。ありがとう」


 ビルメスト王国からダーシャも来日したが、表向きの理由は女王としての訪日と、俺たちとダンジョンに潜ったり、コラボ動画を撮影することだった。

 今世間で流行している異世界転移系の創作物なら、主人公は複数の奥さんと結婚できる。

 だが現代日本で一夫多妻などできるわけがなく、結婚式の参加者以外にこのことを報告するつもりもなかった。


「社長、みなさんで東京観光を楽しんでください。オラが責任を持って結婚式の招待状を出しておきますから」


「プロト1に任せるよ」


「任されます」


 プロト1なら、人間みたいに忖度することなく招待客を選ぶだろうから逆に安心だ。


「じゃあ、行ってくるね」


 そのあとは、みんなで東京観光を楽しみながら動画の撮影をしたり、一緒にダンジョンに潜ったり、ダンジョンで手に入れた食材で料理を作ったりしながら結婚式までの時間を楽しんだ。

 結婚式の招待客はそれほど多くないと聞いているので、 当日も緊張しないはず……。

 それでもやっぱり緊張はしそうだけど。






『というわけでして、極秘裏に結婚式をすることになりました。 招待状はWEBでの送信になりますので悪しからず』


「参加させてもらうよ、プロト1社長」


『当日、お待ち申し上げております』


「古谷君もようやく年貢の納め時かな」




 古谷君が結婚するそうで、プロト1社長から招待状が送られてきた。

 彼のビジネスパートナーと言って過言ではない私は、喜んで参加させてもらう。

 それに加えて彼が通っていた冒険者高校の理事長でもあるので、恩師枠にもあたるのかな。

 残念ながら今の日本で一夫多妻は認められていないので、正式には籍を入れないし、公表すれば猛批判をする勢力が一定数出現するので公表 もされない。

 だから結婚式も非公式で、これに招待されるということは古谷君と親しい人間だけということになる。


「しかしまぁ、これは豪華だね」


 一緒に送られてきた招待者リストを見ると、田中総理、飯能総区長、アメリカのブルーストーン大統領とその家族、大物華僑である武一族、グローブナー公爵、分家だが鷹司家一族、そしてビルメスト王国首相と近衛騎士隊隊長など。

 世界中のセレブが多数参加する予定で、古谷さんの結婚式を隠蔽するのは大変そうだ。

 イワキ工業の会長でもある私と、冒険者予備校の校長であるアサシン田中レベル1659、古谷企画からは西条さんと東条さんも参加するが、我々はオマケみたいなものだな。

 拳君や、古谷君の他幾人かの友人は例外だけど。


「すみません、ちょっといいですか?」


  突然の来客があったのだが、それは飯能総区長だった。


「あれ? どうかしましたか? 飯能総区長」


「ちょっと執務室から逃げて来たんですよ」


「どうしてです?」


「政治家たちが、古谷君の結婚式に自分も参加させろとうるさいんです。どこから情報を掴んできたのか……。 田中総理ももうちょっと情報管理をしっかりしてもらいたいですよ」


 古谷君の結婚式に参加して繋がりを得たい政治家たちが暗躍しているのか。

 しかし彼は、 基本的には政治家のことが好きじゃない。

 同時に彼は大人だから、嫌いな政治家でも自分の利益になればつき合いを拒まないからこそ、田中総理も招待されていたのだから。

 本来彼は、長期政権を築き上げた前任者の後継者が政権を継ぐまでのワンポイントリリーフとされていた。

 そんな立ち位置だからというわけではないが、田中総理自身華がないので人気も低く、政権は一年も続けば上等と思われていたのに、今では長期政権を担っているのは確実に古谷君のおかげだろう。

 だが田中総理が老齢なのは確かで、そろそろ若い後継者に政権を譲りたいところ。

 確か、古谷君の結婚式にも何人か招待しているはずだが、呼ばれていない政治家たちがどうにか割り込もうとしているのだろう。


「田中総理と一緒に結婚式に招待された政治家たちは次期総理大臣候補ってことでしょう。で、呼ばれない政治家たちが焦ったと」


「呼ばれないってことは、それなりの連中なんでしょうなぁ」


「ええ、ああ見えて田中総理は人を見る目がありますからね。呼ばれてないってことは、自分の後継者にできないってことですから」


「私にそういう話が来ないことを祈っていますよ」


 もしきても、私としては断るしかないのだから。

 それにしても、正式に籍を入れるわけでもない、 公式の結婚式に政治家たちが参加したがるなんて、古谷君も凄いインフルエンサーになったものだ。

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